2024年9月発売
ーー恋愛感情がない。性欲がない。それでも「普通」に暮らしている。 5年間勤めた会社を辞め、街の小さな喫茶店「ブルー」でアルバイトをする鳴海優輝。 心優しい啓介が営む「ブルー」には秘密を抱えた人々が集まってくる。 デザイナーの北村、高校2年生のヒナ……。 常連客の悩みに向き合う鳴海にも、周りに言えない想いがあった。 多様なセクシュアリティを持つ人々を、やわらかく鮮やかに照らす、畑野智美の新たな代表作。
クラスの女子たちが、タイムカプセルを埋めたらしい。6年3組のぼくは、親友のシンイチとヨモヤとともに、遠くの煙突の麓にある公園まで自転車で行ってみることにしたーー「海の街の十二歳」高校の同級生・潮田の久しぶりのSNSを見ると、癌で闘病中とあり見舞いに訪れた波多野。数ヶ月後、潮田は亡くなり、奥さんのカナさんから、散骨につきあってほしいと言われーー海の街を舞台にした著者の新境地、全7編。
元自衛隊員の遺体がまた見つかった。共通するのは、政情不安下の南スーダンにPKO部隊として派遣された"特戦群"メンバーだったこと。同隊所属の風戸亮司は危機からの突破口を探り始める。時を同じくして一人の女性医師が南スーダンから帰国し愛娘と再会した。だがその直後、凄惨な悲劇に遭遇し……。彼の地に関わった者たちに迫る不穏な影の正体と目的とは? 自衛隊日報問題を起点に繰り広げられる緊迫の軍事サスペンス!
2011年の東日本大震災で津波による被害を受け、福島で二百年以上続く、日本酒「福の壽」を造る矢吹酒造所も何もかもすべてが流された。地震後の原発事故により、町に住むことさえできなくなった八代目の蔵元・光は、酒蔵の再建を断念していた。そんななか、津波に襲われたときに一人の少女を救えなかったことを今でも悔やむ光が、テレビ番組の取材を受ける。その映像をきっかけに次々と若き協力者が現れ、光は再び酒造りに挑む!
我が国では、脅威は常に「海」からやってくるーー。海上保安庁が機密保持のために長らく秘匿してきたスペシャルフォース「SST」の活躍を描く、壮大エンターテイメント! この隠密部隊は“実在”する。 沖ノ鳥島沖で、中国の密猟船が突然自爆して海に沈んだ。さらに大量破壊兵器の調達に関わる男がクルーザーから謎の失踪を遂げ、百名を超える乗客を載せたカーフェリーへの爆破予告が届く。この未曾有の危機に立ち向かう海上保安庁の特殊部隊「SST」を待ち受けていたのは、想像を絶する国際的陰謀だったーー。今まで詳細がひた隠しにされてきた“実在”の隠密部隊の活躍を描く、かつてない海洋エンターテイメント小説!
劇中で実弾発射! 女子大生探偵は真相に辿り着けるのか!? 観劇で訪れた劇団のマネージャー・佐知子から相談を持ちかけられた女子大生探偵・亜由美。本物の拳銃が劇中で使われたが、大事にならないように内密に処理してほしいと言うのだ。幸い弾丸は外れたが、一歩間違えれば被害者が出ていたところだ。真相を探るうち、命を狙われている女性を助けるために港町で公演してほしいと劇団にS O Sが。事件は混迷を極めて行きーー。表題作の他、「逢うときはいつも花嫁」収録。ユーモアミステリー・シリーズ第37弾。
二度と戻らないつもりでいた桜の町に彼を引き戻したのは、一本の電話だった。 「高砂澄香が自殺しました」 澄香ーーそれは彼の青春を彩る少女の名で、彼の心を欺いた少女の名で、彼の故郷を桜の町に変えてしまった少女の名だ。 澄香の死を確かめるべく桜の町に舞い戻った彼は、かつての澄香と瓜二つの分身と出会う。 あの頃と同じことが繰り返されようとしている、と彼は思う。 ただしあの頃と異なるのは、彼が欺く側で、彼女が欺かれる側だということだ。 人の「本当」が見えなくなった現代の、痛く、悲しい罪を描く、圧巻の青春ミステリー!
異世界に召喚され雑用係として勇者パーティーに参加していたノヴァ。彼が持つスキル【風が吹けば桶屋が儲かる】は「一見なんの意味もなさそうなクエストをクリアすると、予想外の成果が得られる」という非戦闘系の特殊スキル。国王からは「役立たず」と見なされ、追放を言い渡されてしまう。 しかたなくノヴァは堅苦しい王都での暮らしを捨て、念願だった田舎でのスローライフを目指すことに。 しかし実は、ノヴァこそが影の英雄だった! 勇者パーティーの数々の功績はノヴァのおかげだったと判明し、国王は必死に彼の行方を捜し始める。一方ノヴァはたどり着いた小さな村で充実した田舎生活を満喫。レアな素材をざくざく採取したり、伝説のドラゴンを孵化させて懐かれたり、まさかの古代兵器を復活させたり…。 ここでも異次元の活躍を見せるノヴァは、村を急速に大発展させていてーー!? 審査員一同大絶賛! 「第4回グラスト大賞」大賞受賞作、堂々の書籍化!!
親に愛されず不遇な前世を終えたティアは、神様から錬金術の力を授かり「今度こそ自分らしく生きたい」と異世界で第二の人生を送ることに。 公爵家に生まれ、過保護な家族に見守られながら3歳を迎えたティア。「可愛いものを作るぞ!」とはじめて錬金術を発動し、兄のために作ったのは…禍々しい髑髏のついた剣だった。前世で抑圧されていたせいか、ティアの感性は周囲とは少し(?)ズレているものの、軽く一振りするだけで魔物が真っ二つになる規格外アイテムで…!? 「それなんて、ただ可愛いだけの剣でしゅよ?」 ほかにも、瘴気を浄化する漆黒の音楽箱やひとりでにティアを守る骸骨騎士のぬいぐるみなど…可愛いものを作っているだけのつもりが、とんでもないアイテムを次々と量産! 一方、不穏な企みにより、ティアの目の前で封印されていた魔王が眠りから覚めてしまうが…!? 無自覚だけど最強すぎる幼子錬金術師の夢の異世界生活、スタート!
田舎暮らしに憧れているサラリーマン・リュータ。料理やDIYを楽しむ日常系動画を見て妄想を膨らませる日々だったが、伯父の勧めで思い切って山奥の別荘を購入することに! 念願の山暮らしを始めたリュータは、DIYで理想の環境を整えていく。その日の深夜、謎の声が聞こえた方向に進んでみると、なんと山荘の地下が異世界に繋がっていて…!? 力を失い消滅目前だった神・セイカと出会い料理を振舞ったところ、みるみるうちに力を取り戻していくセイカ。どうやらリュータの料理には、神々を癒やす力があるようで…。 森の動物たちの力を借りてボロボロだった社を修理したり、異世界で採れた食材でBBQをしたり…そんなリュータたちのもとに、強力な戦神やリュータに嫉妬する聖女、さらに伝説の魔神まで訪ねてきて!? とある山奥ではじまった、個性豊かな神々たちとののんびりにぎやかスローライフ!
貧困、暴力、搾取、死。 自らを「宇宙人」と呼ぶ男の人生は、はたして“絶望”なのかーー。 木原音瀬が挑む新境地。 漫画家・平庫ワカ氏によるカバーイラストにも注目! 「ジブンは地球の人間じゃない。早く宇宙の星に帰りたい」 自称「宇宙人」の男・ムラは、ドヤ街でホームレス生活を送っていた。空腹に耐え、過酷な日雇い労働をし、ある時には金をだまし取られながらも淡々と日々を過ごすなかで、ひとりの芸術家の青年に出会う。そんなある日、「星」にいるはずの父親の遺体が解体現場から発見されるーー。 【著者プロフィール】 木原音瀬 このはら・なりせ 高知県出身。1995年『眠る兎』でデビュー。『美しいこと』『箱の中』をはじめとするボーイズラブ作品を多数発表。ほかの著書に『ラブセメタリー』『罪の名前』『コゴロシムラ』「捜し物屋まやま」シリーズ、「吸血鬼と愉快な仲間たち」シリーズなどがある。
発達障害の観点から小説版ムーミン・シリーズを読み解いた、全く新しいムーミン評論! はみだしている人たちのために書かれたというムーミン・シリーズの新たな魅力を見いだし、ムーミン谷のように、誰もが住みよい世界をつくるヒントに満ちた1冊。 作品の奥深さ、トーベ・ヤンソンの才能の素晴らしさがより多面的にわかります。 自分勝手で、てんでバラバラなのに、ムーミン谷ではみんなが仲よく暮らしているのはなぜなのか。 発達障害(自閉スペクトラム症、注意欠如多動症)と診断された文学研究者の著者には、ムーミン・シリーズのキャラクターの多くに「ニューロマイノリティ(脳の少数派)」の特性が備わっていると感じられ、それが独特の世界観と調和につながるという。 著者は、自閉スペクトラム症の自助グループに初めて参加した時、「ここはムーミン谷だ!」と驚いたという。また彼らは、ムーミン・シリーズのキャラクターに共振する人がとても多い。 たとえば、収集癖のあるヘムレンさんにはこだわりが強い自閉スペクトラム症の特徴があり、冒険をしたいムーミン・パパにはADHD(注意欠如多動症)の特性がある。そして孤独を愛するスナフキンは必ず旅に出てしまう。また、美しい自然描写が多いのにもわけがある。 本書を読めば、自閉スペクトラム症の人々の自閉的世界の豊かさがよくわかる。また互いに自由や孤独を認め合う環境があれば、少数派である彼らも安心して才能を発揮することができることも。 コラム寄稿 畑中麻紀(新版ムーミン全集 改訂翻訳者)「ぴったりの居場所がない人のために」 二村ヒトシ(AV監督、文筆家)「大人のテーマが描かれている(ようにぼくには思える)ムーミン・シリーズ」 【著者略歴】 横道誠(よこみちまこと) 京都府立大学文学部准教授。文学博士。専門は文学・当事者研究。1979年、大阪府生まれ。40歳で自閉スペクトラム症、ADHDと診断され、発達障害当事者自助グループ活動も精力的に行う。自助グループで「ここはムーミン谷だ!」と思ったのが本書執筆のきっかけとなった。 単著に『みんな水の中』(医学書院)、『創作者の体感世界』(光文社新書)、『アダルトチルドレンの教科書』(晶文社)など。共著に『酒をやめられない文学研究者とタバコをやめられない精神科医が本気で語り明かした依存症の話』(太田出版)、編著に『信仰から解放されない子どもたち』(明石書店)などがある。
岸本佐知子さん推薦! 「ソーンダーズ先生の導きで、わたしたちは小説が徹底的に解剖されるさまを目撃する。もう元の読み方にはもどれない。」 ブッカー賞受賞、『短くて恐ろしいフィルの時代』の著者による、大注目・全米ベストセラーの「小説入門」!! 現代アメリカ文学を代表する作家ジョージ・ソーンダーズが、ロシア文学の巨人たちと寄り添い、悩み、格闘する。 チェーホフ、ツルゲーネフ、トルストイ、ゴーゴリ── 珠玉の短編小説7本を通じて、物語の読み方と書き方、そして人生の意味に迫る、刺激に満ちた楽しい創作講座。 シラキュース大学の創作講座を20 年にわたって担当し、小説家志望の若き学生たちに小説の書き方と読み方を教えてきた小説家ジョージ・ソーンダーズ。 ソーンダーズの名物授業を再現した本書では、ロシア文学の巨匠による7本の短編を読み解き、読者に頁を繰らせるためにいかなる技法やテクニックが駆使されているのかを解説する。 現代アメリカの短編小説の名手が、ユーモアたっぷりでいざなう、ロシア文学のそぞろ歩き。 私たちはなぜ読み、書き、生きるのか──その答えを探る、時空を超えた軽やかな小説の旅へ。 ◎現役ブッカー賞作家による人気の創作講座を再現! ◎題材となるロシアの巨匠4人による7本の短編小説を、原文から新訳で全文収録!! <本書で読める、珠玉のロシア短編小説たち> アントン・チェーホフ(1860-1904)「荷馬車で」「かわいいひと」「すぐり」 レフ・トルストイ(1828-1910)「主人と下男」「壺のアリョーシャ」 イヴァン・ツルゲーネフ(1818-1883)「のど自慢」 ニコライ・ゴーゴリ(1809-1852)「鼻」 数年前、授業のあとで(そうだな、描写するなら、チョークの粉が秋風に漂い、旧式の暖房機が隅でガチャガチャ音を立て、マーチングバンドが練習しているのが遠くから聞こえる)、人生最良の瞬間──自分が世界になにか価値のあるものを提示できていると実感できた瞬間──のいくらかは、このロシア短編小説の授業に費やしているときだったと悟った。そこで教えている短編小説は常に仕事の傍らにあって、私が自作を測る上での高いハードルになっている。(ロシアの短編小説が私の心を動かし、私を変えたように、私は自分の短編小説がだれかの心を動かし、変えてほしいと思っている。) こうして年月が経ったあとでは、小説のテキストは昔馴染みの友人のように感じられる──授業を教えるときはいつも、友人をすぐれた若手作家の新グループに紹介するような心地なのだ。 それで私はこの本を書くことにした──学生と私が長年かけてともに発見してきたものの一部を文章に起こすことで授業の一端をお見せできればと思った…
スタートアップ企業を立ち上げようと奮闘する若者を描いた青春小説! 累計1000万部突破の『バッテリー』シリーズ、『No.6』などで10代の少年少女から圧倒的な支持を受ける作家・あさのあつこ氏。 その4年ぶりの青春小説で、スタートアップを立ち上げようと奮闘する若者4人を描いた『アーセナルにおいでよ』が誕生しました。 あさの氏は、 「生きていく武器をちゃんと身につけてもらいたい。そういう思いを込めて書きました」 「よくありがちな「起業した若者たちの物語」という言葉では括れない、彼らたちだけの物語ができました」 と語られています。 ネットの中傷、不登校、詐欺など学校や社会に馴染めずドロップアウトした主人公たちが、起業という一つの目標に向かい、生きる「武器」を手に入れていく、まさに現代に求められる物語です。 【あらすじ】 「おれ、今度、起業するんだ」 幼馴染で初恋の相手・芳竹甲斐から突然呼び出された高校3 年生の川相千香は、その文章力と思索力を見込まれ、スタートアップのメンバーとしてスカウトされた。会社の名前は「アーセナル」。「器庫」という意味だという。コンプレックスを持つ千香。中学生で不登校になった甲斐。詐欺に巻き込まれて逮捕歴のある稲作陽太。バツイチの古藤里佳子・通称コトリ。それぞれ問題を抱えた4 人は、各々の個性と能力を武器に、「アーセナル」のために奔走するーー。 【著者プロフィール】 あさの・あつこ 岡山県生まれ、在住。大学在学中より児童文学を書き始め、小学校講師ののち、1991 年『ほたる館物語』で作家デビュー。97 年『バッテリー』で第35 回野間児童文芸賞、99 年『バッテリーII 』で第39 回日本児童文学者協会賞、2005 年『バッテリーI〜VI 』で第54回小学館児童出版文化賞、11年『たまゆら』で第18回島清恋愛文学賞を受賞。他の著書に『No.6 』『ランナー』『火群のごとく』『透き通った風が吹いて』『野火、奔る』など多数。児童文学から時代小説まで様々なジャンルの作品を執筆し、幅広い世代に親しまれている。 装画 長場雄
______________ ◆ 週刊現代 24年11月9日号 ◆ 日刊ゲンダイ 24年11月29日 ◆ 週刊女性 24年12月3日号 にて紹介されました! ______________ 屈するか 逃げるか 農と自由と民の物語。 武士と悶着を起こして村を出奔した 若者・杜宇が迷い込んだのは、不思議な地。 自由経済で成り立ち、誰の支配も受けない 「青姫」の郷だった。 頭領・満姫のもと、生死を分つ選択さえも 籤で決められる。それが天意だからだが、 満姫はとんでもない気まま娘、 口も意地も悪い。 杜宇は命拾いするも米作りを命じられ、 田を墾くことから始めねばならなくなった。 生きるために「農」の芸を磨き、 民にも馴染んでゆくが、 郷には秘密の井戸がある。 そしてある日、若い武士が現れたーー 「米を作れ! わらわは姫飯が食べたい」 【著者からのコメント】 連載時はちょうどコロナ禍でした。 むしょうに土に触れたくて、田植えの匂いや 稲刈りの景色が慕わしく、それで主人公に 米作りをさせることにしました。 舞台は、「青姫の郷」という秘境です。 とはいえすべてが幻想(ファンタジー)ではなく、 まだ幕府の支配体制が固まっていない 江戸時代初期の様相を背景にしています。 青姫の郷は中央政権の支配がまだ及んでいない、 いわば自由都市。民による自治が行なわれ、ですが 人々がなにより重んじるのは「天意」です。 主人公の杜宇はその天意によって生かされ、 といおうか振り回されるのです。 郷の人々は姫をはじめ、クセが強い曲者揃い。 どの人物も書くのが楽しく、 今も愛着のある人々です。 ですが郷は、ある危機を迎えます。 土地は、領土は、いったい誰のものか。 攻め込まれたとき、屈するのか逃げるのか、 それとも? --自らに問いながら書きました。 自分ならどうするか、と。連載終了後まもなく、 ウクライナ侵攻が始まりました。 この小説のラストは、 かの侵攻を予見できていない頃に書いた、 一つの願いでした。 このちょっと不思議な物語、 どうぞお楽しみください。 朝井まかて 一 玉結び 二 農の芸 三 田神祀り 四 赤影 五 旱(ひでり) 六 蝶 七 姫飯(ひめいい) 八 上々 九 月 十 籤(くじ) 十一 心願成就 十二 燃ゆる水 十三 杜宇
「地獄は天国の裏にある。」 祖国ルーマニアの圧政を逃れ、サーカス団を転々としながら放浪生活を送る、一家の末っ子であるわたし。ピエロの父さんに叩かれながら、曲芸師の母さんが演技中に転落死してしまうのではないかといつも心配している。そんな時に姉さんが話してくれるのが、「おかゆのなかで煮えている子ども」のメルヒェン。やがて優しいシュナイダーおじさんがやってきて、わたしと姉さんは山奥の施設へと連れて行かれるのだったがーー。 世界16カ国で翻訳、伝説の作家が唯一残した自伝的傑作が、ついに邦訳! ドイツ文学史上最も強烈な個性。--南ドイツ新聞 まさに綱渡り芸を、息をのんで下から見守っているかのよう。--ペーター・ビクセル ◎アグラヤ・ヴェテラニー(Aglaja Veteranyi) 1962年、ルーマニアの首都ブカレストでサーカス家庭に生まれる。67年に亡命し、77年にスイスのチューリヒに定住するまで、サーカス興行のために各地をめぐる生活を送る。定住後にドイツ語を学び、俳優として活躍するほか、実験的文学グループ「Die Wortpumpe」を共同で設立し、新聞や雑誌に多数の記事を寄稿。1998年にベルリン文学コロキウムの助成金を受ける。1999年に初小説『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』を出版し、シャミッソー賞奨励賞、ベルリン芸術賞奨励賞を受賞。2002年2月の早朝にチューリヒ湖で自死。 ◎松永美穂(まつなが・みほ) ドイツ文学者・翻訳家。早稲田大学文学学術院教授。シュリンク『朗読者』で毎日出版文化賞特別賞受賞。他の訳書にシュピリ『アルプスの少女ハイジ』、ヘッセ『車輪の下で』、バッハマン『三十歳』、シュテファン『才女の運命』、ティム『ぼくの兄の場合』、シュタム『誰もいないホテルで』等。著書に『世界中の翻訳者に愛される場所』等。
欲しいのは、変化、休息、人生。 女性初のピューリッツァー賞作家であり、19世紀末から20世紀にかけてのアメリカ文学史上に名高い、〈短編の名手〉ウォートンによる、本邦初訳を含む待望の作品集。 予想もつかない展開と結末。 豊かな教養と想像力が生んだ、極上の14作。 【目次】 満ち足りた人生 夜の勝利 鏡 ビロードの耳当て 一瓶のペリエ 眼 肖像画 ミス・メアリ・パスク ヴェネツィアの夜 旅 あとになって 動く指 惑わされて 閉ざされたドア 〈幼子らしさの谷〉と、その他の寓意画 訳者あとがき 満ち足りた人生 夜の勝利 鏡 ビロードの耳当て 一瓶のペリエ 眼 肖像画 ミス・メアリ・パスク ヴェネツィアの夜 旅 あとになって 動く指 惑わされて 閉ざされたドア 〈幼子らしさの谷〉と、その他の寓意画 訳者あとがき
「きみがいなくなっても教室はそこにある」--かつて王立学院で魔術師を目指していたにもかかわらず、十年前の〈ある出来事〉をきっかけに魔力欠如者となったソール。現在はしがない古書店店主として、控えめな暮らしに身を置いている。そんな彼の店を訪れたクルトは、身分と容姿、能力を兼ね備え、魔術師としての将来を嘱望される完璧な学生だった。 学院の日々を想起させるクルトにソールは反発しながらも惹かれていき、クルトは魔力欠如ゆえにソールに興味を抱く。しかし十年前に何もかもを失ったソールには自尊感情がなく、クルトへの想いを押し殺すばかり。正反対のふたりの恋のゆくえはーー?