2022年2月発売
傷ついた古家具には、無数の命が仕舞われている。 緑生い茂る山の中、ぽつんと佇む「森野古家具店」。 そこには、過去の沁みこんだ被災家具たちが、各々の物語をたずさえ集まってくるのだったーー。 職人見習いの「鴻池さん」が、家具に秘められた当時の記憶に触れる、感性ゆたかな連作短編集。 一.「花盛りの椅子」--東日本大震災 二.「巣籠り箪笥」--伊勢湾台風 三.「万祝い襖」--関東大震災 四.「焼土鏡」--阪神淡路大震災 五.「私たちの寝床」--再び、東日本大震災 【著者略歴】 清水裕貴(しみず・ゆき) 1984年千葉県生まれ。2007年武蔵野美術大学映像学科卒業。2016年三木淳賞受賞。2018年「手さぐりの呼吸」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞し、翌年に受賞作を改題した連作短編集『ここは夜の水のほとり』(新潮社)を刊行。写真家、グラフィックデザイナーとしての表現も精力的におこなっている。
【第45回すばる文学賞受賞作】 選考委員絶賛! 小説の魅力は「かたり」にあると、あらためて感得させられる傑作だ。--奥泉光氏 この物語が世に出る瞬間に立ち会えたことに、心から感謝している。--金原ひとみ氏 ただ素晴らしいものを読ませてもらったとだけ言いたい傑作である。--川上未映子氏 (選評より) 認知症を患うカケイは、「みっちゃん」たちから介護を受けて暮らしてきた。ある時、病院の帰りに「今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」と、みっちゃんの一人から尋ねられ、カケイは来し方を語り始める。 父から殴られ続け、カケイを産んですぐに死んだ母。お女郎だった継母からは毎日毎日薪で殴られた。兄の勧めで所帯を持つも、息子の健一郎が生まれてすぐに亭主は蒸発。カケイと健一郎、亭主の連れ子だったみのるは置き去りに。やがて、生活のために必死にミシンを踏み続けるカケイの腹が、だんだん膨らみだす。 そして、ある夜明け。カケイは便所で女の赤ん坊を産み落とす。その子、みっちゃんと過ごす日々は、しあわせそのものだった。それなのにーー。 暴力と愛情、幸福と絶望、諦念と悔悟……絡まりあう記憶の中から語られる、凄絶な「女の一生」。 【著者略歴】 永井みみ ながい・みみ 1965年神奈川生まれ。ケアマネージャーとして働きながら執筆した本作で第45回すばる文学賞を受賞。
大陸からの引揚船の上でただひとりの肉親である母が失踪した。身寄りをなくした少年・群青は謎の男・赤城とともに石鹸製造会社を立ち上げる。だが群青の心には、母の失踪に赤城が関与しているという疑念が渦巻いていたー。著者が新たに切り拓く渾身の一作!!混沌の時代を生き抜いた男たちの、反骨と絆の物語。太平洋戦争に敗れ、瓦礫から這い上がった少年は、その瞳にどんな未来を映すのかー。
現役受験生作家がリアルに紡ぐ受験生の青春 舞台は、とある地方都市。高校3年生となり、受験生の水咲。 ある朝、町中の尊敬を集める「先生一家」の門前にパトカーが何台も集まり大ニュースに。そこは昔から憧れの的だった、現在通う高校の生物教師の家でもある。水咲といつも一緒の幼なじみ・聖二と愛海も心配で駆けつけるが、手錠をかけられ警察に連行されて出てきたのはなんと憧れの生物教師だった! その先生は幼い頃から水咲にとって特別な存在。先生をひたすら信じたい一心から水咲はまた別の事件にも巻き込まれてしまい……。 著者が現役受験生として受験勉強と並行して描いた、地方都市在住受験生の青春を描いた初恋小説。読後爽快、リアルな青春を鮮やかに描く。 【編集担当からのおすすめ情報】 「さすがに、受験生の高3は執筆は無理ですよね」と、2,3年前から話をしていました。お互い、すっかりそのつもりでした。でも、著者が実際に高校3年生となったある日、「やっぱり小説を書きたい」との連絡が。「え?本当に?」最初は半信半疑でしたが、それなら、と『現役受験生が描く受験生の青春小説』を書いてほしい、と提案をしました。現役受験生のナマの感情が詰まった小説を読める機会なんて、ないですから。そして秋に上がってきたのが、この小説です。大人の私が読んだ最初の感想は目からウロコ、でした。令和の受験生は新しい! とてもかわいい初恋小説であり、思わず笑顔になる青春小説。そしてご報告ですが、その後、自身の受験では、無事、志望校に合格し、はれて来春からは大学生になります。
魔力ナシと判定を受け、おまけに両親と似つかない見た目のせいで虐げられてきた伯爵令嬢のアマレッタ。せめて役に立てと竜王の生贄にされ死を覚悟するがーー、「お前は聖女の末裔だ」竜王・アルミスはアマレッタが聖女の再来だと告げ、花嫁にすると宣言! 獣人たちの国に歓迎されたアマレッタが覚醒した聖女の力で大活躍する一方、彼女を虐げていた貴族は力を失い始めていて…。私を捨てたことを今さら後悔? もう遅いので地獄を見せて差し上げます!
地味で無価値な“石の聖女”として辺境に追放されたココ。けれど「石の加護」は実はチートすぎるものづくりスキルだった! 力を買われたココは王太后から「砂漠化している水の都を救ってほしい」と抜擢される。精霊さんにお願いして枯れた井戸を復活させたり、公衆浴場を作ったり、奇跡の力を発揮しまくる小さな聖女は人々から大称賛&引っ張りだこ! しかも何気なく作った魔導具は実はレアアイテムの神器と判明、都を救う切り札で…!? 神様に愛された聖女、チートな魔導具で水の都を大発展させちゃいます!
サイラス帝国の宮廷魔術師ヴィム・アーベルは、その強大な力を恐れた帝国上層部により反逆者の汚名を着せられ、強固な結界が張られた脱出不可能のダンジョンに閉じ込められてしまう。退屈な幽閉生活の暇つぶしにダンジョン攻略を始めたヴィムは、その圧倒的な力で見事ダンジョン攻略を達成し、その報酬として不老不死の力を手に入れる。そして幽閉から一年が経とうとした頃、結界に僅かなほころびを見つけたヴィムは地上への脱出に成功。自分を幽閉した帝国に見切りをつけ、一路、“完全実力主義”とされるレオリア王国を目指すのだった。不老不死の宮廷魔術師がSランク冒険者となり無双する!
勇者である青年とその仲間の7人は人類の悲願である魔王討伐を達成する。しかしその直後、欲に憑かれた5人の仲間が裏切り、勇者と2人の仲間が殺された。死に直面した青年が思うのは共に殺された仲間の「復讐」を果たすこと。そして裏切った奴らの命を奪い、貶められた2人の友の名誉を護ることー。そして勇者は、その記憶を保持したまま再びこの世に生を受け、普通の少女ザラディンに転生する。ザラディンは誓う、かつての仇敵への14年越しの復讐をー!仲間に殺された元勇者が14年越しの復讐に挑むTS転生ファンタジー!
20世紀を代表する文学作品『ユリシーズ』。ジェイムズ・ジョイスがこの傑作を世に送り出してからちょうど百年目にあたる2022年、ジョイス研究の枠を越えて気鋭の論者が結集した。多様な視点から、『ユリシーズ』の「百年目にふさわしい読み」を提示する論考群。 前口上(下楠昌哉) 『ユリシーズ』梗概+『オデュッセイア』との対応表(宮原駿) 『ユリシーズ』主要登場人物一覧(宮原駿) ジェイムズ・ジョイス評伝(田村章) 1.横たわり尖がって『ユリシーズ』を読む 横たわる妻を想う──ジェイムズ・ジョイスと〈横臥〉の詩学(小島基洋) 眼を閉じるスティーヴン、横たわるベラックワ──「子宮」イメージの変容とアリストテレスの思考の継承(深谷公宣) 違法無鑑札放浪犬の咆哮──『ユリシーズ』における犬恐怖と狂犬病言説(南谷奉良) 「キュクロプス」挿話のインターポレーション再考(小野瀬宗一郎) ジェイムズ・ジョイス作品における排泄物──古典的スカトロジーから身体の思考へ(宮原駿) 2.『ユリシーズ』を開く──舞踏・演劇・映画・笑い ニンフの布──ニジンスキー『牧神の午後』と「キルケ」挿話の比較考察(桐山恵子) ハムレットを演じる若者たちのダブリン──「スキュレとカリュブディス」挿話におけるスティーヴンの即興演技(岩田美喜) 『ユリシーズ』とヴォルタ座の映画(須川いずみ) 『ユリシーズ』のユグノー表象に見る移民像と共同体(岩下いずみ) 『ボヴァリー夫人』のパロディとしての『ユリシーズ』──笑い・パロディ・輪廻転生(新名桂子) 3.『ユリシーズ』と日本 『ユリシーズ』和読の試み 『太陽を追いかけて』日出処へ──ブッダ・マリガンと京都の芸妓はん(伊東栄志郎) 海の記憶──山本太郎の『ユリシィズ』からジョイスの『ユリシーズ』へ(横内一雄) 4.さらに『ユリシーズ』を読む 恋歌に牙突き立てる吸血鬼──スティーヴンの四行詩とゲーリック・リヴァイヴァルへの抵抗(田多良俊樹) 『ユリシーズ』で再現される夜の街─夢幻劇として読まない「キルケ」挿話(小田井勝彦) 「エウマイオス」挿話をめぐる「ファクト」と「フィクション」(田村章) 限りなく極小の数を求めて──「イタケ」挿話における数字に関わる疑似崇高性について(下楠昌哉) デダラス夫人からモリーへ──スティーヴンの鎮魂(中尾真理) あとがき(須川いずみ)
現役医師の著者によるデビュー作。大学生になった涼子は飲食店のアルバイトや学校生活を謳歌していたがある日、不幸が襲う。不自由な生活を強いられる中で、その意識と身体の変容を執拗に描く表題作に加え、第7回林芙美子文学賞受賞作「塩の道」も併録。
SNSで話題のWEB小説家・MIYAMUが2022年2月ついに初の小説を出版決定! 「寝息を感じられる距離にいられた、束の間の朝を 揺れる日々の中、震える指先で求めてくれた夜を 冷たい朝露に濡れて、麗しく咲いていたあなたを 愛しています。心から。 あなたが私の最後の人」----『ホワイト・カメリア』 SNSにて話題を集めるWEB小説家のMIYAMU×人気イラストレーターyasunaが共作で贈る 2022年最初のラブストーリー。 6人の男女のもどかしく、やるせない恋模様。 私たちは、それぞれに傷を負っている。 その傷を見せないよう、隠しながらもがいている。 誰かを本気で愛した途端、誰かの物語では悪者になる。 正論はときに暴力になる。 恋愛に、正しいも正しくないもないのだ。 これが、複雑すぎる現代を懸命に生きる若者たちのリアルな恋愛のカタチ。
格闘小説の巨匠、夢枕獏が描く小説版『バキ』外伝。〈br〉 バキワールドにリンクする最凶死刑囚・柳龍光を捕まえた少年の物語完結!!〈br〉 柳龍光、愚地独歩、愚地克巳などの『バキ』キャラクターだけでなく、『餓狼伝』の久我重明、磯村露風なども登場!!
チェコスロヴァキアの民主化運動を牽引し、のちに大統領に就任したヴァーツラフ・ハヴェル。しかし彼の本領は、「言葉の力」を駆使した戯曲の執筆にあった。官僚組織に人工言語「プティデペ」が導入される顛末を描いた『通達』、ビール工場を舞台に上司が部下に奇妙な取引をもちかける『謁見』の二編を収め、「力なき者たちの力」を考究したこの特異な作家の、不条理かつユーモラスな作品世界へ誘う戯曲集。
直木賞候補『スモールワールズ』で注目を集めた一穂ミチ。 期待の書き下ろしは、あらゆる世代に刺さるすぎる群像劇! 日々頑張るあなたが、きっとこの本の中にいます。 舞台はテレビ局。旬を過ぎたうえに社内不倫の“前科”で腫れ物扱いの四十代独身女性アナウンサー(「資料室の幽霊」)、娘とは冷戦状態、同期の早期退職に悩む五十代の報道デスク(「泥舟のモラトリアム」)、好きになった人がゲイで望みゼロなのに同居している二十代タイムキーパー(「嵐のランデブー」)、向上心ゼロ、非正規の現状にぬるく絶望している三十代AD(「眠れぬ夜のあなた」)……。それぞれの世代に、それぞれの悩みや壁がある。 つらかったら頑張らなくてもいい。でも、つらくったって頑張ってみてもいい。続いていく人生は、自分のものなのだから。世代も性別もバラバラな4人を驚愕の解像度で描く、連作短編集。
ノーラはその日人生のどん底にいた。飼っていた猫を亡くし、仕事をクビになり、いくら悲しくても話を聞いてくれる家族も友人もいない。頭をめぐるのは後悔ばかり。「私がもっといい飼い主だったら」「両親にも亡くなる前にもっと親孝行ができていたら」「恋人と別れなければよかった」「故郷に戻らなければよかった」生きている意味などもうないと、ノーラは衝動的に自らの命を絶とうとする。だが目覚めたとき、目の前には不思議な図書館が佇んでいたー。2020年Goodreads Choice Awardフィクション部門受賞。
驚きに満ちていて悲しい。それが旅だった。オーストラリアとスリランカ。遠く隔たった二人の主人公の半生と束の間交錯するその道のりが紡ぎ出す、現代世界をめぐる「旅」の諸相。各国の批評家から絶賛され、著者を一躍世界的作家に仲間入りさせたオーストラリア現代文学屈指の傑作、待望の邦訳。