制作・出演 : 長谷川陽子
実に18年ぶりのチェロ名曲集(全19曲収録)。選曲はもとより旋律の歌わせ方には長谷川の豊かな音楽性とともに、彼女の人生観や感性が瑞々しく浮かんでくるのが痛感される。ピアノとハープを器用に弾き分ける朝川朋之の伴奏(編曲)も絶妙。近年稀にみる魅力的なアルバムである。
長谷川陽子が米英のチェロ作品を録音した。演奏機会の少ないバーバーの協奏曲はモダンなテイストの快活な作品。ディーリアスは美しい小品。エルガーの名曲とともに、長谷川が温かな音色で深みのある演奏を繰り広げる。下野竜也の好サポートも光る。
再録のドヴォルザークが文句なしに良い。自信に満ちたボウイングから繰り出される朗々たる旋律の歌わせぶりに感銘を受ける。チェロと管弦楽の響きが渾然と融和して馥郁たる薫りが漂う。古都プラハでのセッションがこうした雰囲気を醸したのかもしれない。
クラシック音楽の入門者向けに定番曲を集めた、情操教育用のCDシリーズ。偉大な作曲家たちの名曲に、心を静める効果のある自然音が加えられた構成で、朝の目覚めや夜の安らかな眠りに効果覿面だ。
世界的に愛されるボサ・ノヴァの生みの親ともいえるジョビンへのオマージュ作品。長谷川陽子と福田進一とによって描き出されるそのプロフィールは、あくまでもシンプルでスマート。仕立てのいいテーラーメイドのトロピカル・スーツにも通じる晴れやかさが漂う。
都内の高校に通う現役の高校1年生、なんと弱冠16歳という若き箏奏者、森川浩恵のデビュー作。まさに“目からウロコ”スゴイ! の一語に尽きる。これまでの箏(琴)に対するイメージを一掃する即興性あふれる華麗にして激しいツメさばきは驚異! まずは聴くべし。★
たった一人のチェリストによって繰り広げられるこの音楽は演奏家の色に染まりさまざまな顔を見せる。人生を語るような巨匠の演奏と比較するとこの長谷川の演奏は軽い。しかしそこには爽やかで瑞々しい若草の香が漂っている。軽やかで暖かな音色が快感だ。
およそチェリストにとって、名旋律はネコにマタタビ。クラシックよりもむしろポピュラー音楽の方がより普及率が高い分、腕が鳴るはず。本盤はビートルズやデイズニーの名作を新しい薬味で食わせる。編曲がニューウェイブっぽくて面白い。いい演奏だ。
どんな作品にも負けない太くて朗々とした音と優れたテクニック、そしてピュアでナイーヴな感性を兼ね備えた長谷川陽子が、四つの無伴奏作品に挑む。現在の彼女のすべてを出し切った渾心の出来だ。彼女のひたむきな想いがひしひしと伝わり、聴き手の胸を打つ。
ロマンティックな小品を中心とした長谷川陽子のベスト盤。大家の演奏を年代物のボルドー・ワインに譬えるなら、こちらはできたてのフレッシュなワイン。澱もなく、すっきりと軽やか。クセの少ない、万人に愛されるタイプだ。おおらかな音楽運びが心地よい。
彼女の過去の録音の中からゆったりした曲を選んだベスト盤。ぎこちない場面も時折見られるが、それ以上に彼女の暖かく素直な音色によって生きた場面の方がさらに多い。ともかく、聴いていてさわやかな気分になれるので、アルバムとしては買いである。
長谷川陽子の7枚目のCD。95年にドイツで録ってきたブラームスのソナタ集。自身のブラームスへの想いを余すところなく披露しており、ほとばしるような力強さとデリケートさを備えた演奏は深々とした味わいを残す。同調するギリロフのピアノも見事。★
コダーイの無伴奏ソナタをはじめ、録音でも快進撃を続ける長谷川陽子。これはスペイン風名曲アルバムといった面持ちの、肩の力を抜いて楽しめる1枚。とはいえ、彼女の美点であるさりげない音楽作りの中に、きらめく才能が感じられる素敵なアルバムだ。