2024年発売
いくつもの秘密は家族をどこへ連れていくのか 『マグヌス』で知られるフランスの著名な小説家が、互いの関係を模索する再構成家族の姿と秘密を詩的に描いた中篇小説。 幼い頃から母のいないリリは、赤ん坊の頃の自分の写真を見て、自分はいったいどこから来たのか、母はどこへなぜ行ってしまったのかと疑問を抱いてきた。父の再婚により、新たに四人の兄姉ができるが、継母ヴィヴィアンや異母兄姉との関係を模索しながらも心からは馴染めずにいた。 ある日、家族そろって出かけたピクニックで写真を撮るため、子どもたちはぎゅうぎゅうに身を寄せ合った。それが悲劇につながるとは知らずに……。 やがて兄姉たちがそれぞれの道に進んでいく一方、リリはどこへ向かえばいいのかわからず、左翼グループと共同生活をしてみたり彫刻に打ち込んでみたりするものの、どれも長続きせずさまよう。 タイトルが示すとおり、小さいがひとつひとつが何らかの働きや意味をもつ多くの出来事の連なりで構成されている。リリは愛する人を見つけ、自分の居場所にたどり着けるのか。知りたかった秘密は明らかになるのか。喪失を抱えながらも、時の重なりを感じ、自己や他者と向き合うことの尊さを静謐に描く。
20世紀の『戦争と平和』、戦争を貫くヒューマニズム 『人生と運命』(みすず書房)の読者が待ち望んだその前編となる全三巻。人情味あふれる物語が居間のランプに照らされ、戦場の火炎に炙られる。市民と兵士に、さらにはドイツ兵にも同情の視線が注がれたポリフォニックな群像小説。 本書は1942年4月のヒトラーとムッソリーニ会談から、主人公の一人クルイモフがヴォルガ川を渡ってスターリングラードへ入る9月まで、5カ月未満の物語だ。冒頭、コルホーズ労働者が召集令状を受け取る心理描写の細やかさは、本書の典型的特徴だ。「老練な赤軍の将軍、新米の民兵、恐怖におののく主婦を描くとき、グロスマンは分け隔てのない思いやりと敬意をこめてペンをふるう」。そして「スターリングラード駅防衛戦の描写は『イーリアス』に匹敵しよう。グロスマンが描く、24時間以内に確実に死ぬことを知っている若者たちの内面描写は真に迫っている」。 本書は、英国のロシア文学翻訳家チャンドラー夫妻の校訂による、検閲・削除された原稿の追加を含む改訂英訳版(2019年)からの邦訳となる。
鬼才の魅力を多彩な短篇で 『ラナーク』『哀れなるものたち』で知られるスコットランドの伝説的鬼才の短篇集が、待望の復刊! ファンタジーとリアリズム、笑いと哀しみ、アイロニーとウィットが混淆する饒舌な語りに思わず舌を巻くが、目に飛び込んでくる異彩を放つイラストも、作家自身の手になるもの。アリ・スミスをして「現代のウィリアム・ブレイク」と言わしめたグレイの多彩な魅力が存分に詰め込まれているのが本書なのだ。 学校を牢獄のように感じる〈わたし〉が、外へ出る想像上の〈ドア〉を恩師から授かる「ミスター・ミークル」。窒息するような現実から逃れようとする夢や欲望が、本書では多様なジャンルを横断しながら変奏される。コンピュータが導入された会社内でのちぐはぐぶりを皮肉った「内部メモ」。軟派で洒落者の鼻持ちならないイングランド人の男を揶揄した「あなた」。おしゃべりな歯医者に治療される不安と恐怖が迫る「トレンデレンブルク・ポジション」。なぜ靴下にガムがくっついているのか、その原因を綿密に理論化して可笑しい「時間旅行」。囲い込まれた世界に嫌気がさした男が、夢のような新しい移住先で体験する破滅の寓話「新世界」など──粒ぞろい短篇をほんの十ほど。
少女の呪いを解く幻の霊薬を求めてーー 古(いにしえ)の魔導国へ!! 無口なSランク魔法使いの少女テレサとSランクに昇級した冒険者ガリオン。 二人はテレサにかかっている沈黙の呪いを解く方法を探していた。--そんなある日、あらゆる状態異常を回復させる “霊薬”の素材「バイコーンの角」を手に入れる。 しかし肝心の霊薬を作製できる錬金術師がジームレス王国にはいなかった。 かくして彼らは元錬金術師であるエミリーの協力を仰ぎ、1200年の歴史を持つ魔導国ガーデナルへと向かう! そこで出会ったエルフの錬金術師エルメジンデに霊薬の作製を依頼するが、 無理難題の条件を突きつけられて……!? 新米Sランク冒険者と無口なSランク魔法少女の最強パーティ冒険譚、第二幕!
私は軍人です! 愛する友達を護るためならば、私は喜んで剣を振るおう! 学園祭の魔物騒動は、マジェンダ帝国による宣戦布告だった。戦争が始まり軍人として前線に立つことになったラゼは、セントリオール皇立魔法学園を退学する。皇国はあらゆる兵器を使う帝国に苦戦していたが、軍の上層部がラゼに単身での帝国潜入及び破壊工作を命じて……!? 一方で、ラゼの退学を知ったフォリアたちは、彼女と連絡を取ろうとするが、家も仕事も過去も何もかも分からずじまい。それもそのはず、ラゼ・グラノーリは偽名であり、彼女の本来の姿は名誉貴族で、最強軍人であることが判明しーーフォリアたちは友達と再会するために戦地へと向かう! 前世知識と軍人としての技能をフル活用して、ミッションコンプリートです! どうか天の導きがあらんことをーー! 軍人ラゼの異世界転生ラブコメディ第五弾♪
人は命ある限り、幾度でもやり直せる。 「夫は無実でございます」 奈緒は義父と深川で暮らしはじめるがーー 『貸本屋おせん』で、時代小説界に鮮やかにデビューした、期待の新鋭による飛翔の傑作長篇。 奈緒は、夫の仇を討つため、義父の文二郎と信州から江戸へやってきた。 ふたりは暮らしを立てようと、深川で薬屋を営むが、医者である文二郎の元には、貧しく医者代の払えない病人やけが人が次々と駆け込んでくるようになっていた。 そんなある日、深川の芸者・捨て丸が、惚れ薬を作ってほしいといってくる。 捨て丸の相手は、なんと有名な本草学者であった……。 奈緒たちは、藩の秘め事に巻き込まれながらも、市井の人々のたくましさと優しさに触れ日々の暮らしを愛するようになるがーー
世界を賑わすエンタメ「ダンジョン攻略配信」。その配信の中でも、蒼谷アサヒは世界最高クラスの実力者で、数少ない「レベル十」武器の使用許可を保持する超天才だった。 一方、そんな天才の兄である主人公・ミカゲは、弟と対照的に「凡人」と評される程度の実力しかなかったが、昔からの憧れを追い続けるため、だとえ才能が無くともひっそりとトレーニングを続けていた。 そんな折、とある配信でA級攻略者に目をつけられたミカゲは、それを契機に波乱万丈すぎる「非凡」の道を進むことになっていくーー!
1923年秋、結婚式のために集ったデルタ地方の大農園一家の日常を、主に5人の白人女性の複雑な内面を通して緻密に描き出す。アメリカ深南部ミシシッピの作家ウェルティによる傑作長編小説、57年ぶりの新訳。
友をとるのか、それとも国か。 その究極の選択が招いた運命を、彼は 後悔しなかった。 50人を超える検挙者を出したシーボ ルト事件には今も多くの“謎”と“何故” が残る。 著者が膨大な史料を読み込み、江戸時 代後期に起こった大疑獄の真相に迫る。 <出版社より> シーボルト事件では多くの日本人が検挙され、 中でも重罪とされた4人には死罪や永牢など の処分が下されました。本書の主人公はその 一人、シーボルトの信頼厚いオランダ通詞の 吉雄忠次郎です。終身禁固刑となった忠次郎 は北国の米沢新田藩に預けられることになり、 天保元年(1830)から座敷牢で幽閉されます。 その、次第に衰弱していく忠次郎を親身に看 病した医師が吉田元碩です。 忠次郎は厳しい取り扱いのなか2年8ヶ月後、 天保四年(1833)に死去しました。本書では 忠次郎が吉田の問いにとつとつと答えるかた ちで、事件の全貌が現れてきます。ただシー ボルト事件には幾つかの謎が残されていて、 著者は膨大な史料を読み込み、背後に蠢くあ る雄藩の存在を指摘しています。 まさに歴史ファン必読です。 定価(本体価格1800円+税) 判型:四六判 並製 382ページ ISBN978-4-88851-405-7 C0093 発行日2024年4月23日(初版) <内容> シーボルトの親友 シーボルトはスパイだったのか!? 長崎と江戸で進む幕府の捜査、次第に追 い詰められていく腹心の阿蘭陀通詞の視 点から「シーボルト事件」を描く迫真の 小説 NIPPON 日本から追放されて30年後、日蘭修好通 商条約締結の翌年安政六年(1859)に長男 アレクサンダーを伴って再来日を果たした シーボルトの栄光と挫折を描く
第二次大戦後に分断され、再びひとつの国に統一された日本。だが東西の格差は埋まらず、東日本の独立を目指すテロ組織が暗躍し……。意図せずテロ組織と関わることになった一条昇と、その幼馴染で自衛隊特務連隊に所属する辺見公佑の二人。社会派エンターテインメント巨編。
名古屋で探偵業を営む草?の元に舞い込んだ行方不明者の捜索依頼。関東大震災の混乱の中、数少ない手掛かりを頼りに調査を進めるが、関係者は次々と不審な死を遂げていき……。乱歩賞の著者による13年振りの新作ミステリー。
遠い未来のスペースコロニーで、亡くなった叔母の弔いを巡る情景を描いた表題作のほか、商業媒体やウェブ媒体で発表した池澤春菜のSF短篇を集成。人間が異文化と接するときの情景や、未知なる動植物の生態をときにコミカルに、ときに抒情的に描き出す傑作集。
【内容説明】 鳴り響くアメリカ国歌、銃声。逃げ惑う住民が辿りついたのは元大統領邸宅(モンティチェロ)だった……。近未来アメリカを舞台に、トマス・ジェファーソンと奴隷の間に生まれた女性を先祖に持つ女子学生が、暴徒化した白人至上主義者から逃れ、因縁の場所で運命と対峙する表題作をはじめ、全6編を収録したデビュー作品集。バージニア州シャーロッツビル周辺を主な舞台に、人種差別や経済格差の問題等、さまざまなテーマを内包する中編(表題作)1本と短編5本を収録。本書は、全米批評家協会賞ジョン・レナード賞最終候補、ニューヨーク・タイムズ紙2021年ベストフィクション10冊に挙げられた。2022年リリアン・スミス図書賞受賞。 (原題 My Monticello) 【著者略歴】 ジョスリン・ニコール・ジョンソン(Jocelyn Nicole Johnson) バージニア州レストンに育つ。ジェームズ・マディソン大学で美術と教育の学位を取得し卒業。公立小学校の教師として視覚芸術を指導。デビュー作となる本書で、リリアン・スミス図書賞、バージニア図書館フィクション賞を受賞。PEN/フォークナー小説賞のロングリスト、全米批評家協会賞ジョン・レナード賞最終候補等にも選ばれた。
季節の風物とともに描く家族の絆の物語。-いま息子が望んでいることを、はなからそれは無理というものだ、と諦めさせたくはなかった。ずっと中学校を登校拒否していた瞬が、引きこもっていた家を出て、社会へと足を踏み出そうとしたことはよかったではないか、と斎木は信じたかった。-草木に囲まれ、野鳥のさえずりを聞きながら暮らす小説家の斎木と奈穂の夫婦。あたたかいご近所さんと交流しながら平穏に暮らすふたりのもとに、斎木の先妻との子が家出したという知らせが舞い込んできた。家庭に大きな不満を抱く息子に寄り添い、離婚以来ほとんど会うことがかなわなかった息子との絆を取り戻すことはできるか…。第31回大佛次郎賞に輝いた名作私小説の後編。
伝記と小説の融合を試みた意欲作3編収録。「自分はむろんのこと、読者にもすこしは楽しんでもらえるような伝記文学の方法はないものかと考えた末にたどり着いたのが、想像や空想も挿入できる小説と伝記のドッキングというスタイルであった。」「日本近代文学史上に巨大な足跡を印した永井荷風の文学的開眼に決定的な影響をあたえた」井上啞々の足跡をたどり墨田川界隈を訪ねる「夜の烏」、悪妻といわれたラフカディオ・ハーン夫人・小泉節子の真実に迫る「残りの雪」、パロディ精神にあふれる批評や小説で名を成したものの貧しさから抜けられず、「本日を以て目出度死去仕候」という新聞広告を出して生涯を閉じた斎藤緑雨を描いた「散るを別れと」-。いずれも事実を丹念に追いつつ、小説仕立てにして想像の羽を大胆に広げる構成で、読む者を魅了する。
難病を患い、車椅子で生活をするダニエルは、玄関ポーチから近所を観察することを趣味としていた。頻繁に通る若い女性のことが少し気になるダニエルだったが、ある日、彼女が誘拐される場面を目撃してしまう。彼はネットを駆使して独自の捜査を始めるが……。
妹に婚約者を奪われ婚約破棄されたあげく、なかば人質のような形で獣人の国に嫁入りすることになった聖女ラナ。人間を良く思っていない国へ嫁ぐため冷遇生活を覚悟するも、彼女を待っていたのは快適な生活だった! 聖女の務めもなく持て余した時間を使って作った薬で人助けをしたり、城下町でグルメ散策をしながら異文化交流をしたりと楽しい日々を過ごしていた。ある日、聖女達に伝わる料理に興味津々な獣人の王子のため、「うどん」を作ることになり……!?