制作・出演 : ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
バブル期と同期するように到来したマーラー・ブームの最中に録音された音源である。同じウィーン・フィルでもバーンスタインとは感触がずいぶん違う。テンポのメリハリが物足りないものの、スケールは壮大で音色や表現の随所にマゼールらしいアクの強さがある。
VPOの甘口な響きを可能な限り引き締め、辛口に仕上げた演奏。冷静すぎたり、流れがややぎこちない場面もあるが、第1楽章の厳しい響きや第4楽章アダージェットの分析的な美しさは秀逸。全曲にわたって細かくトラック番号が入れられているのも便利。
意外にすっきりした演奏で、マゼールのエグさがあまり感じられない。この曲は結構厄介で、楽器の使い方や編成、構造など、バランスが取れているようないないような。要するに曲自体がエグいのだ。マゼールは、そうしたエグさ(もしかして長所か?)を昇華させた。
音楽がガラリと相貌を変える、その先触れとして仕掛けられた一瞬の響きの変化をのがさない。細部まで動きを見通した怜悧な音の姿と見せて、その変化に耳が止まった瞬間に音の内側の脈絡の中にズブと引き込まれていく。知情巧みに使嗾するギロリのマゼール流。
制作・出演
アルノルト・シェーンベルク合唱団 / ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 / ウィーン少年合唱団 / サイモン・エステス / シャロン・スウィート / フローレンス・クイヴァー / リチャード・リーチ / ロリン・マゼールマーラーが情熱を傾けて書き上げた巨大なスケールの作品の細部を執拗なまでに克明に描き出した独創的な解釈。鋭利な刃物の如きマゼールの指揮にウィーン・フィルが豊潤な響きで応えることによって、終結部における宇宙の鳴動が聴く者の魂を震わせる。
マゼールという指揮者の本質的な美点が良く出た録音。練達のオーケストラを率いながら、物理的なバトン・テクニックがここまで有効に音楽を導き出せるということを例証してくれるようだ。数多ある同曲録音中でも、リスニングにはスコア必携の秀演。
ここでのマゼールは、いつものエグい瞬間芸みたいなものをあまり繰り出さず、オケ(特に弦楽器)の美しさを徹底的に堪能させてくれる。とはいえ、スコアのありとあらゆる情報を細大漏らさず掘り起こし、マーラーの凝った仕掛けをあばくことも忘れない。
制作・出演
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 / ウィーン国立歌劇場合唱団 / ゲオルク・マイクル / フェリックス・ヴァインガルトナー / リヒャルト・マイア / ルイーゼ・ヘレツグルーバー / ロゼット・アンダイウィーン・フィルのニューイヤーのアルバムは、どれもが楽しいが、荒っぽい演奏の時もなきにしもあらず。でも、今回のマゼールのはリラックスしていながら、演奏も上等な絹のようになめらか。普段は取り上げられない作品でも懐かしささえ感じさせてくれる。