発売元 : 日本伝統文化振興財団
76年にLPで発表された『観世流 舞の囃子』の復刻CD化で、今回はチューニングにあたる「お調べ」から舞のカテゴリーの順列に再構成している。笛の一噌(いっそう)流、小鼓の幸(こう)流、大鼓の高安(たかやす)流、太鼓の金春(こんぱる)流という観世流の囃子部門、四流の往時の人間国宝たち全員の演奏を収録した歴史的な音源となっている。初めて舞に接する方にとって、舞う人にとってことに笛がメロディ的な目安になることなど、さまざまな発見があるだろう。労作と言うしかない解説冊子を読みながら聴き進んでいくと、舞っている様子が何となく見えてくる。その昔、武家の教養であったのが舞である。
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日本伝統文化振興財団2006年7月に東京・紀尾井ホールで行なわれたライヴ“奄美しまうたのこころ”を収録。奄美しまうたの百年に一人の唄者とまで言われる武下の芸の神髄を堪能できる。低音域から高音へと歌われる過程でごく自然に裏声となっていく歌唱の妙味、三線の音色といい逸品だ。★
87年にLPで発売された『合奏曲集成』の復刻だ。ここでの合奏曲とは、3曲を基調にした管絃合奏の大きな組み合わせで、あらゆる和楽器を使っての大合奏、それにコーラスや独唱などが加わった交声曲などまでを指している。大正末から昭和31年にかけて宮城道雄が作曲した曲で構成されている。とにかく野心的で、当初その演奏は狼藉者と映る場面もあったろうと想像させる。箏曲に次々と狼藉者といわれて不思議でない変革者たちが登場する歴史的背景を、宮城の仕事に見ることになる。西欧音楽の様式を導入する過程で登場した和楽オーケストラのための楽曲である。なかでも箏とオーケストラによる「越天楽変奏曲」などが一度は聴いておきたい曲だ。昨今の和楽器演奏によるフュージョン的作品の原型がここにある。意外なほどコーラスや独唱などがフィーチャーされている曲に見られる作曲者・宮城の意図や思惑などを深読みできたりもして、これがなかなか面白い。
明治・大正期の古典小唄から現代の小唄までを、一人一曲という構成で収録したアルバム小唄は、戦後の昭和期に政財界人の間で全盛期を迎えたといわれ、庶民にとって短い歌で手頃な古くて新しい芸能でもあった。何度か聴いているうちに、歌詞の語呂や意味がしみ込んでくる。
エジソンが蓄音機を発明した当時、人々が真っ先にレコードに収めようとしたのはオペラのスターであった。3枚のCDにはSP黎明期のアコースティック録音からLP登場前夜の若きテバルディの瑞々しい歌声まで、イタリア・オペラの歴史に残る歌唱を収録。カルーゾ、テトラッツィーニ、ファーラーなど、伝説的名歌手の歌声が鮮やかに甦る。SP盤の針ノイズが巧みに除かれ、電気吹き込み以降のものは特に聴きやすい。なかんずく白眉はガッリ・クルチとデ・ルーカによる「椿姫」の二重唱。カルーゾのイタリア民謡も心に沁みる。
内藤孝敏によるノイズリダクション方式で届けられたSP盤からの復刻シリーズ。往年の名歌手たちによるイタリア・オペラ・アリア集だ。19世紀末から20世紀前半の歌唱スタイルを知る貴重な記録が詰まっている。
伸びやかな歌声が和みを感じさせ、意外とあっさり味の歌唱を聴かせる演歌の志摩幸子の全曲集ベスト。84年発表のデビュー曲「いわき絶唱」から全シングル曲と新曲「母さんの詩」までを収録。母へ感謝する新曲「母さんの詩」では、若々しく感じられる歌声を聴かせる。
第10回邦楽技能者オーディション合格者、女流義太夫三味線の鶴澤津賀花の記念CDがこれ。平実盛や後の木曽義仲など『平家物語』『源平盛衰記』に登場する人物が出てくる『源平布引滝』”が語られている。浄瑠璃の竹本駒之助による語りとの絶妙の間合いの三味線を聴かせる。
夭折の音楽家、貴志康一(1909〜1937)の生誕100周年を記念するライヴからの収録。歌曲からの編曲作品ながら、中村茂隆による編曲は、合唱としての魅力も十全に発揮し、古典的な上品さと充実した響きの両方を持つもの。歌唱力に覚えのある団体の、好適なレパートリーになりうると感じた。
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日本伝統文化振興財団沢井一恵の重要なアルバム3点が同時に発売された。『現代邦楽の世界』は初CD化で、新たに細川と武満を加えている。『目と目』は、高橋鮎生プロデュースで、太田裕美やP.ハミルがヴォーカルで参加するなど、鮎生らしいジャンルを超えた作りになっている。『3つのダンス』は、4面のプリペアド箏を使った、アッと驚く画期的なアルバムとなっている。前衛作品が主だが、いずれも沢井の明確で鋭敏なリズム感や豊かな感受性が一音一音に込められ、熱気あふれる演奏で、十七絃箏の世界の深さと広さ、そして面白さが実感できる。★
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日本伝統文化振興財団沢井一恵が、高橋鮎生のプロデュースで、ヴォーカルに太田裕美やピーター・ハミルを迎え、八橋検校から高橋鮎生まで、ジャンルを超えて箏の可能性に果敢に挑んだ意欲作。今回待望の復刻となった名盤である。
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日本伝統文化振興財団2台のプリペアド・ピアノのための「3つのダンス」を、なんと4面の“プリペアド箏”で演奏した、画期的なアルバム。さまざまな工夫を凝らし箏の可能性を追求した現代邦楽界の第一人者、沢井の真骨頂と呼べる一枚だ。
小唄の二大流派の一つ“春日会”の会長で、現代小唄界の第一人者・春日とよ栄芝の小唄集。三味線との絶妙の間合いから生まれる粋な節回し、色艶のある歌声とシャレた歌詞に聴き惚れながら、縁起のよい「宝船」「七福神」、おなじみの「梅が枝さん」など栄芝小唄をたっぷりと楽しむことができる。
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日本伝統文化振興財団邦楽史における革新的な作曲家、演奏家だった宮城道雄の代表曲を集めた2枚組。唯是震一、中島靖子を中心とした正派邦楽会による名演で構成されており、誰もが知る「春の海」はもとより、処女作の「水の変態」を含む韓国在住時代の作品や大正末期の多作の時代の作品を多く収める。
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日本伝統文化振興財団99年に人間国宝に認定された長唄囃子の堅田喜三久が1973年の35歳の時に一発録音で制作した最初のソロ・アルバムをCD化。全70トラックを7つに分けて構成したもので、鑑賞用としても資料としても貴重な作品だ。
(財)日本伝統文化振興財団による「第10回邦楽技能者オーディション」の合格者による演奏を収めたCD。国内外の多数の演奏会に出演し活躍している山田流筝曲演奏家、鈴木真為の演奏の数々が堪能できる。
鈴木正夫といえば昭和前半に国民的民謡歌手と言われた大物だが、この「龍馬おどり」は、二代目を継いだ子息の歌。「七福神」の音頭向けアレンジ曲「音頭「七福神」」(藤みち子/富田房枝)とともに、2010年全国総踊りの音頭もので、父親譲りの見事なノドを聴かせる。