小説むすび | 2025年5月発売

2025年5月発売

小説 見者の世紀小説 見者の世紀

出版社

風詠社

発売日

2025年5月7日 発売

徳川昭武は、欧州各国で「プリンス・トクガワ」と呼ばれ、将軍の後継者とみなされていた。昭武の別荘は松戸にあり、維新後そこで慶喜らと写真撮影や作陶などに興じた。昭武が残した写真は趣味の域を超え芸術としても出色の作品であり、どこでそのような技術を身に付けたのか謎であった。昭武は第3回のパリ万博に幕府名代として出席、パリ滞在中に写真師ジャックと知り合う。ジャックは写真の黎明期に遭遇し、一生の仕事にするとともに当時勃興していた印象派の画家達や作家、知識人との付き合いもあった。彼らは当時の最新技術であった写真に並々ならぬ関心を持っていた。そんな彼らと接するうちにジャックは写真撮影の革新を考える。しかし、普仏戦争を境に、世の中は大きく変わってゆく。セザンヌは展覧会に「首吊りの家」を出展。ジャックはそれを見て、写真と絵画の違い、類似点などを考えながら写真芸術の本質を極め始める。20世紀になって彼は日本に渡り、昭武が撮影した写真に遭遇する。それは当時の松戸の風景などを撮影し、現像したものだった。そこには、自らの幕府が作り上げた国家に対する愛着か、昭武が目撃した西洋文化習得に邁進していく新政府に感じるものがあったのだろうか。本書は、19世紀半ば以降のフランスを舞台に、実在の画家や小説家、そして写真家が登場する。徳川昭武とジャックが狂言回し的な役割を果たし、当時の芸術家達の状況や芸術論、思想が描かれる。 一九○五(明治三十八)年四月 上野駅/一八八七年 エジプト アレキサンドリア/一八六五年 パリ 木曜会/一八六七年六月 パリ・出会い/一八六七年夏 パリ カフェ・ゲルボア/一八六七年夏 パリ・キャプシーヌ街 ナダール写真館/一八六七年秋 パリ カフェ・ゲルボア/一八六八年冬 パリ郊外/一八六八年 パリ カフェ・ゲルボア/一八七二年 パリ カフェ ヌーベル・アテーヌ/一八七四年四月 パリ、ナダール写真館 印象派第一回展/一八七七年四月 パリ・ル・ベティエ通り、第三回印象派展会場/一八七九年 パリ北郊 イル・ド・フランス/一八八○年夏 エジプト アレキサンドリア/一八八一年五月 マルセイユ旧港/一八八六年春 パリ ラフィット通り一番地/一八八八年 プロバンス アルル/一八九○年八月 プロバンス、サント・ヴィクトワール山/一八九二年 パリ/一八九五年十一月 パリ/一八九八年 パリ郊外/一九〇二年 南フランス/一九〇四年(明治三十七年) 極東へ

水脈を聴く男水脈を聴く男

井戸で発見された溺死体のお腹から取り出された胎児。彼には大地の「水脈を聴く」能力が宿っていた──。 ひどい頭痛に悩まされるマリアムは井戸の深淵からの「おいで、おいで」という囁きに導かれ、ついには溺死体として発見される。しかし、その体には胎児が宿っていた。無事(サーレム)に救われたことでサーレムと名付けられた息子は、耳を澄ませると地中を流れる水の音が聴こえるようになる。その噂はあっという間に広がり、避けられ孤立するようになるが、水源を探し当て村を襲った干ばつから救うことで必要とされるようになる。その評判は遠方まで轟き、15歳の少年は「水追い師」として各地で引く手あまたになるのだが──。 アラビア半島に位置し、雨のほとんど降らない小国オマーン。地下水路(ファラジュ)による独自の灌漑システムは、峻険な岩山や荒涼とした砂漠の地を潤してきた。『バグダードのフランケンシュタイン』などが過去に受賞したアラビア語圏最高の文学賞「アラブ小説国際賞」に輝く、水をめぐる傑作長編。 「気候変動や水資源の枯渇が世界的な課題となっている今日、この小説が描く「水に囚われる人間の姿」は、過去の物語ではなく、今まさに現代社会が直面する現実の縮図として読み解くことができる」(本書解説より)

影の帰還影の帰還

出版社

彩流社

発売日

2025年5月8日 発売

ジャンル

2019年、英国ルーベリー国際文学賞最終候補作、並びにカナダの公立3大学図書館の「貴重文献及び特別蒐集品」部門所蔵作品。 「影」として日本に帰国しなければならなかった長田栄造。 これは歴史の荒波に翻弄されながらも家族を思慕し一途に生きた一日本人の物語であり、 第二次世界大戦中の日系カナダ人強制収容という不当な 歴史的事実を背景に、主人公の心理的葛藤を活写した小説である。 「本書は同情心を呼び起こす男の物語で、緊張感もあり、主人公の境遇は心に強く訴え、また道徳的に複雑である」 (ルーベリ国際文学賞選評(英国)同賞の2019年度最終候補作)、 「感動的で説得力のある最終章に向けて盛り上がる小説」(ソーニア・アーンツェン、トロント大学東アジア研究学部名誉教授)、 「強制収容所を生き抜いた日系カナダ人の物語を生き生きと描いた、重要で示唆に富む歴史小説」 (イアン・ベアード、ウィスコンシン大学マディソン校地理学教授)、 「戦争がもたらす心の痛み、日系カナダ人の忍耐力、勇気、不屈性を描いた小説」 (ルーシイ・バーミンガム、日本外国特派員協会元会長)、 「主人公の人生を共に生きているかのように思わせる見事な描写で、百点満点の小説」 (レイチェル・バスティン・ブロッガー)、 「著者は胸に迫る語り口で、読者を孤独と強じんさ、そして犠牲的精神の物語に没入させる」 (レベッカ・コーポランド、ワシントン大学セントルイス校日本文学教授)、 「ソルジェニーツィンの『イワン・デニーソヴィチの一日』と本書は共に強制収容を扱っているが、 この物語は血の絆と心の絆を描いた感動的な小説」(オリヴィエ・フロリオ、映画音楽作曲家)、 「ドラマチックな驚きを与え、心理的洞察、鮮やかな描写に富んだ小説」 (スティーブン・ラージ、前ケンブリッジ大学アジア中東学部日本近現代史教授)、 「心が痛み、感動させる小説」(コーディ・ ポールトン博士、京都アメリカ大学コンソーシアム所長)、 「戦時中を生きた日系カナダ人の体験、及び日本に帰国した人々が受けた扱いについての物語」 (パトリシア・ ロイ、ビクトリア大学カナダ歴史学名誉教授)。

赤富士と応為、そしてボストンの男たち赤富士と応為、そしてボストンの男たち

「不思議に魅力的な本である」と故・立花隆氏に絶賛された前作『北斎と応為 上・下』(2014年、彩流社刊)に続く第2作!幕末から明治初期、日本の混乱期に多くの文化財が流出している。世界に名を馳せた葛飾北斎の作品も高値で取引されていた。北斎の娘・応為は、父に劣らず健筆を振るっていたわけだが、女性絵師は、女性であるだけで存在を消されることとなり、決して正当には認められることの無い時代であった。当時、来日したアーネスト・フェネロサやエドワード・モース、ウィリアム・ビゲローの3人が買い集めた作品群の中にも応為の作品は含まれていたのだが………。本書は、亡霊となることで明治の時代を死後に眺め続ける応為と三人のボストン人との関わりを描き、忍びながら華やいだ絵筆の後の浮世絵流出の姿と女性絵師の密やかでありながら光を燈し続けた復活を描く物語である。 第一部 1  一八八一年 神奈川の無縁仏 2  波止場での出来事 3  横浜グランドホテル 4  一八八二年 蛮人たちの家 5  一八八三年 美術品を追い求めて 6  狂ったように 7  リジーの役割 8  僧の拒絶 9  高野山 10 火事の後 11 幽霊の末路 12 そして、四人 13 暗い出来事 14 任務終了 第二部 15 一八三一年 江戸 16 数十日後 17 一八三五年 四年後の江戸 18 一八六八年 北曜 19 最期 20 一八五三年 浦賀湾、黒船 第三部 21 一八九二年 ボストン 22 失墜 23 さらなる失墜 24 闘鶏 25 本間耕曹 26 一八六七年 東京 応為 27 蛮人戻る 28 目録 29 一八九九年 東京 ダンス 30 一九〇〇年 パリ 31 一九〇〇年 東京 能 32 戸崎の菓子 第四部 33 一九〇四年 ボストン 34 一九〇四年 デトロイト 35 ウィノナ湖、インディアナ 36 デトロイト 37 一九〇八年 ロンドン 最初の旅立ち 38 ニューヨーク あの本 39 一九一三年 コベント・ガーデン ロンドン 40 出版人ハイネマンとのディナー 41 ロスト・ボーイズ 42 臨終の訪問 43 モビールのメアリー 44 東京ーー小布施 45 小布施ーー東京 菓子 46 再び東京で 47 東京 能楽 48 東京郊外、応為一人 ある小説家の応為研究    --あとがきにかえて 謝辞 訳者あとがき

【POD】陸奥宗光の明治維新【POD】陸奥宗光の明治維新

発売日

2025年5月8日 発売

[商品について] ー大志を抱くわしは、伊達より大きな名の「陸奥」と名乗ろうー 第二次伊藤内閣が発足した際、外務大臣として、徳川幕府が諸外国と結んだ不平等条約の改正に貢献するなど、外交官・政治家として活躍した陸奥宗光。機略に富み、頭の回転が早い(=頭が切れる)ことから「カミソリ大臣」との異名も持つ彼は、どのような生涯を歩んだのか。--紀州藩士だった父の失脚とそれに伴う幼少期の苦難。その後の人生に大きな影響を及ぼした幕末の坂本龍馬との出会い、維新政府での伊藤博文との付き合い。そして目まぐるしく変革を遂げる政府内での日々と、その活躍を支えた妻・亮子の存在…。生来の反骨精神を胸に、明治という新時代を駆け抜けた英雄、陸奥宗光の人生に迫った歴史小説。 [目次] 序章 ●第1章 伊達家と紀州藩 ●第2章 宗光の誕生と父宗広の出世 ●第3章 父が失脚し一家流転 ●第4章 宗光が江戸に出る ●第5章 一家の赦免と脱藩 ●第6章 坂本龍馬との出会い ●第7章 新政府の一員になる ●第8章 伊藤博文との付き合い深まる ●第9章 罪を得て収監される ●第10章 不平等条約の改正に取り組む 終章 ●主な参考文献 ●著者略歴 [担当からのコメント] 「カミソリ大臣」こと陸奥宗光の生涯に迫った本作ですが、その頃日本ではどんなことが起きていたのか、ということも適宜わかるようになっているため、宗光のことをまだ詳しく知らないという方でも、日本史という大きな枠組みの中でその活躍を知ることができます。持病に苦しみながらも国家のために懸命に働いた彼の生涯を、ぜひ本作を通してじっくりと辿ってみてください。 [著者略歴] 森下 和彦(もりした かずひこ) 一九四一年(昭和十六年)和歌山県海南市生まれ、紀美野町で育つ 大阪府松原市在住 著書に 〇POD版は『きのくに・神野の里』(歴史の情景の中の日本と、山村の生活)  デジタル版は『故郷(ふるさと)きのくに神野の里』(歴史の情景の中の日本と、山村の生活) 〇小説 高野騒動(高野山寺領の強訴) 〇雑賀孫一と信長(戦国歴史小説) (いずれもデジタル版とPOD版がある)

馬鹿化かし馬鹿化かし

出版社

集英社

発売日

2025年5月9日 発売

刀の様し斬りと罪人の斬首を生業にしている山田朝右衛門は、死に取憑かれていた。師匠、想い人、兄弟子……大切な人を次々になくし、荒れきった屋敷でただひとり、自分の寿命が尽きるのを待ち、お役目だけの日々。そんな無聊の中、あり得ないことに、ひとりの罪人の斬首をし損ねてしまう。服部半蔵を名乗り、身軽に逃げ去ったその男は不老不死で、斬られた首さえ再生させることができるという。しかも、余人からは記憶に残らない顔に見える半面、朝右衛門の目には半獣に見えていた。屋敷に転がり込んできた半蔵は、300年前から彼を知っていると言うが……。安倍晴明の子孫、沖田総司、土方歳三、吉田松陰など幕末の激動を生きるものたちとの交流、死神との対決の末、朝右衛門がつかんだものとはーー。幕末怪異ファンタジー。 【著者プロフィール】らんどう・つばめ 1995年生まれ。徳島大学総合科学部人間文化学科卒業。2020年、「めめ」でゲンロンSF新人賞優秀賞受賞。2021年、『鯉姫婚姻譚』で日本ファンタジーノベル大賞2021大賞を受賞し、デビュー。本作が二作目の単行本となる。

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