2016年3月9日発売
マーラー交響曲全集の最後の録音。第1番にしてすでに独創的な曲想・描法を駆使した精緻な音楽は、きわめてロマンティックな様相を呈しているが、ショルティは一切の虚飾を廃した演奏に徹している。
制作・出演
イヴォンヌ・ミントン / グレン・エリン児童合唱団 / シカゴ交響女声合唱団 / シカゴ交響楽団 / シカゴ響 / ショルティ / ジェームズ・ウィンフィールド / ヘルガ・デルネシュ / マーラー新古典主義演奏の権化のようなショルティによる面目躍如とした演奏。本作には世紀末も、耽美主義も、東洋的諦観もない。あるのはスコアに書かれた音符の響きだけだが、この響かせ方は尋常の美しさではない。
ショルティは、チャイコフスキーに抱きがちなロマンティックな感傷には浸らない。しかし、作品そのものが持っている甘さやダイナミズム、柔と剛のバランスなど、多彩な表情は完璧に表現し尽くしている。
ショルティによる3度目の録音で、シカゴ響とは2度目の録音となる。練達の指揮ぶりといつもながらシカゴ響の素晴らしい合奏力に敬服。ショルティに柔軟性が出てきて、美しくもダイナミックな音楽が展開されている。
曲の感傷や情緒といった要素をそぎ落として、純粋な音響美を追及したショルティらしい演奏。豪快でダイナミックな中に、繊細な響きやピアニシモの磨かれた表情なども垣間見られる。
ショルティの優れたオーケストラ・コントロールが活きた演奏。ダイナミックで筋肉質な作品のイメージを一新、静謐で黙想的な演奏に到達している。キリ・テ・カナワ、ヴァイクルのソリストたちも素晴らしい。
ショルティ×シカゴ響による2度ある録音のうちの最初のもの。相性の良いハイドンだけに、ショルティの宗教作品の中でも代表的なもののひとつだ。オーケストラと合唱のバランスも良く、ソリストも充実している。
ロイヤル・オペラの音楽監督に就任する1年前の録音を中心に収録。ショルティにしては珍しいレパートリーだ。快速調の「パリの喜び」やロイヤル・オペラのオーケストラを掌握しきったようなグノーなど、興味深い一枚だ。
コダーイらに学んだドラティのもっとも得意とするバルトークの代表的な録音。強いアクセントとどっしりとした構成、活き活きとしたリズムは、ロシア・バレエ団で鍛えられた賜物だ。
最高の音で楽しむために!
ハイドンの交響曲全集と同様、ドラティが遺した最重要の録音。有名曲はもちろん、全集でなければ聴けないような作品にもドラティの美質が良く表われている。オーケストラも充実しており、質の高い全集だ。
制作・出演
アドリアーネ・ケイロス / エリン・ウォール / カルヴ・アウレリウス少年合唱団 / トワイラ・ロビンソン / ピエール・ブーレーズ / ベルリン国立歌劇場合唱団 / ベルリン国立歌劇場管弦楽団 / ベルリン放送合唱団 / マーラー13年をかけた全集の完結編。感情に溺れずスコアを明晰に提示するという態度(ドライとは違う)はいかにもブーレーズらしく、これだけの超大作にもかかわらず、次々と現れる作曲家のアイディアを彫琢して余すところがない。ハーモニウムなどの特殊楽器の扱いも丁寧。★
ヘンデルはリヒターのごく初期の録音、チェンバロ作品はリヒターとしては比較的珍しいものだ。バッハはすでに定評のある演奏で、ゆるぎないバッハ像を顕示した、いまだ色褪せない価値を持っている。
バッハの次男であるエマヌエル・バッハの作品は、父親とは違った先進性と時代性を備えており、交響曲や協奏曲、ソナタ形式の確立に重要な役割を果たしている。リヒターは活き活きとダイナミックな演奏を聴かせてくれる。
リヒターがベルリン・フィルと残したハイドン。まさに虚飾を排した古典的な均整美をたたえた演奏で、バッハでみせるリヒターとは違う一面と相通ずる面が同居している。興味の尽きない一枚だ。