ジャンル : 演歌・純邦楽・落語 > 落語・演芸
大正から昭和の戦後にかけて東京で活躍した大阪落語の百生は、ダウンタウンの浜ちゃんと口調が似ているのにびっくり。64年に亡くなっているので初めて聞く方も多いのでは。典型的な大阪噺である「船弁慶」を東京でここまでやれた人がいたとは。
もちろん先代の金馬であり、どれも完成された噺なので何度もこれまでくりかえし楽しんできた録音。ゴリゴリの人情も交流するとフニャっとなるのがやたらとおもしろい。「ヤカン」の御隠居型の人に出会うとホッとするのは、落語からの恩だと確信している。
東京本郷生まれの江戸っ子だけあって口調がいい。もったりとした調子と軽い調子とが見事にブレンドされて、とてもいい味を出している。柳橋はNHKのラジオ『とんち教室』などで一般にも有名になった人だが、実力のほどはこの1枚で十分にうかがえる。
彦六の正蔵といえば怪談噺の名人ということで「牡丹灯篭手提」はもちろん聴きものだが、ここでは平岩弓枝作「笠と赤い風車」が興味深い。新作にも意欲的だったこの人の、明治生まれのモダンな感覚が伝わってくる。こういう個性のある噺家が懐かしい。
昭和57年に54歳で急逝。それが未だに悔やまれている馬生だ。しっかりとした構成、流れるような噺の運びに定評があり、なにより気品のある語り口と思いやりに溢れた人物表現では、他の追随を許さない。笑いながら人の世のやさしさをふと感じる、そんな芸風である。人形浄瑠璃でもよく取り扱われるテーマだが、使用人と主人の娘の悲恋をめぐる「おせつ徳三郎」が実に圧巻。
いかにも明治の人らしく、枯れた芸風が古き良き寄席の空気を伝えてくれる。落語界きっての踊りの名人としても知られ、その素養に裏打ちされた所作の美しさが目に浮かぶ。芝居が日常生活から縁遠くなった昨今、「七段目」の面白さがどこまで通じるか……。
長屋噺で職人が登場する咄を得意にした柳朝ならではの二題。心学の紅羅坊名丸先生と職人の八五郎のやり取りの「天災」、因業大家と大工の与太郎と政五郎の口論の「大工調べ」(前半)を演じている。師匠の彦六とは異なり、威勢のいい口調が気持ちいい。
先代の金馬の弟子で、東京で修行をして上方落語で開眼した小南師匠。ふんだんにちりばめられるギャグがなかなかいいテンポで、いま聴いても古さを感じさせない。(1)は狐に(2)は猫に化かされる噺で、上方落語独特の鳴り物も入り、ほどよいえげつなさがいい。
鍛えぬいた緩急自在の語り口により、古典落語の洗練の極致を示した桂文楽の不朽の名人芸を6枚シリーズに収録。昭和29年に芸術祭賞を受けた「素人鰻」は、一点一画もゆるがせない入念な演出で、士族夫婦をはじめ登場人物を絶妙に描き、職人の酔いっぷりなど、まさに名人芸。十八番の「富久」「愛宕山」では、目いっぱい激しい仕草を織りまぜ演じる高座姿を思い浮かべるファンも多いだろう。
古今亭志ん生とならんで昭和の落語界をリードした名人中の名人、八代目桂文楽の名人芸がたっぷり堪能できるCD6枚が同時発売。貴重な実況録音盤で、日本文化の至宝ともいえるの語り口が甦る。