2024年9月28日発売
森田みどりは、高校時代に探偵の真似事をして以来、人の〈本性〉を暴くことに執着して生きてきた。気づけば二児の母となり、探偵社では部下を育てる立場に。時計職人の父を亡くした少年(「時の子」)、千里眼を持つという少年(「縞馬のコード」)、父を殺す計画をノートに綴る少年(「陸橋の向こう側」)。〈子どもたち〉をめぐる謎にのめり込むうちに彼女は、真実に囚われて人を傷つけてきた自らの探偵人生と向き合っていく。謎解きが生んだ犠牲に光は差すのか。痛切で美しい全5編。 時の子 縞馬のコード 陸橋の向こう側 太陽は引き裂かれて 探偵の子
高校2年の祈里は、体調が優れず伯父が働くクリニックに行くと、あと数年しか生きられない病気だとわかる。これまでの友人関係も、将来のために頑張っていた勉強も無駄になると絶望し、心の拠り所だったより江さんの家に向かう。すると、なぜか去年同じクラスだった春日井くんがいて、より江さんは祖母であること、さらに亡くなったことを知らされる。遺品整理を手伝ううち、どんどん彼に惹かれていくが、このまま好きでいていいのか、悩みは募るばかりでー。
自分にないものを、たくさん持っている人たちが眩しかった。 高校1年生の海実は奥二重がコンプレックス。アプリで加工をしているとクラスの男子にからかわれてしまう。ショックのあまり、自分の顔がおかしく見える「思春期の風邪」に罹ってしまった。マスクで顔を隠して学校に通うが、次第に家から出るのもつらくなっていった。そんなとき、よくない噂の多いクラスメイトの久米くんに「俺の息抜きに付き合って」と声をかけられ、授業をサボることになってーー。 ひとつの出会いが私の世界を変えてくれる。 共感度抜群!この物語はあなたの宝物になるーー。 『青春ゲシュタルト崩壊』の著者が贈る、恋と勇気の青春物語。
伊賀忍者・向井正綱は、甲賀衆に襲われている市女笠の少女を助ける。少女ー雪姫は、伊勢の戦国大名・北畠具教の愛娘。織田信長の子・茶筅丸への輿入れが決まっていたが、不本気な婚礼を嫌い、織田家の非道を京の幕府に訴え出ようとして狙われたのだった。「北畠を、伊勢を、お助けください!」姫君の懇願を聞き入れた正綱。山野を駆け滄海を渡り、甲斐の武田を引き入れ熊野水軍をも動かす。敵は信長。織田の大軍との大勝負が、はじまる…!第15回小説野性時代新人賞受賞作。
第15回 小説 野性時代 新人賞 受賞作! 落語好きの父に連れられ寄席に通うなか「演芸写真家」という仕事を知った宮本繭生は、真嶋光一に弟子入りを願い出る。「遅刻をしないこと」「演者に許可なく写真を撮らないこと」を条件に許可されるが、ある日、繭生は高まる衝動を抑えきれず、落語家・楓家みず帆の高座中にシャッターを切ってしまう。繭生は約束を破ったことを隠したまま演芸写真家の道を諦める。それから4年、ウェディングフォトスタジオに勤務する繭生のもとに現れたのは、あのみず帆だった……。
おちこぼれの女性ジャーナリストが異国の砂漠の地で掴んだ、 自分しかできない仕事、そして、人間のほんとうの幸せとは フリージャーナリストとしての活躍の道が拓けずくすぶっていた寿美佳(すみか)は、摂氏六十度を軽く超える砂漠の地で、鉱石を運ぶトラックに乗っていた。 ここはオーストラリアでも「デッドエンド」と呼ばれる地帯。この先の鉱山で、元引きこもりの日本人労働者や、海外の政治犯が強制労働に従事させられているという疑惑を聞きつけて、記事を書いて一山当てようと潜入取材に乗り込んだのだ。金がない寿美佳のスポンサーとなったのは、夫の研究者・クセナキス博士がここに閉じ込められていると訴える博士の夫人だった。 博士を救い出すという任務も帯びながら、命からがら苛酷な砂漠を越え現地にたどり着いた寿美佳だったが、そこで出会った博士をはじめとする3人の労働者が語ったのは、寿美佳が全く思いもよらない背景だった……。 ここは見捨てられた場所、そして、途方もなく自由な土地ーー 「他の場所では生きられなくても」、今、自分の身体が、能力が、拡張していく。 人生の本質や、生と死の尊厳を、外から判断できるのか。 ほんとうの幸せとは何かに迫る著者の真骨頂。
雪の深夜の当直中、刑事の松野徹は不審車両に遭遇し職務質問する。運転手の藤池光彦は急発進、徹は追跡するが車は交差点に突っ込み、光彦と通りかかった車の家族四人が死亡する大惨事となる。警察への批判が強まりかけたとき、光彦が事故直前に強盗致傷事件を起こしていたと判明、非難は遺族に集中した。冤罪を疑う光彦の両親から再捜査を嘆願された徹は、自責の念に誘われるように引き受けてしまう。新事実など出てきようがない、はずだったがーー。 序章 二〇二二年 二月 第一章 二〇二二年 八月 第二章 二〇二二年 九月 終章 二〇二三年 二月
僕らはパーキンソン病という荷物を持って歩いている。でも、ひとりぼっちじゃない! ─ 樋口了一 パーキンソン病を宣告されたシンガーソングライター・樋口了一(『手紙〜親愛なる子供たちへ』で 第42回日本有線大賞有線音楽優秀賞および第51回日本レコード大賞優秀作品賞を受賞)が主演を務めたことでも話題になった映画『いま ダンスをするのは誰れだ?』、待望の小説版。 40代で若年性パーキンソン病と診断された主人公と、彼を取り巻く人たちの絶望と希望。 映画では描き切れなった葛藤とドラマを丁寧に拾い上げ、新たな感動をお届けします。 巻末には、本作の主演を務めた樋口了一との対談も収録。 働き盛りの主人公が難病とされるパーキンソン病を発症し、苦悩し葛藤しながら、新たな自身に出会い、病気を一つの個性として乗り越えていく様が描かれている。 パーキンソン病は発症すると「身体を思うように動かしにくくなる」などの神経症状が現れる。国内には30万人ほどの患者がいると推定されている。高齢層のみならず若年層も罹患するパーキンソン病。 孤立に強いられる人が多数いるこの疾患、本作ではポジティブな側面を描くなど、当事者に対して密な取材を重ねた古新監督ならではの視点が温かい。 パーキンソン病の当事者とそのご家族だけでなく、なにかに行き詰っている人、諦めようか、努力するのはもうやめようか、と思っている人にも、観てほしい(読んでほしい!) 樋口了一
第二次世界大戦下のヨーロッパで 敵国の書物を収集せよーー 実在の図書館司書に材をとり、 本を愛する者たちの闘いを描いた、 心揺さぶる傑作長編! ベストセラー作家の本領発揮 1942年、第二次世界大戦下。ニューヨーク公共図書館で働く司書のマリアは、大統領令に基づく任務を帯び、ポルトガルのリスボンに旅立つことになった。その任務とは、身分を偽り、戦略分析のため枢軸(すうじく)国の刊行物を収集すること。報道写真家の母をスペイン内乱で亡くしたマリアは、危険を冒してでも戦争を終わらせたいという強い想いを抱いていたのだ。 同時期、リスボン。書店を営む青年ティアゴは、書類偽造の天才である書店員ローザとともに、迫害から逃れようとするユダヤ人避難民を命懸けで援助していた。マリアは街で本や新聞を集めるうちにふたりと出会い、戦争を終わらせるためのさらなる任務に臨むことに── 戦時のヨーロッパで活躍した実在の図書館司書に材をとり、本を愛する者たちの闘いを描き上げた、心揺さぶる傑作長編!訳者あとがき=高山祥子
あるトラウマが原因で教室内では声が出せない“場面緘黙症”を患っている高2の柚葵。透明人間のように過ごしていたある日、クールな陸上部のエース・成瀬がなぜか度々柚葵を助けてくれるように。まるで、彼に自分の声が聞こえているようだと不思議に思っていると、成瀬から突然『人の心が読めるんだ』と告白される。少しずつふたりは距離を縮め惹かれ合っていくけれど、成瀬と柚葵の間には、ある切なすぎる過去が隠されていた…。“消えたい”と“生きたい”の間で葛藤するふたりが向き合うとき、未来が動き出すー。