1995年1月15日発売
作曲家の秋葉史郎は、今はカラオケ教室の講師を務める悠々自適の身。そんな秋葉の許に、若い女から電話がかかってきた。昔つき合っていた恋人に娘がいて、実は父親は秋葉だという。しかも娘は既に亡くなっていた。驚きと戸惑いを隠しきれない秋葉は、娘の友人を名乗る女・弓子に誘惑され、奇妙な情事を重ねるが…(表題作)。愛憎のはざまで揺れ動く男と女の風景を描いたオリジナル官能サスペンス傑作集。
信州戸田藩の家臣で甲賀忍者の流れをくむ芥川九郎右衛門は、秘術を会得して透明人間になることに成功した。それを知った十一代将軍徳川家斉は九郎右衛門を呼び、豊後臼杵城で行われている謎の儀式を探るよう命じる。臼杵城では異人の村に処女を捧げ、貰った黄金で幕府禁制のエスパニヤと交易をしていた。さらに九郎右衛門は、臼杵城に養子に出した家斉の子・鶴千代の命が狙われていることを知る。時代長篇。
その放埓ぶりは江戸中知らぬもなしと囁かれた男、本所錦糸堀の直参此村大吉はある夜、近頃流行の釣鐘盗ッ人に出喰わした。鐘の中には猿轡をした娘がいたが、傍から娘の兄と名乗る男半次郎が現れ、連れ去る。一連の盗みは鼠山の吉五郎の仕業。此村は何の因縁か、岡ッ引に追われる吉五郎を匿う。一方、呉服屋の継母に質にされた娘を救い、更に一儲け企む半次郎が暗躍する。痛快に生きる男達を描く時代長篇。
慶長五年六月、徳川家康は天下統一の野望を抱き、上杉景勝討伐のため会津へ向かった。その隙をつき、反徳川派の石田三成が挙兵、諸大名は東軍と西軍に分け、関ヶ原で将来の浮沈を決する戦が始まった。だが、この戦いに自らの人生を賭けたのは武士ばかりではない。落城寸前の城に鉄砲を運ぶ鍛冶、祖父の仇を利用して名を上げようとする酒問屋…。もう一つの戦いがここにあった。
西日本帝国、国防総省。六本木では木谷首相の指令を受けた峰剛之介統幕議長が父島海域に落下した黒い球体の回収に向う東日本共和国艦隊を押さえ込むべく、戦艦〈大和〉に出動命令を発令。銚子沖にピケットラインを設け、早期空中警戒管制機E3Aセントリー、F15Jを出動させ、東日本空軍の南下を阻止せんとした。謎の球体のテクノロジーをめぐり、東西日本の争奪戦が始まる。好評書下しネオ戦記第二弾。
徳川吉宗、幼名源六は、行倒れを救われた娘を母として貞享元年(1684)に生まれた。父は和歌山藩五十五万石当主光貞。既に綱教、頼職があったが、二兄が相次ぎ病死、二十二歳で紀州家をついだ。一方、六代将軍家宣は次期将軍に御三家筆頭尾州徳川家第四代吉通を望むが、翌年、吉通が突然死。家宣をついだ嗣子家継も三年後麻疹をこじらせて衰弱死、ついに吉宗が将軍の座に。会心の書下し長篇歴史小説。
円四郎は脇指を抜いた。女はハッとなって脇指を見る。一度見たらおしまいだ。女の目が光を失ってトロンとなった。そして、「抱いてください」と言った。体から芯が抜けたようだ。この世に三口あるといわれる淫刀痣丸。女を悶え狂わす脇指を狙って襲い来る敵たちを、無住心剣流の達人・真里谷円四郎の凄まじいまでの豪剣が縦横無尽に斬り倒す。