制作・出演 : コロンビア交響楽団
ゆったりと歌いながら確実な歩みでオケが進み、ヴァイオリンが待ってましたとこの上なくつややかに始める。その音色の美しいこと! とても60年代初期の録音とは思えない。この2人のコンビをこんなにいい音で聴けるとは望外の幸せだ。
「未完成」は最高度にロマン的な演奏で、特に第2楽章の美しさはたとえようがない。ハイドン風の古典的性格の強い第5はもっとすっきりと演奏しているが、そこにはしみじみとした歌心があって、心が暖まってくる。
ワルター唯一の当曲録音。シューベルト最後最大の、そして歌に満ち抒情あふれる美しいこのシンフォニーを、巨匠ワルターが心優しく暖かくのびやかに歌いあげている。
ワルターがその晩年に完成したステレオによる唯一のベートーヴェン交響曲全集の分売CD。2曲ともワルター2度目の録音。気品漂う美しい演奏で、しかもその底にはしたたかな精神力を窺うことができる。ことに「運命」での緊張の持続力は驚異的。
ワルターの演奏には常に清楚な精神性のようなものが宿っている。思い入れとか野心とかがなく、スッと耳に入ってくる。端正な響きと肩の力のぬけた表現で刻みこまれる晴朗にして健全なベートーヴェンである。「田園」の原点ともいうべき演奏だ。
晩年のワルターらしく、温かく余裕を持って進んで行くが、音楽そのものはそれほど老けた感じはなく、意外に若々しく瑞々しい。新リマスターの音は以前より細身で堅くなっているが、がらりと印象を変えるほどではない。オリジナル・ジャケット。
新しい復刻技術を使った再発盤。音は随分変わった。弦はきつめだが管は輝きを増した。残響部分もすっきりした。全般に音の輪郭が際立ち、ダイナミックレンジが広がった。その結果ワルターへの印象が変わってしまった。意外にめりはりがきいて男性的だ。
録音の加減もあるんだろうが、このシリーズは“ずううん”というバスと、“しゃりり”っとした高弦のコントラストが特徴。いわゆる外声強調型であり、ここにワルターの響きの趣味と音楽作りの嗜好が見える。一聴甘く穏やか、でも壮大で濃い演奏だ。
同じコンビによるベートーヴェンのコンチェルトの場合と全く同じことを言いたい。ただ、こちらはモーツァルトらしく、もう少し軽妙な感じがある。それにしても、80歳を過ぎた人とは思えぬ、ワルターのすばらしい演奏だ。(1)はイザイのカデンツァ使用。
ワルターがその晩年に完成したステレオによる唯一のベートーヴェン交響曲全集の分売CD。2曲ともワルター2度目の録音。気品漂う美しい演奏で、しかもその底にはしたたかな精神力を窺うことができる。
(2)はワルター2度目の録音。(2)はウィーンpoとの37年の録音が余りにも有名だが、唯一の(1)と組み合わせたこのCDも最晩年のワルターの代表的な名盤。いずれも遅めのテンポで、堂々たる進行はいかにも巨匠ならではの足どりである。近年の演奏スタイルとは遠いが、一度は聴いておきたい。
ワルター得意のモーツァルトが新しいマスタリングによって美しい音で蘇っている。音楽の表情づけがあたたかで柔らかい。今では滅多に聴くことのできないようなロマンティックでゆったりとしたモーツァルトが、かえって、新鮮に感じられる。
ずううんと重い響きと、ぐぐっとテンポを落として纏綿と歌われる旋律。かと思えば、かあっと熱くなるとごわぁっと走ったりする。いやはや温和な紳士かと思っていたワルターも、今聴くとカリスマの雰囲気すら漂わせ、絶句的濃さである。確かに巨人の一人だな。
ワルター晩年のステレオ録音をデジタル化したシリーズの一枚。伸び縮みするテンポや大きくうねるようなアーティキュレーションなど、いかにも“時代”を感じさせるが、あふれるような音楽への熱は、最近のドライな演奏に足りないものを教えているようだ。
80歳を越えた晩年のワルターのステレオ録音。特に晩年の彼の音楽には、穏和な表情の中にどことなく哀感が漂うような、独特の味わいがあった。ブラームスはそんな巨匠の芸風に最もしっくりと馴染む作曲家の1人だったように思う。低音域を充実させたドイツ的なスタイルで、ロマンティックな情感を適度に盛り込みながら、柔らかくたっぷりと歌わせた、スケール感豊かな名演だ。