1998年4月発売
ニューヨークを拠点に活動している自作自演シンガーの6年ぶりのサード・アルバム。60年代風味のメロディックなフォーク・ロック・チューンが目立つ。ポップ・ソングの作り方を熟知した才人の最新カタログ。マルチ・ミュージシャンとしての能力も光る全14曲。
フランク・ザッパなどとの共演歴を持つ腕利きマルチ・プレイヤーの3年ぶりのライヴに続く4枚目。ポップなロックから実験的な曲、インストなど、どれも多彩なカラーと複雑な構成を持ったテクニカルな演奏だが、温もりを感じさせ親しみやすい。
代表曲とその曲のリミックス(「ピロー・トーク」を除く8曲)を収録した、興味深い構成のベスト盤(日本独自)。しかも、リミックス曲の大半が良い出来で、リミックスと言うよりもリメイクと言える曲が少なくない。“ファンならずとも買い”の1枚。★
ピーター・ゴールウェイを中心にしたセッションから生まれた71年のアルバム。ジョン・セバスチャンやポール・ハリスらが助演。ジャズやソウルの語法を巧みに使ったモダンなアレンジが玄人筋で評判になった。70年代後半の音楽シーンを予告した先駆的名盤。
実質的なソロ・デビュー盤『オハイオ・ノックス』に続く、72年発表のソロ・アルバム。前作同様、フィフス・アヴェニュー・バンドの音楽性を継承したもので、多様な要素を含むモダンなアコースティック・サウンドは元祖シティ・ミュージックと言えるかも。
国内盤がリリースされる前から、輸入盤で結構売れていたアルバム。テナー・サックスのニュー・フェイスのデビュー・アルバムだが、張り切りすぎて空回りしたりせず、懐の深い、堂に入ったプレイが印象的だ。音楽性の豊かさも感じさせ、今後の活躍が楽しみ。
この夏解散したリバプールのグループの、ライヴ・テイクや12インチ・バージョンで構成されたCD。ドアーズやヴェルヴェット・アンダーグラウンドに比較されることが多かったが、そういった先輩たちのカバーを中心に、霞みの中を疾走する演奏が個性的。
研ぎ澄まされたクリスタルにも似たタイトで緊張感溢れる音楽空間を構築するグループ、エコー&ザ・バニーメンがコロヴァ・レーベル以後にリリースした曲からセレクトした10曲に、ニュー・シングル「ダンシング・ホーシズ」を加えたベスト・オブ・ベスト。
ライヒのミニマリストとしての技の集大成であると同時に新たな方向への転換点ともなった大作の再録音。旧盤が息詰まるほど克明に仕掛けを聴かせていたのに対し、何か情緒的な息づかいのようなものが感じられるのは現在のライヒの関心の現れだろうか。
リンドベリは今年40歳になるフィンランドの作曲家。エネルギッシュな“若さ”に満ちた出世作「クラフト」は、前衛音楽の可能性と魅力を新たに開示した傑作。何より音色やモティーフが斬新。オリエンタリズムや懐古主義に靡かぬ硬派的作風に惚れ惚れする。
ジャズ、フォーク、クラシックといったジャンルを超えた活動で知られているサルマントの個展。ジャズ交響詩「スオミ」や「北の情景」を聴いていると、三枝成彰の作品と一脈通じるところがあるようにも。ジャンルを超えた聴衆に受け入れられそうなディスクだ。
フィンランドが育んだ作曲家ユッカ・リンコラ(1955〜)は文字通りジャンルを超えて活躍。といって、それぞれが薄味になることもない。得難い才能だ。ジャズのイディオムもこの上なく粋だが、長大な映画、バレエ音楽の幻想味、抒情、弾ける楽想に酔った。
マデトヤ(1887〜1947)は、フィンランドの作曲家。交響曲やオペラで才能を発揮した人だが、その作風はロマン派の流れ。男声合唱曲は、1908年ごろから晩年まで書き続けた、彼の思い入れの深いジャンル。北欧ならではの独特の透明感と広がりが美しい。
ジャズ・テイストのピアノ協奏曲が集められているが、グリモーの演奏は洗練された味わい。ラヴェルの第2楽章のつぶやくような演奏が特にいい。ジンマン指揮のボルティモア響はゴージャスで立派な演奏を繰り広げている(特にガーシュウィンで)。
中国人の両親のもと日本に生まれたアメリカ人ピアニスト、ヘレン・ホワン3枚目のCD。若手のなかでも飛びぬけて才能に恵まれた彼女が、マズアとの共演で、モーツァルトの晴れやかな曲想とメンデルスゾーンのロマン性を心ゆくまで描きだしている。
91年にマズアがニューヨークpoのボスになった時は、「この意外性のある組み合わせ、続くんかいな?」と思ったりもしたが、ひょっとするとひょっとするかも。ドイツ+アメリカのドメリカ的演奏なのに、お互いなぜか燃えている。なかなかの珍味だ。