2023年1月19日発売
元の生活に戻りたいと人が言う時の「元」とはいつの時点なのかー。あの災厄から十年余り、生活も仕事道具も攫われ、妻を喪った男はその地を彷徨い続けた。仙台在住の書店員作家が描く、止むことのない渇きと痛み。第168回芥川賞受賞。
「好きでやってることだすけな、仲間っこが来てければ嬉しいよ」 趣味もなく学校でも進路に迷っていた綾。でも「ひし形屋」で、より子先生に南部菱刺しを教わって、世界が一変した!?「魔女の菱刺し工房」 母が認知症となり、接し方に悩む香織。より子先生と一緒に無心で刺している中、あるアイディアを思いつく。「ひょうたん」 長らく引き籠もっていたより子の孫・亮平。より子は静かに亮平を見守っていたが……。「真麻の聴色」 苦しい時、嬉しい時、そして誰かを想う時。布の目を数え、模様を作るーー。 青森の南部菱刺しをテーマに描く、手芸×再生の四篇。
特殊部隊“サイレント・コア”原田小隊は、台湾の若者を集めた即席部隊を指揮し、台湾北部の都市新竹の外れにいた。台湾軍第6軍団が敵に包囲されているサイエンスパークに睨みをきかせていたその頃、上海国際警備公司(S.I.S)-中国最大の民間軍事会社の傭兵部隊が、桃園国際空港に迫っていた。人民解放軍の新たな兵器も投入され、少年烈士団が詰める空港エリアに最大の危機が訪れようとしている。高度な飛行性能を誇るドローンや跳躍地雷の性能を持つドローン、脅威判定を瞬時に行い敵を葬るAI制御の四足歩行兵器…新兵器続々登場のシリーズ第八巻!
イギリス南西部の建築事務所で非正規社員として働くレベッカは、幼いときに父親が家を出ていってしまい、母親に育てられた。父親のレオには20年近く会っていない。ある日、男性記者エリスが取材目的でレオの行方を尋ねてきた。レオはかつてBBCの子ども番組に出演していた人気俳優だったのだ。エリスはレオが現在どこにいるのか見つけられないという。父親など存在しないかのように暮らしてきたレベッカが母親や親戚に聞いても、「ろくな男じゃない」としか教えてもらえず、生死すらわからない。だが、祖母がこっそり一冊の本を渡してくれる。それは、父親が自分のために書いてくれたらしいおとぎ話の本だった。レベッカはエリスの取材に協力しつつ、本を手がかりに父親を探そうとするが…。“収集家と水の精”“世界の果てへの航海”“魔女とスフィンクス”…7つの奇妙なおとぎ話が収められた本が、知らなかった父親の想いを描き出す。本をこよなく愛する著者が贈る、切なくも心温まる家族の物語。
自分の店を持たず、間借り営業を信条とする雅代さん。いつものほほんとしていて、ニコニコ笑顔を絶やさない一見、普通のおばちゃんだが、鮨を握らせたら銀座の一流店も顔負けの腕前。しかも、新鮮で貴重なネタを仕入れる人脈ももっている。そんな雅代のところには、間借り先の料理人や悩める若者から相談や困りごとが舞い込んでくるー。鮨だけではなく、相手の胃袋も心も握る雅代さんの魅力あふれるハートウォーミング鮨小説。
天才錠前師の錠二は元パン屋で盗みのパーフェクト・プロデューサーである太陽に出会い、彼のチームに参加することに。悪党からしか金を盗まない太陽のチームは完璧な四人組になりつつあった。だが、錠二は太陽にありもしない横領疑惑を向けられてしまい、太陽を撃ち殺そうとする…。その瞬間、世界は“銃弾が命中した世界”と“動作不良で銃弾が発射されなかった世界”に分かれてしまう。太陽に成り代わりチームのボスになる錠二、太陽とともに足を洗ってパン屋開店を目指す錠二。義賊とパン職人、正反対の並行世界を生きているはずなのに、運命はやがて交わることにー。結末はそれでも一つ!?奇妙な人生の並行世界ミステリー。