ジャンル : クラシック > 交響曲
スウィトナーの初レパートリーというだけではなく、この日がこの曲のN響初演という記念すべきライヴ。ミスは多少あるが、全体を通じて非常にテンポよく生き生きと進んでいくし、第2楽章の深い音色も印象的。スウィトナーのブルックナーは再認識されるべき。
2010年1月に87歳で亡くなったスウィトナーが、86年にN響と残したライヴ録音で、同シリーズの7枚のうち、最後の録音となる。音楽の構造的側面を重視したオーソドックスなスタイルで、柔和な「田園」に対して、「運命」では濃密なエネルギーの噴出が印象的。ともに風格を備えた円熟ぶりが魅力だ。
ドヴォルザークはまさにライヴならではの大熱演。ブラームスは反対に、恰幅の良い落ち着きがあり、ことに後半の楽章は黄昏と哀切の色が濃い。ちなみに後者はスウィトナーとN響の最後期の共演。虚飾なく誠実な音楽を聴かせてくれる良い指揮者だった。
制作・出演
エリアフ・インバル / デイル・ワーランド・シンガーズ / ドリス・ゾッフェル / ハンス・ベートゲ / フランクフルト放送交響楽団 / ヘレン・ドナート / マーラー / リンブルク大聖堂少年合唱隊 / ヴェルナー・ハーゲン / 北ドイツ放送合唱団発売元
日本コロムビア株式会社インバルが80年代〜90年代初頭にかけて完成させたマーラー全集を、最新のマスタリング技術を施して再発したボックス・セット。発表当初も話題となったが、評価は年々高くなってきている。インバル入魂のマーラーだ。
制作・出演
アンソニー・ディーン・グリフィー / イヴォンヌ・ネフ / チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 / デイヴィッド・ジンマン / ビルギット・レンメルト / マーラー / メラニー・ディーナー / ユリアーネ・バンゼ / リサ・ラーションマーラーの言を借りるならば、ジンマンはこの作品に至るために7作品の番号順収録を重ねてきた。広がり・奥行きともに申し分のないバランスが繊細に保たれた80数分の音の洪水。「千人」がこけおどしでなく、必然のスケールであることを納得させてくれる。マルチ録音が“4ch”なのも実に見識。★
古楽器的な響きを取り入れているのは従来と同じ。だが、今回はそれがだいぶ板についてきて、音楽がより生き生きと鳴っている。モーツァルトはちょっと不自然な表情が感じられる部分があるが、悪くはない。いっそう覇気があって井上らしいのはハイドンの方。
ワーナー・クラシカルが擁する名指揮者たちによるマーラーのベスト・アルバム。交響曲の第1番から第9番までの聴きどころの楽章に加えて、連作歌曲集「亡き子をしのぶ歌」と「さすらう若人の歌」から各1曲収録している。
制作・出演
AnnaHeygster / FriederNockur / KarinKutzke / KeikoKakuma=Hulverscheidt / NikolaiMintchev / RudolfAndreasHeber / ブラームス / ヴッパータール交響楽団 / 上岡敏之発売元
日本コロムビア株式会社2004年からヴッパータールso.を率いる上岡敏之は、オケからも聴衆からも圧倒的な支持を受けている。温かみのある重厚な響きを持ちながら、あくまで活気を失わない。「ハイドンの〜」で聴かせる上質な響きや、シューマンへの愛情が漂うような芳醇な音楽。愉悦の時が流れている。
制作・出演
AnnaHeygster / FriederNockur / KarinKutzke / KeikoKakuma=Hulverscheidt / LiviuNeagu=Gruber / NikolaiMintchev / リヒャルト・シュトラウス / ヴッパータール交響楽団 / 上岡敏之発売元
日本コロムビア株式会社しなやかで色彩的で、まことに聴きごたえのある演奏。ヴッパータールは二流などと悪口を言う人も多いが、無為無策の一流団体より結果が良いことはこの演奏が証明している。録音も素晴らしい。来日公演で披露した「ドン・ファン」なども早く録音してほしい。
2008年2月のチェコ・フィル定期演奏会におけるライヴである。スタジオ録音と比べさぞや燃えたぎる実演かと思いきや、コバケンらしい熱気をいくぶん抑制し、隅々まで十分なコントロールが行き届く。ローカル色を生かした正攻法の解釈で聴く者を唸らせる名演だ。