2003年8月発売
桃井防衛庁長官は思わず窓に駆け寄った。高層ビルに何かが命中して爆発が起り、続いてビルが煙を噴きだしながら崩落して行くのだ。震動は数キロ北方に位置する官邸にも響いてきた。汐留付近から有楽町にかけて爆発とビルの崩落が続いていた。トマホークだ!桃井防衛庁長官は咄嗟にそう思った。「総理、これは巡航ミサイルの攻撃です。小笠原付近に展開中の米機動部隊が発射しているんです」「撃墜できないのか?経済の中心をやられたら、日本はお終いだぞ」鷲田総理は桃井防衛庁長官に詰め寄った。
1941年、日本軍のパールハーバー奇襲により太平洋戦争が勃発。アメリカ海軍は戦局を打開すべく、潜水艦隊を日本艦艇の通航の要衝である豊後水道へ派遣、商船隊を集中的に攻撃して補給路を断とうとした。だが米海軍潜水艦の前に立ちはだかったのは、日本駆逐艦を率いる歴戦の勇士“豊後ピート”だった-両者の熾烈な攻防、海の男たちの誇り、人間ドラマを当事者の目から克明に描いた記念碑的作品。名作映画の原作、初の完訳。
出張ホスト、出会い系、逆性感…。女流官能作家・内藤みかが「女が男を買う時代」を活写!加えて女流カメラマン・後藤さくら撮影のイケメン5人のヌードも満載!なにからなにまで異色の官能的短編集。
南フランスで軍用ヘリコプターの設計図翻訳の仕事にありついたゲオルクは、たまたま知り合ったフランソワーズと共に幸せな日々を送る。偶然翻訳事務所を引き継いで運が向いてきたと思った彼は、ある日、想像もしなかったフランソワーズの行動を発見して動転する。不審な男たちに設計図を強奪された彼は、忽然と消息を絶ったフランソワーズの残した唯一の手がかりを追って、単身ニューヨークに飛ぶ。だがそこで彼を待っていたのは、複雑に絡み合う巨大企業と国家の影の暗闇だった!『朗読者』『ゼルプ三部作』の作家が満を持して放つ異色の現代ドイツ・サスペンス小説の傑作。グラウザー賞受賞。
そこに立った子は、ふしぎな面立ちをしていた。最近、都で流行りだした舞楽の面のようだった。風が吹くと、赤毛がふわりとふくらむ。異国の香りをただよわせるその風貌には、高貴なたたずまいと、おそろしく異質な妖怪の気配とが同居していた。これからお話しするのは、今をさかのぼる千年前、平安の世で活躍した陰陽師・安倍晴明の秘められた物語である。それでは、長いながい占術の歴史をひもといていくことにしよう…。陰陽道にたいする膨大な知識を駆使して綴られた、安倍晴明の一大物語。
「鳥人」として名を馳せ、日本ジャンプ界を担うエース・楡井が毒殺された。捜査が難航する中、警察に届いた一通の手紙。それは楡井のコーチ・峰岸が犯人であることを告げる「密告状」だった。警察に逮捕された峰岸は、留置場の中で推理する。「計画は完璧だった。警察は完全に欺いたつもりだったのに。俺を密告したのは誰なんだ?」警察の捜査と峰岸の推理が進むうちに、恐るべき「計画」の存在が浮かび上がる…。精緻極まる伏線、二転三転する物語。犯人が「密告者=探偵」を推理する、東野ミステリの傑作。
三十八歳という若さで日本を代表する企業の人事課長に抜擢されたエリート・橋田浩介。彼は、男に絡まれていたところを助けたことがきっかけで、短大生・中平香折と知り合う。社内での派閥抗争に翻弄されるなか、橋田にとって彼女の存在は日増しに大きくなっていった。橋田は、香折との交流を通じて、これまでの自分の存在意義に疑問を感じ、本当に大切なことを見いだしていくのだった…。-混沌とした現代社会の中で真に必要とされるものは何かを問う、新たなる物語。各紙誌書評で絶賛と感動の声を集めた気鋭のデビュー作、待望の文庫化。
呉の魯粛の訃は、関羽にとって何よりの朗報だった。これで荊州は蜀のものと信じ、北上して魏を攻める。しかし兵糧不足に陥り、呉蜀共同の備蓄米に手をつけた。呉にとっては蜀を攻める恰好の口実ができた。孫権は即、出陣を命じる。前線に魏軍、背後に呉の大軍を受け、関羽はついに呉軍に捕らえられ、非業の死を遂げた。呂蒙もまた、病に斃れる。さらに乱世の姦雄・曹操も逝く。
一五三六年、パリ。ある靴職人が行方不明になった。その事件に着手した新米夜警隊長ドニ・クルパンは、元家庭教師で天才的推理力を持つ神学僧ミシェルに協力を求める。二人が捜査を進めるうちに、やがてパリの闇夜にうごめく巨大な陰謀が明らかに…。宗教改革という時代のうねりの中、セーヌ左岸の学生街「カルチェ・ラタン」を舞台に繰り広げられる冒険と青春群像。西洋歴史小説の傑作。
一時は盗賊に落ちた千造だったが、亥吉と再会するや、共に組んで商人道を歩むようになる。江戸庶民感覚の小料理屋と、食器専門店を繁盛させた二人は、さらに利幅の大きな新商売を画策。時代を一歩先取りした商いを自ら考えだし、次々とこれに挑戦していく。二人には十年先が見えるのだ。とうとう亥吉は町を束ねる要職にまで担ぎ出された。意地の商人道を描く痛快巨編。
男は使い捨て、ひきこもりの妹さえ利用する。あらゆる手段で、人生の逆転を賭けて「勝ち組」を目指す、麻生陶子33歳。あなたは、これを「狂気」といえるだろうか。明野照葉が書き下ろす、迫真の現代サスペンス。
国王の下には押しかけ愛妾が出現し、王女にはタンガの皇太子との縁談が持ち込まれた。暗殺の次は策略か!?日頃は剛胆なウォルも無敵のリィも、敵国の謀議に激怒した。この事態に抗すべく両者の婚姻がデルフィニアの国を挙げて敢行される。が、厳粛な式の最中、急を告げる使者の叫びが聖堂に響きわたる。
北関東新聞の古参記者、悠木和雅は、同僚の元クライマー、安西に誘われ、谷川岳に屹立する衝立岩に挑む予定だったが、出発日の夜、御巣鷹山で墜落事故が発生し、約束を果たせなくなる。一人で出発したはずの安西もまた、山とは無関係の歓楽街で倒れ、意識が戻らない。「下りるために登るんさ」という謎の言葉を残したままー。未曾有の巨大事故。社内の確執。親子関係の苦悩…。事故の全権デスクを命じられた悠木は、二つの「魔の山」の狭間でじりじりと追い詰められていく。