発売元 : 日本伝統文化振興財団
発売元
日本伝統文化振興財団民謡歌手でもある相原ひろ子のもうひとつの顔である、新舞踊向けの作品に取り組む舞踊歌謡歌手としての一枚。「男船」で知られる松井由利夫の作品が4曲を占めるほか、市丸の「三味線ブギウギ」や高峰秀子の「銀座カンカン娘」なども収められ、彼女の節回しからはタイトルに通じる小粋な面がにじみ出ている。
79年1月6日からの13夜にわたる高座での13席を収録。関東人には馴染みの薄かった松鶴だが、そのパワフルで豪放な芸風と口調、ガラガラの声質などが憑依したかのように弟子の笑福亭鶴瓶へとつながっていると実感させる。この録音は松鶴が脳溢血で倒れた後、カムバックしてのイベント的な高座である。全盛期ではないが、松鶴といえば芝居噺と酒盛り噺で知られたように、得意としたそれらの話が中心の演目となっている。関西の言葉に馴染んだ今日では、東京人にも松鶴の気質を含め、その面白味が伝わりやすくなってきたようだ。松鶴も気にしていたらしい、初日の米朝の口上にニンマリ。
針ノイズを電気的に除去したSP復刻のシリーズ。音の輪郭が幾分ぼやけるのは致し方ないが、聴きやすさという長所は捨て難い。骨董的なメルバの歌唱に始まる第5巻。オネーギン、レーマン、メルキオーの歌唱に耳を奪われる。白眉は若きフェリアーによるメンデルスゾーン。豊かに響くアルトが胸を打つ。第6巻ではゲルハルトの「野に独りいて」に注目したい。このシリーズに収録された彼女の歌唱中最良の録音だ。第7巻ではフランス語で歌われたパンゼラの粋な「ドン・ジョヴァンニ」とベルガーの完全無欠な「夜の女王のアリア」が一頭地を抜く。オーストリア歌曲集の2枚も名唱ぞろい。8種の「魔王」(第8巻)ではオペラ歌手ガトスキならではの劇的表現に感銘を受ける。スレザクの「菩提樹」(第9巻)は未来永劫聴き継がれるべき逸品であり、イーヴォギンの「ウィーンの森の物語」(同)は美声の極みと言って良い。
往年の名歌手たちのSP盤からの復刻シリーズの第6巻。ベートーヴェン、メンデルスゾーン、シューマン、ブラームス、シュトラウスらを収録する。歌唱の変遷などがうかがえて、声楽ファンには興味深いアルバムだろう。
往年の名歌手たちのSP盤からの復刻シリーズの第7巻。モーツァルト、J.シュトラウスのオペラ、オペレッタのアリア集である。現在とは発声、表現法などが大分違っている人もおり、声楽史の資料としても貴重だ。
内藤孝敏によるノイズリダクション方式によるSP盤からの復刻シリーズ第8巻。ここでは、シューベルト歌曲集となっている。なかでも「魔王」は8人の歌手たちの競演が聴け、これだけでも非常に面白い。
往年の名歌手たちのSP盤からの復刻シリーズの第9巻。内藤孝敏によるノイズリダクション方式による復刻だ。シューベルト、J.シュトラウスに加え、シベリウスらも収録している。個性豊かな歌手たちの競演が楽しめる。
63年に発売された7枚組LPの、初のCD復刻盤。一般には一種類と受け取られがちな琵琶だが、実は雅楽の琵琶、平家琵琶、盲僧琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶などそれぞれ異なる形態で、もちろん、その音楽は独自の道を歩んできた。それら多岐にわたる琵琶楽を5枚のCD(初出時は7枚のLP)にまとめたのがこの企画だ。これを聴くと、奈良朝の頃に中国から伝わったと言われる琵琶という楽器が、長い歴史のなかで社会構造や風俗の変化に対応しながら広がってきたことを実感する。近年は日常の社会では忘れられた存在になりつつあるが、これを機会に琵琶楽が注目されることになってほしいところだ。ディスク5のラストに武満徹作曲の映画『切腹』のテーマ曲が収録されているなど、決して過去の遺物ではないわけで、そのあたりから聴いてみるのもいいかもしれない。
76年にLPで発表された『観世流 舞の囃子』の復刻CD化で、今回はチューニングにあたる「お調べ」から舞のカテゴリーの順列に再構成している。笛の一噌(いっそう)流、小鼓の幸(こう)流、大鼓の高安(たかやす)流、太鼓の金春(こんぱる)流という観世流の囃子部門、四流の往時の人間国宝たち全員の演奏を収録した歴史的な音源となっている。初めて舞に接する方にとって、舞う人にとってことに笛がメロディ的な目安になることなど、さまざまな発見があるだろう。労作と言うしかない解説冊子を読みながら聴き進んでいくと、舞っている様子が何となく見えてくる。その昔、武家の教養であったのが舞である。
発売元
日本伝統文化振興財団2006年7月に東京・紀尾井ホールで行なわれたライヴ“奄美しまうたのこころ”を収録。奄美しまうたの百年に一人の唄者とまで言われる武下の芸の神髄を堪能できる。低音域から高音へと歌われる過程でごく自然に裏声となっていく歌唱の妙味、三線の音色といい逸品だ。★
87年にLPで発売された『合奏曲集成』の復刻だ。ここでの合奏曲とは、3曲を基調にした管絃合奏の大きな組み合わせで、あらゆる和楽器を使っての大合奏、それにコーラスや独唱などが加わった交声曲などまでを指している。大正末から昭和31年にかけて宮城道雄が作曲した曲で構成されている。とにかく野心的で、当初その演奏は狼藉者と映る場面もあったろうと想像させる。箏曲に次々と狼藉者といわれて不思議でない変革者たちが登場する歴史的背景を、宮城の仕事に見ることになる。西欧音楽の様式を導入する過程で登場した和楽オーケストラのための楽曲である。なかでも箏とオーケストラによる「越天楽変奏曲」などが一度は聴いておきたい曲だ。昨今の和楽器演奏によるフュージョン的作品の原型がここにある。意外なほどコーラスや独唱などがフィーチャーされている曲に見られる作曲者・宮城の意図や思惑などを深読みできたりもして、これがなかなか面白い。
明治・大正期の古典小唄から現代の小唄までを、一人一曲という構成で収録したアルバム小唄は、戦後の昭和期に政財界人の間で全盛期を迎えたといわれ、庶民にとって短い歌で手頃な古くて新しい芸能でもあった。何度か聴いているうちに、歌詞の語呂や意味がしみ込んでくる。
エジソンが蓄音機を発明した当時、人々が真っ先にレコードに収めようとしたのはオペラのスターであった。3枚のCDにはSP黎明期のアコースティック録音からLP登場前夜の若きテバルディの瑞々しい歌声まで、イタリア・オペラの歴史に残る歌唱を収録。カルーゾ、テトラッツィーニ、ファーラーなど、伝説的名歌手の歌声が鮮やかに甦る。SP盤の針ノイズが巧みに除かれ、電気吹き込み以降のものは特に聴きやすい。なかんずく白眉はガッリ・クルチとデ・ルーカによる「椿姫」の二重唱。カルーゾのイタリア民謡も心に沁みる。
内藤孝敏によるノイズリダクション方式で届けられたSP盤からの復刻シリーズ。往年の名歌手たちによるイタリア・オペラ・アリア集だ。19世紀末から20世紀前半の歌唱スタイルを知る貴重な記録が詰まっている。
伸びやかな歌声が和みを感じさせ、意外とあっさり味の歌唱を聴かせる演歌の志摩幸子の全曲集ベスト。84年発表のデビュー曲「いわき絶唱」から全シングル曲と新曲「母さんの詩」までを収録。母へ感謝する新曲「母さんの詩」では、若々しく感じられる歌声を聴かせる。
第10回邦楽技能者オーディション合格者、女流義太夫三味線の鶴澤津賀花の記念CDがこれ。平実盛や後の木曽義仲など『平家物語』『源平盛衰記』に登場する人物が出てくる『源平布引滝』”が語られている。浄瑠璃の竹本駒之助による語りとの絶妙の間合いの三味線を聴かせる。