制作・出演 : ブルーノ・ワルター
歌う指揮者ワルターの体質にぴったりのブラームスの2番。明るめの音色でブラームスの自然賛歌をくっきりと描く。2楽章の入りの弦の歌などちょっぴり古風だけど、室内楽のような歌心が伝わってくる。新しいマスタリングの細身の音色には好みが分かれそう。
演奏については語り尽くされている。問題は新マスタリングの音だ。確かに情報量は増し、出力も高く、一瞬新鮮に感じる。しかし、しばらく経過するとそのあまりにも金属的な音に耳が耐えられなくなる。各誌絶賛の音質だが、個人的には一番最初の音を好む。
何度となく聴いてきたワルターのワーグナーだが、このCDを再生してビックリ。オリジナルはこれほど鮮烈な音をしていのだ。ブラスの輝き、弦の艶、内声部の明確さ、Dレンジのノビ……DSDマスタリングはすごい。パルジファルのピアニッシモの美しいこと。
まず音質の向上に耳を奪われる。分解能が格段に良くなり、トレモロのさざ波や低弦のうねりがしっかりと聴き取れるのだ。ただ同時に金管の音が生々しく強調されて響くのも確か。ワルターのブルックナーは田舎っぽいが、緩徐楽章の味わいはさすがである。
ゆったりと歌いながら確実な歩みでオケが進み、ヴァイオリンが待ってましたとこの上なくつややかに始める。その音色の美しいこと! とても60年代初期の録音とは思えない。この2人のコンビをこんなにいい音で聴けるとは望外の幸せだ。
「未完成」は最高度にロマン的な演奏で、特に第2楽章の美しさはたとえようがない。ハイドン風の古典的性格の強い第5はもっとすっきりと演奏しているが、そこにはしみじみとした歌心があって、心が暖まってくる。
ワルター唯一の当曲録音。シューベルト最後最大の、そして歌に満ち抒情あふれる美しいこのシンフォニーを、巨匠ワルターが心優しく暖かくのびやかに歌いあげている。
ワルターがその晩年に完成したステレオによる唯一のベートーヴェン交響曲全集の分売CD。2曲ともワルター2度目の録音。気品漂う美しい演奏で、しかもその底にはしたたかな精神力を窺うことができる。ことに「運命」での緊張の持続力は驚異的。
ワルターの演奏には常に清楚な精神性のようなものが宿っている。思い入れとか野心とかがなく、スッと耳に入ってくる。端正な響きと肩の力のぬけた表現で刻みこまれる晴朗にして健全なベートーヴェンである。「田園」の原点ともいうべき演奏だ。
晩年のワルターらしく、温かく余裕を持って進んで行くが、音楽そのものはそれほど老けた感じはなく、意外に若々しく瑞々しい。新リマスターの音は以前より細身で堅くなっているが、がらりと印象を変えるほどではない。オリジナル・ジャケット。
新しい復刻技術を使った再発盤。音は随分変わった。弦はきつめだが管は輝きを増した。残響部分もすっきりした。全般に音の輪郭が際立ち、ダイナミックレンジが広がった。その結果ワルターへの印象が変わってしまった。意外にめりはりがきいて男性的だ。
制作・出演
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 / エーリヒ・クライバー / クレメンス・クラウス / ジョージ・セル / ハンス・クナッパーツブッシュ / ブルーノ・ワルター / ヨゼフ・クリップス / ヨハン・シュトラウス2世 / ヴィルヘルム・フルトヴェングラー発売元
ユニバーサルミュージック録音の加減もあるんだろうが、このシリーズは“ずううん”というバスと、“しゃりり”っとした高弦のコントラストが特徴。いわゆる外声強調型であり、ここにワルターの響きの趣味と音楽作りの嗜好が見える。一聴甘く穏やか、でも壮大で濃い演奏だ。
同じコンビによるベートーヴェンのコンチェルトの場合と全く同じことを言いたい。ただ、こちらはモーツァルトらしく、もう少し軽妙な感じがある。それにしても、80歳を過ぎた人とは思えぬ、ワルターのすばらしい演奏だ。(1)はイザイのカデンツァ使用。