制作・出演 : ブルーノ・ワルター
(2)はワルター2度目の録音。(2)はウィーンpoとの37年の録音が余りにも有名だが、唯一の(1)と組み合わせたこのCDも最晩年のワルターの代表的な名盤。いずれも遅めのテンポで、堂々たる進行はいかにも巨匠ならではの足どりである。近年の演奏スタイルとは遠いが、一度は聴いておきたい。
ワルター得意のモーツァルトが新しいマスタリングによって美しい音で蘇っている。音楽の表情づけがあたたかで柔らかい。今では滅多に聴くことのできないようなロマンティックでゆったりとしたモーツァルトが、かえって、新鮮に感じられる。
ずううんと重い響きと、ぐぐっとテンポを落として纏綿と歌われる旋律。かと思えば、かあっと熱くなるとごわぁっと走ったりする。いやはや温和な紳士かと思っていたワルターも、今聴くとカリスマの雰囲気すら漂わせ、絶句的濃さである。確かに巨人の一人だな。
ワルター晩年のステレオ録音をデジタル化したシリーズの一枚。伸び縮みするテンポや大きくうねるようなアーティキュレーションなど、いかにも“時代”を感じさせるが、あふれるような音楽への熱は、最近のドライな演奏に足りないものを教えているようだ。
80歳を越えた晩年のワルターのステレオ録音。特に晩年の彼の音楽には、穏和な表情の中にどことなく哀感が漂うような、独特の味わいがあった。ブラームスはそんな巨匠の芸風に最もしっくりと馴染む作曲家の1人だったように思う。低音域を充実させたドイツ的なスタイルで、ロマンティックな情感を適度に盛り込みながら、柔らかくたっぷりと歌わせた、スケール感豊かな名演だ。
ワルターがステレオ録音で残した貴重な録音のひとつ。初期ステレオのため、多少高音がずり上がったような感じがしなくもないが、彼の音楽の前ではそれは大きな問題ではない。なにより推進力の大きな音楽作りが、ぐいぐいと聴き手を引きつけて離さない。