2010年9月発売
音の細部に過度に入れ込まず、情の息づかいに率直にシンクロしてウタと響きを気持ちよく起伏させていく。巧みさや新奇さよりも、うーんシューマンいいね、と音楽に浸らせる好演。懐かしいようだが、シュトラウス2楽章の密やかさなど、清新さにも事欠かない。
派手なウケ狙いなどせず、あくまで真摯・誠実に演奏をする。渋いといえば渋いスタンスではある。ではマジメなだけが取り柄の退屈な演奏かと言われれば、そうではない。職人的な精密さを積み重ねた末に、自然な音楽が湧き上がる。それこそが非凡なのだ。
500校もの学校ライヴを展開してきたシンガー・ソングライター、大野靖之のセカンド・シングル。青春ならではの痛みを伴ったラブ・ソングを率直に、叫ぶように歌っている。同世代が共鳴する言葉感とギターの響きとで、明日の自分を信じてみたくなる、そんな救いにも似た優しさをも感じさせる歌声だ。
63年に発売された7枚組LPの、初のCD復刻盤。一般には一種類と受け取られがちな琵琶だが、実は雅楽の琵琶、平家琵琶、盲僧琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶などそれぞれ異なる形態で、もちろん、その音楽は独自の道を歩んできた。それら多岐にわたる琵琶楽を5枚のCD(初出時は7枚のLP)にまとめたのがこの企画だ。これを聴くと、奈良朝の頃に中国から伝わったと言われる琵琶という楽器が、長い歴史のなかで社会構造や風俗の変化に対応しながら広がってきたことを実感する。近年は日常の社会では忘れられた存在になりつつあるが、これを機会に琵琶楽が注目されることになってほしいところだ。ディスク5のラストに武満徹作曲の映画『切腹』のテーマ曲が収録されているなど、決して過去の遺物ではないわけで、そのあたりから聴いてみるのもいいかもしれない。
76年にLPで発表された『観世流 舞の囃子』の復刻CD化で、今回はチューニングにあたる「お調べ」から舞のカテゴリーの順列に再構成している。笛の一噌(いっそう)流、小鼓の幸(こう)流、大鼓の高安(たかやす)流、太鼓の金春(こんぱる)流という観世流の囃子部門、四流の往時の人間国宝たち全員の演奏を収録した歴史的な音源となっている。初めて舞に接する方にとって、舞う人にとってことに笛がメロディ的な目安になることなど、さまざまな発見があるだろう。労作と言うしかない解説冊子を読みながら聴き進んでいくと、舞っている様子が何となく見えてくる。その昔、武家の教養であったのが舞である。
元々は日本のインタープレイ・レーベルが制作した作品。若い頃からモダンなサックス・プレイで定評のあったマーシュのサウンドが、ピアノとのデュオというフォーマットでより情感豊かに表現されている貴重録音。
ウエスト・コースト・ジャズの一端を担い、息の長い活躍が目立つ二人の共演を収めたアルバム。ベテランといっていい時期のデュオで、お互いを知りつくしたような親密なインタープレイが心地よい。選曲はなかなか玄人好みだ。
日本のインタープレイから発表されたスウェーデンとオランドのプレイヤーのデュオ作。ロルフは米国での活動歴も長くストレートな演奏もできるが、本作ではトランペットとピアノだけの自由度の高いプレイが聴ける。
90年に西海岸のハリウッドで録音されたが、本国では一度もリリースされることなく、日本で20年ぶりに再発された作品である。スタンダードを中心とした全9曲、非常にスウィンギィで寛いだ雰囲気の演奏を楽しむ。彼のプレイではスローでもアップ・テンポでもリラクゼーションを満喫できるのがとても良い。
元ヴェイダーのギタリストのマウザーが、同じポーランドの女性シンガーと組んだバンドの2年ぶりのセカンド。多少打ち込みも使いつつアレンジはメタルだが、メロディアスでポップな曲と英語の詞を歌うコケティッシュな歌声はシューゲイザーにも近く、相性抜群だ。テクノ調の追加曲「ウィスパーズ」もハマっている。