2010年10月発売
針ノイズを電気的に除去したSP復刻のシリーズ。音の輪郭が幾分ぼやけるのは致し方ないが、聴きやすさという長所は捨て難い。骨董的なメルバの歌唱に始まる第5巻。オネーギン、レーマン、メルキオーの歌唱に耳を奪われる。白眉は若きフェリアーによるメンデルスゾーン。豊かに響くアルトが胸を打つ。第6巻ではゲルハルトの「野に独りいて」に注目したい。このシリーズに収録された彼女の歌唱中最良の録音だ。第7巻ではフランス語で歌われたパンゼラの粋な「ドン・ジョヴァンニ」とベルガーの完全無欠な「夜の女王のアリア」が一頭地を抜く。オーストリア歌曲集の2枚も名唱ぞろい。8種の「魔王」(第8巻)ではオペラ歌手ガトスキならではの劇的表現に感銘を受ける。スレザクの「菩提樹」(第9巻)は未来永劫聴き継がれるべき逸品であり、イーヴォギンの「ウィーンの森の物語」(同)は美声の極みと言って良い。
往年の名歌手たちのSP盤からの復刻シリーズの第6巻。ベートーヴェン、メンデルスゾーン、シューマン、ブラームス、シュトラウスらを収録する。歌唱の変遷などがうかがえて、声楽ファンには興味深いアルバムだろう。
往年の名歌手たちのSP盤からの復刻シリーズの第7巻。モーツァルト、J.シュトラウスのオペラ、オペレッタのアリア集である。現在とは発声、表現法などが大分違っている人もおり、声楽史の資料としても貴重だ。
内藤孝敏によるノイズリダクション方式によるSP盤からの復刻シリーズ第8巻。ここでは、シューベルト歌曲集となっている。なかでも「魔王」は8人の歌手たちの競演が聴け、これだけでも非常に面白い。
往年の名歌手たちのSP盤からの復刻シリーズの第9巻。内藤孝敏によるノイズリダクション方式による復刻だ。シューベルト、J.シュトラウスに加え、シベリウスらも収録している。個性豊かな歌手たちの競演が楽しめる。
アンビエント・テクノの牙城WARPへと移籍してのアルバムは、当然のように全曲インスト。彼自身が言わば“元祖”であるアンビエント系から、アグレッシヴなギターが鳴りわたるロック的な演奏まで、“イーノらしさ”の引き出しを全面公開したかのよう。本人いわく、“音のみの映画”だそうだ。
同デュオのデビュー作。「夕暮れの樹」「日イズル処」「Ladybug」が黒石、他が長月作。ジャズ的表現はあまり聴かれず、主題/旋律の奥深い表現に、より重きを置いている。心の乾きを癒す牧歌的な「幸草の系譜」や舞い散る桜のような「雪の舞」……日差しや雨、風など、自然の営みを置き換えるように。ホール録音が楽器の生の脈動を増幅。優雅。
日本制作のアルバムとあって、日本人好みのピアニストによるオリジナルが9曲と自作の2曲で構成されたデビュー作。バワーズはジュリアード音楽院のジャズ科に在籍中で、このアルバムは2年前の2年生のときの録音。すでに完成されたタッチが眩しい。