制作・出演 : クリーヴランド管弦楽団
情のおもむくところ対極的な2曲を並べながら、ことさらにその違いを際立たせるのではなく、響きとウタのデリカシー、細部を濃やかに息づかせる内田流の佇まい。オケも協奏というよりは溶けてシンクロ。ぽつり透明なピアノの響きに耳が沈潜する2楽章が出色。
制作・出演
カラヤンセル / クリーヴランド管弦楽団 / スヴャトスラフ・リヒテル / ダヴィッド・オイストラフ / ヘルベルト・フォン・カラヤン / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 / ベートーヴェン / ムスティスラフ・ロストロポーヴィチドホナーニ初のマーラー録音となったもの。細部まで明晰で、楽曲分析を音化しているかのような精密な演奏は、新たなマーラー演奏の時代の到来を告げるものだった。のちのマーラー演奏の先鞭をつけた画期的な録音だ。
ドホナーニはクリーヴランド管とマーラー交響曲全集の完成にこそ至らなかったが、残された演奏はどれも時代を先取りした鮮烈なものである。新ウィーン楽派の初期作品と並べたことで、マーラーの先進性が浮き彫りにされている。
「左手」冒頭のバスの蠢きから実にクリアで、エマールのアルペッジョや、裏で聴かせる弦のグリッサンドの綾など、どこをとってもとにかく緻密。この手のアプローチはたいてい木を見て森が見えなくなってしまうものだが、そうならないのが彼らのスゴさだ。「鏡」では、書法と響とが絶妙なバランスで現前する。★
85歳の巨匠が16年がかりの全集に結びの一筆を加えた。“通俗的なるものからの批判的な距離感とノスタルジーへの埋没の二律背反”が見事に音化された“偉業”だ。セルの往年を想起させる完璧なオケ、文字どおり入魂の歌唱で応じるふたりの歌手、TELDEXによる録音、ライヴの制約を超えた秀逸さだ。★★
ブルガーゴーズマンの豊穣な歌声が我々を官能的な陶酔へと誘う。秘めた恋に身を焦がす女の苦悩を描き出す情熱的な歌唱が見事である。ウェルザー=メスト指揮のクリーヴランド管による豊かな響きも実に魅力的。ワーグナーを聴く歓びに心震える演奏である。★
ハ短調(K.491)がまさに天国的な美音で迫る。同曲にはお気に入りの仲間ザンデルリンクとの共演という奇盤(HMF)も存在するが、今回はECOとの鮮烈なシリーズ以来20年以上の磨きがかかった弾き振り演奏ライヴであり、“デイム・ウチダ”の貫禄!★
最高の音で楽しむために!
ツィマーマンとブーレーズとの共演ということで話題となったアルバム。完璧主義者のラヴェルに完璧主義者二人が挑んだところが興味深い。ディテールの精密さや磨き上げられた響き、精緻なリズムと、ラヴェルも大満足の演奏となっている。
ストラヴィンスキーの三大バレエのうち、「春の祭典」と「ペトルーシュカ」を取り上げた歴史的名盤です。「春の祭典」は、太古の儀式の様子を描いた作品で、初演時にはあまりに衝撃的な内容でスキャンダルをも引き起こした問題作です。この曲の、ブーレーズにとっては2度目の録音となるものですが、「リズム細胞論」などを駆使した斬新かつ論理的な解釈で、発売以来この曲の決定的演奏として高く評価され続けているものです。謝肉祭の人形芝居の一幕を描いた「ペトルーシュカ」も、革新的な管弦楽法が駆使された作品で、ブーレーズは作曲家でもあるその立場から徹底的に楽曲を分析した解釈に基づき、精緻きわまりない演奏を聴かせます。