著者 : イーディス・ウォートン
アメリカを代表する女性作家イーディス・ウォートンによる、 すべての「幽霊を感じる人(ゴースト・フィーラー)」のための、珠玉の幽霊物語集。 静謐で優美な、そして恐怖を湛えた極上の世界。 生霊(いきりょう)や幽霊がこの世にいなくなると、何を失うことになるのか、つい考えてみたくもなります。しかし本書での私の目的は、むしろ幽霊を眼に見えるようにしてくれた人びとを称えることなのです。というのは、幽霊が生き残れる唯一のチャンスは、現実にせよ、想像にせよ、──おそらくは想像のほうが好ましいのですが──幽霊に出会ったひとたちの話のなかに存在すること、それを幽霊に忘れさせてはいけません。幽霊にとっては、ぼんやりと「体験される」よりは、いきいきと想像されるほうがありがたいのです。幽霊が影のようにぼんやりしていても、ちゃんと透けて見えるように表現することが、いかに困難なことか、幽霊だけが分かっています。--「付『ゴースト』序文」より 【内容目次】 カーフォル 祈りの公爵夫人 ジョーンズ氏 小間使いを呼ぶベル 柘榴の種 ホルバインにならって 万霊節 付『ゴースト』序文 訳者解説 カーフォル 祈りの公爵夫人 ジョーンズ氏 小間使いを呼ぶベル 柘榴の種 ホルバインにならって 万霊節 付『ゴースト』序文 訳者解説
20世紀初頭のニューヨーク。裕福な家庭で育った美貌の娘リリー・バートは、父の破産後もなお、華やかな社交界で生き抜くために、良縁を求めて悪戦苦闘する。耳に痛いことも言ってくれる友人の男性セルデンに心惹かれながらも、彼との結婚は考えられない。上流階級にひそむ悪意と嫉妬、運命のいたずらによって、リリーの人生は少しずつ、転落へと向かってゆく。『無垢の時代』『イーサン・フロム』など近年新訳の出版が相次いでいるイーディス・ウォートンの出世作、待望の新訳。 解説:小林久美子(アメリカ文学者、京都大学准教授) 装釘:宗利淳一
欲しいのは、変化、休息、人生。 女性初のピューリッツァー賞作家であり、19世紀末から20世紀にかけてのアメリカ文学史上に名高い、〈短編の名手〉ウォートンによる、本邦初訳を含む待望の作品集。 予想もつかない展開と結末。 豊かな教養と想像力が生んだ、極上の14作。 【目次】 満ち足りた人生 夜の勝利 鏡 ビロードの耳当て 一瓶のペリエ 眼 肖像画 ミス・メアリ・パスク ヴェネツィアの夜 旅 あとになって 動く指 惑わされて 閉ざされたドア 〈幼子らしさの谷〉と、その他の寓意画 訳者あとがき 満ち足りた人生 夜の勝利 鏡 ビロードの耳当て 一瓶のペリエ 眼 肖像画 ミス・メアリ・パスク ヴェネツィアの夜 旅 あとになって 動く指 惑わされて 閉ざされたドア 〈幼子らしさの谷〉と、その他の寓意画 訳者あとがき
『無垢の時代』の作家の別の顔、待望の新訳 「ものいわぬ白い雪原のように寡黙なイーサン・フロム。その“雪”の下には、『嵐が丘』のヒースクリフを思わせる孤独な魂の死闘の物語があった」--小川公代氏(英文学者) マサチューセッツ州スタークフィールドで冬を過ごすことになった語り手の「私」は、足をひきずった寡黙な男をたびたび見かけていた。聞くに、イーサン・フロムなるこの土地の男で、かつてひどい「激突」を起こして以来、足が不自由になったのだという。思いがけず「私」はフロムに馬橇で駅まで毎日送迎してもらうことになるが、ある晩、ふたりは帰り道に吹雪に巻き込まれ、フロムは途上にある自宅に「私」を招き入れる。そこで「私」が目にしたものとはーー。寒村の孤独、親の介護、挫かれた学業、妻の病……厳冬に生を閉ざされた主人公フロムを襲う苦難、そんな日々に射し込んだささやかな幸福、その果てに待ち受ける悲劇を精緻な技巧で描くアメリカ文学の古典。
「チャリティ(慈悲)」と名付けられた、複雑な出自をもつ若い娘のひと夏の恋──ニューヨークの上流社会を描いた『歓楽の家』、『無垢の時代』で知られ、女性初のピューリッツァー賞を受賞したウォートン中期の名作、本邦初訳 夏 訳注 イーディス・ウォートンと脱出を夢見る異端者たちーー『夏』を中心に 訳者あとがき