2007年9月発売
ドイツ・グラモフォンでの3枚目のアルバムで、2枚目となるラフマニノフの協奏曲。表面的なテクニックを聴かすのでなく、ラフマニノフの持つ抒情性とロマンティシズムを丁寧に紡いでいる。
カラヤン晩年の録音で、この2曲の最後の録音となった。ドヴォルザークの民族主義的なロマンティシズムは希薄だが、シンフォニックな美しさは抜群だ。ウィーン・フィルの美質を十二分に引き出している。
室内楽的な緻密さと、小編成とはいえたっぷりとした響きを創りあげているところがカラヤン流。流れるようなメロディ・ラインと正確なリズム。ベルリン・フィルの技術の粋が結晶したような美しいモーツァルトが堪能できる。
簡潔にして豊潤、ベテランの熟練の味わいと精神の若々しい息吹とが渾然一体となった優れた演奏が楽しめる。5年に及んだ全集の中から有名曲2曲をカップリングして、初心者も楽しめる一枚に仕上がっている。
80歳を過ぎたゼルキンが、50歳前後だったアバドと組んで17曲ほど録音したシリーズの中から、短調の2曲を組み合わせたアルバム。重厚さと軽さ、深さと広さ。晩年のゼルキンが到達した至高の芸術が味わえる。
オーケストラを替えながら、すべてライヴ録音で成し遂げたマーラー交響曲全集からの1枚。ユダヤ人マーラーの屈折した内実を抉り出した、バーンスタインによる貴重な録音だ。
ポリーニ2度目の全集からの1枚。指揮者の年齢が若返り、ポリーニも円熟味を深め、両者による一分の隙もないような演奏が出来上がっている。ライヴとは思えない完成度の高さで、全体の流れも細部の彫琢も文句なしだ。
「悲愴」は、カラヤンの7度目で最後となった録音。ウィーン・フィルとは2度目の録音となり、この曲にまとわり付く文学臭と民族臭を一掃している。ウィーン・フィルを上手に統率し、シンフォニックな美しさを極めた一枚だ。
映像でも残されているクライバーのブラームスの第4番だが、本作はその映像より十数年前の録音。ブラームスの内声部の充実した響きをウィーン・フィルから導き出し、細部まで磨き上げた逸品だ。
ラヴェルによるオーケストラ編曲版と、オリジナルのピアノ版とを聴き比べられるアルバム。アバドがBPOを駆使して目くるめく世界を描き出し、ウゴルスキのピアノもまたダイナミックで雄弁な演奏を繰り広げている。
すでにカラヤンとベルリン・フィルとの関係がギクシャクしていた時期の録音だが、さすがはプロフェッショナル同士、完璧な演奏を成し遂げている。カラヤンの語り口の上手さ、物語の構築の見事さに圧倒される。
17歳のキーシンが晩年のカラヤンと共演したチャイコフスキーと、新しくBPOのシェフになったアバドとのプロコフィエフという興味深い組み合わせ。2人の名伯楽のもと、キーシンが伸び伸びと実力を発揮している。
鋭利さに満ちたポリーニのピアニズムが堪能できる一枚。中期から後期にかけてのベートーヴェンの傑作群を集めたアルバムで、ベートーヴェンの革新性と保守性、精密な構築性などが唖然とする完璧さで開示されている。
イギリスの古楽界を代表するピノックと、手兵イングリッシュ・コンサートによる楽しいバロックの名曲の数々。ピリオド楽器の長所を発揮させ、活き活きとしたリズムで瑞々しく蘇らせている。
協奏曲は、ピリス2度目の録音。円熟の度合いを増したピリスが、細部にまで細かな情感を込めて知的にコントロールした名演だ。幻想曲や子守歌も、濃やかな表情が息づいた瑞々しいショパンを聴かせている。
ショパンのもっとも抒情的で甘美な作品集で、ピリスは全曲を録音しているが、その中から人気の高い作品を中心にセレクトしたアルバム。ピリスの親密な語らいが絶妙で、各曲の性格の描き分けも実に見事だ。
別々に発売されていたバラードとスケルツォを一緒にした、ファンにはありがたい組み合わせのアルバム。正確無比なポリーニのテクニックの上に、ショパンの感情のひとつひとつの襞(ひだ)を捉えた驚異的な演奏だ。
ムター、レヴァイン、ウィーン・フィルという豪華な小品集。ムターは、感情の赴くままに高度なテクニックを駆使して豊かなファンタジーを醸し出している。そうしたムターを引き立てるオーケストラも見事だ。