2024年3月発売
30年ぶりにアメリカから帰国し、武蔵野の一角・うらはぐさ地区の伯父の家にひとり住むことになった大学教員の沙希。 そこで出会ったのは、伯父の友人で庭仕事に詳しい秋葉原さんをはじめとする、一風変わった多様な人々だった。 コロナ下で紡がれる人と人とのゆるやかなつながり、町なかの四季やおいしいごはんを瑞々しく描く物語。 【著者プロフィール】 中島京子(なかじま・きょうこ) 1964年、東京生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。出版社勤務ののち、フリーライターに。アメリカ滞在を経て、2003年『FUTON』で小説家としてデビューする。2010年『小さいおうち』で直木三十五賞、2014年『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞を受賞。2015年『かたづの! 』で河合隼雄物語賞、歴史時代作家クラブ賞(作品賞)、柴田錬三郎賞、同年『長いお別れ』で中央公論文芸賞、翌年の日本医療小説大賞を受賞。2020年『夢見る帝国図書館』で紫式部文学賞、2022年『ムーンライト・イン』『やさしい猫』で芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)、同年『やさしい猫』で吉川英治文学賞を受賞した。そのほか、著書多数。
北海道浦河町で生産牧場を営む三上収、三上徹の親子。 パリ・ロンシャン競馬場で開催される世界最高峰の「凱旋門賞」の舞台で力を発揮できるのは、ステイゴールドの血統に違いないーーと確信していた。 そう結論づけた収はその産駒であり、かつて凱旋門賞で二着となったナカヤマフェスタの種付けを続けていた。そうして収が自信を持って作り出した仔馬は、調教師・児玉健司の目に留まり、将来の可能性を信じた馬主の小森達之助に引き取られることに。 二歳となりカムナビと名付けられたかつての仔馬は、美浦の児玉厩舎に引き取られ、その気性の荒さから厩務員である小田島雅彦らに手を焼かせていた。 一進一退しながらも着々と結果を残していくカムナビ。 目指すは、日本競馬界の悲願である凱旋門賞制覇。 生産者、厩務員、調教師、馬主、ジョッキー……ホースマンたちの夢を一頭の競走馬に懸けた熱き物語。 【著者プロフィール】 馳星周(はせ・せいしゅう) 1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。96年デビュー作『不夜城』で第18回吉川英治文学新人賞受賞。98年『鎮魂歌』で第51回日本推理作家協会賞、2020年『少年と犬』で第163回直木賞受賞。他の著書に『約束の地で』『神奈備』『雪炎』『蒼き山嶺』『パーフェクトワールド(上・下)』『雨降る森の犬』『ソウルメイト』シリーズ、『黄金旅程』『ロスト・イン・ザ・ターフ』ほか。
江戸を舞台に、個性豊かな三人の婆たちの日常とその周りで起こる悲喜劇をコミカルに描く「女性の老後」をテーマにした長編小説。 名手宅の祐筆(文書や記録を取り扱う職)を得て静かな余生を過ごしたいお麓(ろく)は、おはぎ長屋という長屋に住んでいた。これで老後の安泰は約束されたと思い込んでいたが、その平穏な暮らしはわずか一年で終わりを迎えた。お菅(すげ)が越してくると、さらに半年後にはお修(しゅう)がやってきたのだ。二人の幼馴染はお麓の長屋を毎日欠かさず訪ねてきては、心底どうでもいい話をしゃべり散らす。 お麓はこの先、二人とうまくやっていけるのか。安穏に暮らすはずの余生はどうなってしまうのか。さらには、いろいろな事件に巻き込まれていき……。
幕府直轄の出羽の島に、なぜ蝦夷地の赤い花が?その島では曇って海が霞んで見える日に、怪異な浮き物が沖合に現れる。幕閣が江戸から送り込んだ若き藩主たちがその正体に迫った時ー文化文政の世、幕府の威光に陰りが見え始めた世情を照らし出す、時代ミステリー。第15回日経小説大賞受賞。
天国で何不自由なく暮らしているトオルのもとに舞い込んできた、人生やり直しのチャンス。死に別れた最愛の妻に指輪を手渡すべく、GTRを賭けた「禁断のクイズ大会」に参加することにートオルは無事に元の世界へ戻ることができるのか。そして、最後に明かされる衝撃の事実とは。表題作「GTR(天使のように僕は死んだ)」ほか、ユーモアたっぷりな全4編を収録。
源氏物語に傾倒した現代の女官がつづる京都滞在の日記物語。皇族の若い女宮さまを主人公に、マスコミ・バッシングによる心の傷をいかに癒すのか。皇室にゆかりの寺社仏閣や源氏物語にちなんだ洛中洛外を舞台に思わぬ出逢いが女宮さまの、そして女官達の心をほぐし、新たな人生の扉を押し開けていく。「やまとことば」と自作の和歌十首ほどを織り込むことで、源氏物語の趣をほのかに再現しているのも、この著作の魅力のひとつ。皇室とマスコミ、皇室と国民の関わりや在り方に対しても国民的議論に一石を投じたいという作者の意欲作。 《第一週》起す;一帖 鴨川;二帖 宇治;三帖 離宮;四帖 伏見;五帖 嵯峨;六帖 祇園;七帖 篭り;八帖 東山;九帖 近江;《第二週》承ぐ;十帖 今出川;十一帖 明石;十二帖 野兎;十三帖 観世音;十四帖 奈良;十五帖 先斗町;十六帖 豊国;十七帖 建勲《第三週》転ず;十八帖 作業場;十九帖 門跡;二十帖 糺の森;二十一帖 銀閣;二十二帖 芸術家;二十三帖 洛中洛外;《よりあと》結ぶ;二十四帖 談義;二十五帖 御寺;二十六帖 御所;二十七帖 清明
気が付くと鬱ゲームの世界のアドマト公爵家嫡子フェゼとして転生していた主人公。しかし、前世の記憶だとフェゼは死の運命を辿るキャラクターだった。そんな結末を避け、生きて元の世界に帰還するべく、異界に通じるとされる開天神代の魔法具を入手するためにダンジョン攻略に挑む。さらに資金を稼ぐためマモン商会で出会ったネイを誘ってビジネスを始めたり、やがては戦争も起こす羽目にー!!生きるためならどんな手段も厭わない主人公による、異世界攻略ファンタジー開幕!
俺はただ家に帰りたいだけなのに、それがそんなにおかしいか? 郵便配達をしていた俺は故郷の「くに」から逃げてきた。妻のカルラと幼い息子とともに「島」で不法滞在している。買い物をした帰りに乗っていた地下鉄が故障で止まってしまい、右も左もわからない場所で降ろされてしまった一家。なんとか家にたどり着こうとあれこれ画策するが、やることなすことすべてが裏目に出て━━。周囲から存在を認められず、無視され続ける移民の親子は、果たしてどうなるのか?
不登校の遥香は、リビングの本棚の片隅で一冊の汚れた本を見つけた……『アンネの日記』。 そして、それが不思議なできごとの始まりだった。 遥香が閉じこもる狭い部屋に、アンネ・フランクたちが突然現れる。そして強引に住み着いていく。 アンネたちはここで奇跡を待つのだと言う。当惑し混乱し反発する遥香。だが、やがて遥香とアンネとのあいだに深い友情が芽生えていく。遥香の心が動き出す……。 心揺さぶるファンタジー小説。
戦禍に苦しむ世界の子どもたちへ、届けよう、比嘉正子の「愛」を。敗戦直後の日本で、時の権力GHQと対等の関係を築き、戦後復興と生活者のための活動をつづけた女性がいた。彼女の名は「比嘉正子」。戦後の消費者運動の生みの親でもある。一人の女性が、政府・財界と対峙して、しなやかに誇り高く闘い抜いた原動力は、すべての人への「愛」だった。2025年3月比嘉正子生誕120年を迎える。今、戦禍に苦しむ世界の子どもたちへ、届けよう、比嘉正子の「愛」を…。
2123年10月1日、九州の山奥の小さな家に1人住む、おしゃべりが大好きな「わたし」は、これまでの人生と家族について振り返るため、自己流で家族史を書き始める。それは約100年前、身体が永遠に老化しなくなる手術を受けるときに提案されたことだった。
これは、捨てる! あれも、捨てる……? 溢れかえる洋服、本、フィギュア、溜め込んだカップ麺、レトルトカレー、非常食、密かに隠した写真に手紙……。他人事ではありません! 身内の身の回りを“断捨離”しようとする人たちの、右往左往に大共感の連作小説。 「捨てられない姉 捨てさせたい妹」 43歳・独身のトモコは引っ越しのため洋服を処分しようとするが、あれこれ思い出してなかなか進まない。14歳下の妹・マイ(元セレブ妻)は手伝わないくせに口は出し、どんどん捨てさせようとし、捨てる代わりに新しい洋服をプレゼントすると言う。 「息子の嫁の後始末」 息子の妻が突然、姿を消してしまった。彼女が残した荷物を整理するハメになったタダシは、ため息をつきながら、心でツッコミを入れながら、大小雑多な“ゴミ”と格闘するのであった。 「本好きとフィギュア好きの新居問題」 フィギュア好きの同僚・ヨシノリと結婚することになった、本好きのサエコ。2LDKの新居を決めたけれど、それぞれの本とフィギュアはある程度処分しないと、到底収まりそうにない。週末ごとに本を整理するサエコだったが、ヨシノリは作業している様子がまるでない。 「溜め込みすぎる母」 母に呼び出されて実家に帰ったトモミ。用件は大量に溜め込んだ食料品の整理だった。ミネラルウォーター、各種缶詰、レトルトカレー……極めつきは396個のカップ麺。トモミは母を説教したり機嫌を取ったりしながら、片っ端から片付ける。 「夫の部屋」 娘のナオミが中学受験の頃、アイコの夫の不倫疑惑が持ち上がった、それからもずっと疑惑が払拭されないまま60歳で退職した夫が検査入院することになった。ナオミはこの機会に父親の部屋に入って不倫の証拠を暴いてやろうと、アイコをけしかける。夫の部屋から出てきたのは……。
原田マハ3年ぶり長編アート小説がついに単行本に! 「ワぁ、ゴッホになるッ!」 1924年、画家への憧れを胸に裸一貫で青森から上京した棟方志功。 しかし、絵を教えてくれる師もおらず、画材を買うお金もなく、弱視のせいでモデルの身体の線を捉えられない棟方は、展覧会に出品するも落選し続ける日々。 そんな彼が辿り着いたのが木版画だった。彼の「板画」は革命の引き金となり、世界を変えていくーー。 墨を磨り支え続けた妻チヤの目線から、日本が誇るアーティスト棟方志功を描く。 感涙のアート小説。
ミイラ化した死体は何を語る? 引きこもりを抱えた家族を襲う悲劇。 彼らは被害者か、それともーー。 光崎教授が抉り出す、深い闇とは? 死体は嘘を吐かないーー傑作法医学ミステリー第5弾! 家族はどこで一線を越えてしまったのか 浦和医大法医学教室にミイラ化した遺体が運び込まれた。亡くなったのは40歳の独身女性で、死後2週間が経っていた。 まだ4月だというのに埼玉で見つかった4体目の餓死死体だ。埼玉県警の古手川によると、女性は大学受験に失敗して以来20年以上引き籠っていたという。同居していた70代の両親は先行きを案じ、何とか更生させようと民間の自立支援団体を頼ったが、娘は激昂し食事も摂らなかったらしい。彼女はなぜ餓死を選んだのか? それとも親が嘘を? だが、解剖を行った光崎教授は、空っぽであるはずの胃から意外なものを見つけるがーー。
福岡藩士の職を失った新米浪人新四郎は、職探しのため博多旅人問屋『桜田屋』を訪れる。あるじの桜田屋伝兵衛から紹介されたのは、商家の娘、おふくの用心棒だった。何者かに狙われるおふく。その狙いは何なのか…。新四郎は旅人問屋で出会った個性豊かな仲間たちとともに、事件に立ち向かう! 博多旅人問屋を舞台に繰り広げられるさまざまな人間模様。旅人問屋と博多情緒を織り込んだ、周防凛太郎のローカル時代小説第一弾!
死体が持っていた財布の十五万フランを狙う浮浪者“ネズミ”。彼に不審を抱くパリ九区担当のロニョン刑事。遺失物扱いされた財布を巡る事態は思わぬ展開を見せ始める。煌びやかな花の都パリが併せ持つ仄暗い世界を描いた〈メグレ警視〉シリーズ番外編! ロニョン刑事とネズミ 訳者あとがき
美しすぎる女子アナとして地元テレビ局で有名な広瀬愛理。彼女の挙式目前に起こった殺人事件。捜査を担当する友永は「狂犬」と呼ばれる女性刑事だったー。難航する資産家殺人事件の真相を暴く天下無敵の女性捜査官、いざ降臨!
一九六八年一月、研修医の待遇改善に端を発する東大医学部闘争が勃発。その余波は、小暮悠太が所属する精神医学教室にも及び、悠太の研究室も全共闘の学生たちに占拠される。騒然とした状況の中、犯罪学の研究の傍ら小説を書き始めた悠太。そこへ、幼い頃から愛し続けていた千束が離婚したとの話が舞い込んでくるーー。 『永遠の都』に続く自伝的大河小説の第三部。毎日出版文化賞企画特別賞。