2022年6月28日発売
一枚の絵が、世の中の仕組みを大きく覆す。 男は、どん詰まりの場所にいた。 二年半前の大学生だった娘の交通事故死。そこから精神の変調を来たし、二度の自殺未遂の隘路から抜け出せない妻。 あれを試すしかないのかーー。 かつて、高校受験に失敗した直後、失意のうちに目にした「道」というタイトルの一枚の絵。そして、そのあとに訪れた名状しがたい不思議な出来事。 40年ぶりにその絵を目にした男は、気が付けば、交通事故が愛娘に起こる直前の三軒茶屋の交差点にいた。 構想10年。満を持して放つ、アンストッパブル巨編。 【編集担当からのおすすめ情報】 もしも、あの時ああしていたら、自分の人生、どうなっていたんだろう。 誰しも思い当たる節があるそんな瞬間に本当に戻れたら、いったいどんなことになってしまうのか。 そのあとは、思い描いたように新たな時を刻んでいってくれるのだろうか。 ひとことでいえば、本作はタイムリープのジャンルに入るはずですが、 「もしも、あの時」というこの一点を突き詰められるだけ突き詰めて、ここまで細密に、リアルに、シミュレーションをなし得ているエンタメ小説を寡聞にして私は読んだことがありません。 そう、このフィクションは、大きな嘘をひとつ、ついているはずなのに、そこから始まる全風景に徹底した吟味考察が加えられているため、こんなことが本当に世の中で起きていてもなんら不思議ではないのではないか、と読み終わったあとでそんな感懐に囚われてしまうのです。 大きな鍵は、ニコラ・ド・スタールが描いた「道」というタイトルの一枚の絵。 この絵を、著者の白石一文さんがはじめて目にしてから実に十年。 それが、このような物語になるなんて、というような月並みな驚きを禁じ得ません。 小難しいことは一切出てこない。 でも、まだ気づかれていないこの世界の真理をひとつだけ明かしてしまっている。 そんな小説だと思います。ぜひ、ご一読いただけたら幸いです。
50代半ばの男性が、健康を理由にはじめたロードバイクにのめり込む。折しもコロナ禍、会社の業績不振という息苦しい状況が訪れるなか、会社では部下、自転車では師匠となる女性とともに新しい扉を開いてゆく。
2022年6月金城華が夫の一を刺殺。DVに耐えかねた妻が夫を殺した単純な事件として解決するはずだった。しかし、担当検事の冨永真一は不審を感じ、自ら捜査に乗り出す。ほぼ時を同じくして糸満市で自衛隊の戦闘機の墜落事故が発生。民間人が死亡したことで軍事基地が集中する沖縄では、抗議デモが巻き起こる…。かつてない臨場感で沖縄の姿を炙りだす、冨永検事シリーズ第三弾にして最高傑作!
ハイジの世界へようこそ!感動の名作の歴史的背景を探り、物語の名場面が新たな解釈でよみがえる。“特別収録”2019年スイス国立博物館『日本のハイジ展』座談会。
「お前たちを殺すことはできない。俺の分まで生きてくれ」との、夫の別れ際のひと言に、今日まで背中を押されて生きて来た。今でも、去っていく…あの後ろ姿が忘れられない。平成に入り、和子は84歳になった母信子を誘い、オホーツクへ旅に出る。そこで母は、堰を切ったように、満州の記憶を話しはじめる。信子が娘に語った戦争の記憶をもとに綴られる、明治から令和まで5つの時代を生きた、4世代110年にわたる女たちの物語。