2023年7月31日発売
その日、共謀罪による初めての容疑者が逮捕されようとしていた。動いたのは警視庁組織犯罪対策部。標的は、大手自動車メーカー〈ユシマ〉の若い非正規工員・矢上達也、脇隼人、秋山宏典、泉原順平。四人は完璧な監視下にあり、身柄確保は確実と思われた。ところが突如発生した火災の混乱に乗じて四人は逃亡する。誰かが彼らに警察の動きを伝えたのだ。所轄の刑事・薮下は、この逮捕劇には裏があると読んで独自に捜査を開始。一方、散り散りに逃亡した四人は、ひとつの場所を目指していた。千葉県の笛ヶ浜にある〈夏の家〉だ。そこで過ごした夏期休暇こそが、すべての発端だったーー。 自分の生きる社会はもちろん、自分の人生も自分で思うようにはできない。見知らぬ多くの人々の行為や思惑が作用し合って現実が動いていく。だからこそ、それぞれが最善を尽くすほかないのだ。共謀罪始動の真相を追う薮下。この国をもはや沈みゆく船と考え、超法規的な手段で一変させようと試みるキャリア官僚。心を病んだ小学生時代の友人を見舞っては、噛み合わない会話を続ける日夏康章。怒りと欲望、信頼と打算、野心と矜持。それぞれの思いが交錯する。逃亡のさなか、四人が決意した最後の実力行使の手段とはーー。 最注目作家・太田愛が描く、瑞々しくも切実な希望と成長の社会派青春群像劇。第26回大藪春彦賞受賞作。 第一章 事件 第二章 発端の夏 第三章 追う者たち 第四章 Are you ready to kill? 第五章 反旗 第六章 力なき者たちの力 終 章 標的
気が付いたら異世界にいた大学生の小鞠は、奴隷商人に追いかけられ絶体絶命のところを、ゴディルフェルという美しい魔法使いの青年に助けられる。案内されたお屋敷には、アビアラとペコという、これまた超絶美形の男性たちがいた。元の世界に戻る手がかりが見つかるまで、「マリー」としてこのお屋敷のメイドとして働くことに。しかしメイドの業務には魔力浄化、すなわち「性の御奉仕」も含まれていた!しかもこの世界が美醜逆転の世界で美形の彼らが周囲からバケモノと恐れられていることを知りー。
わたしたちには家族をめぐる秘密がある。母の不妊治療の失敗、凶暴な白い光と共に襲ってくる片頭痛。しずくとタマキは、持て余した心を抱えて縛られ地蔵に会いに行くー。傷つき、傷つけ、思いあう。痛切な家族の愛を描く。第66回群像新人文学賞受賞作。
第66回 群像新人文学賞受賞作! この部屋の住人は、みんないなくなる? 都市の片隅にあるマンションの一室、408号室に入れ替わる住人たちーー。奇想天外な物語が、日常にひそむ不安と恐怖を映し出す。 同じ部屋で前の時間が見えないまま孤独と恐怖を積み重ねていく構成で細部まで考えられていた。 理不尽さと暴力的な状況がスリリングで、多様な恐怖を描ける人だと思った。--柴崎友香 一連の奇想天外な考察は、インスタレーションと呼ばれる空間芸術の手法とも似ていて、 日常性からの逸脱を効果的に演出するにはうってつけだ。 ーー島田雅彦 ある〈部屋〉のみを舞台にすることで、作品の〈空間〉は限定されている。 が、前の住人、その前の……と過去を連鎖的に想像可能で、今後の住人という未来も延々の想像が可で、その意味で〈時間〉が限定されない。そこに越境のポテンシャルが満ちている。--古川日出男 初音 末吉 こがね もぬけの考察
紙業界誌に掲載された“紙人32面相の推理クイズ”と、現実に起きたという密室殺人事件との関係とはー?どんな紙でも見分けられる紙鑑定士・渡部は、懸賞目当てにクイズを解きながら今日も事件に巻き込まれる。学習塾で起きたカンニング事件の真相とは?「さわるときけん けがするで」物騒な怪文書を作った犯人は、どうやって密室の建物に忍び込んだ?事件とクイズを解明していった渡部は、“紙人32面相”から協力を請われ、とある怪死事件の謎も解くことに…。
人類と魔族の戦争が始まってから20年。勇者陣営は「ギフト」と呼ばれる希少な能力の持ち主を探すため、各地方を渡り歩いていた。辺境の村に住む少年フェイドは、勇者の訪問により自分が数少ないギフト持ちの一人であることを知る。しかし、それは人類陣営が危険視する「闇の力」のギフトだった…。フェイドのギフトを危険視した勇者は、フェイドの家族や村人を虐殺し始めた。大切な人を殺された怒りと憎悪によって「闇の力」のギフトが覚醒したフェイドは、その能力を使って辛くも勇者陣営の魔の手を逃れる。勇者と人類に復讐をするため、4年に亘り力を蓄え続けていたある日、人族と魔族領の境にある山脈でフェイドは魔王の少女に出会う。「-私と手を組まないか?」これは魔族へと寝返った最強が、勇者と人類に復讐する物語である。
「ある日のこと、オルロフはえんどう豆のピュレをいやというほど食べて死んだ。クルィロフはそのことを知って、やはり死んだ。スピリドノフは勝手に死んだ」 (「出来事(ケース)」より) 長くソ連では当局に禁止されていたものの、いまやロシアはもとより、欧米諸国でカルト的な人気を集めているダニイル・ハルムス。ロシア・アヴァンギャルドの終焉に燦然と輝くハルムスは、そのミニマルな文体、意味と無意味の戯れ、ユーモアと不条理で、「ロシア文学」のイメージを颯爽と覆す。 代表作である生前未刊行の短篇集『出来事(ケース)』と、訳者がセレクトした短篇38篇からなる旧版に、新たに訳出した10篇〈アンコール・ハルムス〉を加えた増補版として待望の復刊。岸本佐知子氏推薦!
誰もが恐れる宇宙犯罪組織「アニキラシオン」若干20代のそのボスは生まれながら心臓が弱く信頼する部下たちの勧めで心臓移植手術に踏み切ることに…しかし、それが全ての災いの元だったのだ。少女型セクサロイドに義体化されたアニキラシオンのボス「セロン・C・レオネ」とその正体を知らないまま一攫千金を夢見る賞金稼ぎ「ビル・クライド」まったく噛み合わないコンビがそれぞれの目的のために宇宙をさまよい、そして闘いの渦に飲まれていく!?韓国の小説投稿サイトに掲載されるとたちまち人気を誇ったこの作品をローカライズ化!!そのジェットコースターのような軽快なストーリーに魅了されること間違いなし!!
"Think not that dreams appear to the dreamer only at night, the dream of this world of pain appears to us even by day." In this book, famed author Lafcadio Hearn presents 14 fascinating stories--including deathless ghosts and yokai, local folklore and haunted places, as well as Buddhist traditions. This edition includes a new foreword by Michael Dylan Foster which explains the book's importance as a Japanese cultural and literary classic. The Japanese have two kinds of ghosts in their folklore--the spirits of the dead and the spirits of the living. In Ghostly Japan examines both and, in the process, offers a fascinating window into Japan's supernatural and spiritual world. The 14 stories include: ・Fragment"--A young pilgrim encounters a mountain of skulls and is shown a terrible truth ・Ingwa-banashi"--On her deathbed, a dying wife bequeaths to her young rival a sinister and horrific gift ・A Passional Karma"--A spectral beauty transcends death to return for her handsome samurai lover ・Story of a Tengu"--A priest saves the life of a Yokai monk and is granted a wish, but the outcome is not as expected 霊の日本 英文版 再話作家の第一人者であるハーンが日本の霊を描く14編をまとめた短編集。
我らの父祖の言葉は死につつある…… ともに覚醒せよ、皆、ともに覚醒せよ! 現在では牧歌的な風景や美しい海岸のイメージのある、 フランス北西部の半島に位置するブルターニュ。 そこには言語を強奪しようとするフランスからの支配に ペンで抵抗した文学者たちの歴史と、継承が危ぶまれる ブルトン語を守ろうとする人々の現在があった! ======== 【目次】 第一部 受難と抵抗 第一章 抗う人々の歴史 第二章 ブルトン語の受難 第二部 民族主義と文学的営為 第三章 『バルザス= ブレイス』の誕生と「バルザス= ブレイス論争」 第四章 ナショナリズムと国民(民族)文学の黎明 第五章 信仰と郷土愛に生きた詩人ブレイモール 第六章 社会参加の詩人カミーユ・ル・メルシエ・デルム 第七章 ブルトン語文学の創造を希求した作家ロパルス・エモン 第三部 戦後の言語放棄と言語復興運動 第八章 ブルトン語の危機 第九章 ブルターニュ地方の言語政策 第一部 受難と抵抗 第一章 抗う人々の歴史 第二章 ブルトン語の受難 第二部 民族主義と文学的営為 第三章 『バルザス= ブレイス』の誕生と「バルザス= ブレイス論争」 第四章 ナショナリズムと国民(民族)文学の黎明 第五章 信仰と郷土愛に生きた詩人ブレイモール 第六章 社会参加の詩人カミーユ・ル・メルシエ・デルム 第七章 ブルトン語文学の創造を希求した作家ロパルス・エモン 第三部 戦後の言語放棄と言語復興運動 第八章 ブルトン語の危機 第九章 ブルターニュ地方の言語政策
「日の丸原爆製造計画」の真実 太平洋戦争中、理化学研究所の科学者たちは、陸軍か らの命令にどう対処したのか? 彼らは、本当に原爆を製造しようとしていたのか。 これまで世に出なかった新事実に基づくノンフィクション 小説。 戦中、戦後、日本の科学者たちは、陸軍やGHQ の圧力 に屈することなく、祖国の将来を見据えた基礎研究を続けたことが記されている。 はじめに 第一章 第二章 第三章 参考資料 あとがき
思いもよらない人々や異界との出会いを生み、読む/書く人々の試行錯誤の場となる「公園」を目指して、様々な分野のエッセイ・小説・漫画を収録する文芸雑誌がいよいよ創刊。 特集は「矛盾」。矛盾をいかに抱えていくか、矛盾があるからこそ可能になることは? 小説家、コーヒー店店主、数学者、物理学者、など様々なフィールドの書き手が「矛盾」を描く15のエッセイ・小説を集めました。 創刊準備号に引き続き「この1年に読んだ本」では、ジャンル・新旧を問わず、執筆者・制作者が印象に残った全21冊を紹介。 連載・小特集「これから読む後藤明生」では、漫画家・panpanyaが後藤明生の小説を読んで描く漫画をはじめ、エッセイ2編を収録。 すべてのページに画家・佐貫絢郁の書き下ろし挿画掲載。 巻頭言 ようやく創刊する『代わりに読む人』 この1年に読んだ本 2022-2023 ・panpanya/松尾信一郎/わかしょ文庫/小山田浩子/はいたにあゆむ/松尾模糊/今村空車/佐貫絢郁/蛙坂須美/飯村大樹/二見さわや歌/伊藤螺子/伏見瞬/永井太郎/深澤元/コバヤシタケシ/北村さわこ/牧野楠葉/陳詩遠/友田とん 特集 矛盾 ・友田とん 「矛盾」が考える ・はいたにあゆむ 環 感 勘 歓 ・今村空車 芝生の習作 ・わかしょ文庫 よみがえらせる和歌の響き 実朝試論 ・松尾模糊 海浜公園建設予定地 ・蛙坂須美 幽霊は二度死ぬ、あるいはそこにないものがある話 ・小山田浩子 こたつ ・松尾信一郎 水の滴るような積分記号について ・永井太郎 健康 ・陳詩遠 ありえない秩序 ・二見さわや歌 骨を撒く ・牧野楠葉 瑠衣 ・伏見瞬 「さみしさの神様」を待ちながら ・伊藤螺子 鶴丸さんの分身 ・友田とん 矛盾指南 連載・小特集 これから読む後藤明生2 ・細馬宏通 蕨、遡る歌 ・深澤元 後藤明生を売る ・panpanya 読み方 コバヤシタケシ dessin 2 ミイラ 著者略歴 読者の声