2022年9月27日発売
母を亡くし辞典編纂者の父が勤める写字室を遊び場にして育ったエズメは、ある日、床に落ちてきたカードを見つける。そこに書かれていたのは「ボンドメイド」(はしため)という単語。そこから、「捨てられたことば」を掬い上げるエズメの人生の旅が始まった。女性参政権運動と第一次大戦に揺れる激動の時代ー草創期の英国『オックスフォード英語大辞典』編纂室を舞台に「捨てられたことば」の蒐集に生涯を捧げた女性を描く感動作。
“ロックスミス”と名乗る男が夜のニューヨークに跳梁していた。男は厳重に鍵のかかった部屋に侵入し、住人に危害を加えることもなく、破った新聞紙に書いたメッセージを残して去った。犯人はいかにして短時間で錠を破ったのか。犯行は無差別なのか、それとも被害者を結ぶ線があるのか。そして何より、この奇怪な犯人の真の目的は?ニューヨーク市警からの依頼で、四肢麻痺の科学捜査の天才リンカーン・ライムが捜査に乗り出した。だがライムは警察内部の政争にまきこまれ、別件の裁判での失態を理由にニューヨーク市警との契約を解除されてしまった。捜査を続行すれば逮捕される危険すらあるが…。密室を破る怪人“ロックスミス”VS現代の名探偵リンカーン・ライム。警察も敵に回り、犯罪組織に命を狙われながらもライムはあくまで知力で戦いに挑む。そしていくつもの事件と謎と犯罪がより合わさったとき、多重ドンデン返しが華麗に発動する!魔術師ディーヴァーが3年ぶりに書き上げた現代謎解きミステリーの新たなる傑作。
大地の骨が折れるように暑い七月の黄昏。伏牛山脈のある村で謎の病「夢遊」が伝染しはじめる。昼の世界の秩序は崩壊し、隠された欲望をむき出しにする人々。父母が営む葬儀用品店を手伝う一四歳の少年・李念念は、夢遊をのがれて夜の闇を直視する。遺体を火葬する際に出る屍体の油、葬儀用の花輪や金箔の冥紙、果てしない略奪と殺戮、そして念念の隣家に住む著名作家の閻連科…。夢遊の闇を取りはらう太陽は果たして生き返るのか。現代中国の矛盾を正面から描き、本国では発禁処分の続く作家が到達した奇怪なる最高傑作。閻連科文学の極北、第6回紅楼夢賞受賞。
伝説の「さまよえるユダヤ人」を名乗るアハスヴェルが主宰する教団「光の子ら」を糾弾すべく準備を進めていたカルト宗教の研究者ウルフ・ハリガンは、ひょんなことから知り合った作家志望の青年マット・ダンカンの協力を得、二人は「光の寺院」で開かれる教団の集会に参加する。その集会の場で、全身に黄色い僧衣をまとった教祖アハスヴェルは、信者たちとともに「ナイン・タイムズ・ナイン」の呪いを唱え、ウルフの死を予言する。その翌日、ハリガン家の家族とクロッケー場でゲームに興じていたマットがふとウルフのいる書斎を見ると、ウルフの机に身をかがめている黄色い僧衣を着た人物の姿が目に入る。窓は施錠されており、邸内の扉から書斎に入ろうとするものの、やはり鍵がかかっていて中に入れない。再び外に出て窓から中をのぞくと、ウルフは顔面を撃たれて床に倒れており、存在したはずの黄色い衣の人物は消え失せていた…。この不可解な密室殺人の謎に直面したダンカンは、探偵小説嫌いのマーシャル警部補と共に「密室派の巨匠」ジョン・ディクスン・カーの“密室講義”を参照しながら推理・検討をするのだが、なんと“密室講義”のどの分類にも当て嵌まらないことが判明する。困惑する捜査陣を前に、難事件の経緯を知った尼僧アーシュラは、真相究明のために静かに祈りを捧げるのだった…。果たして異色の尼僧探偵の祈りが通じ、神をも畏れぬ密室犯罪の真相が看破されるのだろうか!?ジョン・ディクスン・カーに捧げられ、エドワード・D・ホックが主催する歴代密室ミステリ・ベストテンにも選出された、都市伝説的密室ミステリが新訳によって半世紀の時を経てここに甦る!
馴染みのカフェで、作家の中津川進太郎は原稿の締め切りに追われていた。取り乱した様子の中年女性が突如訪れ、動揺する中津川とマスターに「ニートの息子が騙されている」と話しはじめる。お人好しで次々と詐欺に会う彼女と、行方不明の息子の行く末は…。『騙された女』ほか、2作品を収録した短編集。