著者 : ケイ・ソープ
大邸宅の一室と思われる豪華な部屋でカレンは目覚めた。ハンサムな浅黒い肌の男性が彼女の手を握り、こちらを見つめている。「あ、あなたは…?」カレンがおずおずと尋ねると、彼は一瞬言葉を失ってから言った。「僕はきみの夫、ルイスだ」このすてきな男性が…わたしの夫ですって?事故に遭い、記憶を失ったカレンには何も思い出せなかった。自分が世界的な大富豪の妻であることも。ルイスが言葉を継いだ。「きみは、別の男と駆け落ちするところだったんだ」そんな…嘘よ。わたしが浮気をしていたなんて。何も思い出せなくても、彼にはこんなに強く惹かれるのに。
大富豪リーアムの身勝手な再会のキスを受けた瞬間、忘れえぬ情熱の疼きが、リーガンの体を突き抜けた。7年前、勤務先の重役だった彼に初めての恋をした。だが片想いが実り、愛を交わしたわずか数週間後、ぼろ布のように捨てられた。野心家で非情な彼は、リーガンとの関係を楽しむだけ楽しんだあと、資産家の令嬢と結婚してしまったのだ。以来、秘密を隠し続けてきた。私には4歳になる娘がー彼の娘がいることを。まさかそれをリーアムに知られてしまったの?
わずか1週間で、大企業の御曹司リーと電撃結婚したシャロン。夢見心地の結婚式の直後、シャロンは残酷な事実を知らされる。身寄りのないシャロンなら面倒がないと、リーが妥協したのだと。式場で流れていた心ない噂ーそれは手酷い裏切りだった。彼のプレイボーイぶりを見かねた父親から、すぐ結婚しなければ、会社の後継者にしないと最後通牒をつきつけられたというのだ。凍りついたシャロンは、ハネムーン先のスイスでの新婚初夜に、リーを拒み、知らぬ間に悲鳴のような声をあげていた。「あなたは、お金のために私と結婚したのよ」
18歳年上の銀行家マークとダナが結婚して、2週間。冷静で思慮深く、大人の魅力をたたえた彼にひと目で心奪われ、周囲に祝福されて花嫁となった。でも、幸せの絶頂にいるはずのダナは無垢なままでいることに不満を募らせていた。結婚初夜、夫は17歳の妻とはベッドを共にしないと宣言したきり、ダナに指一本触れようとしない。わたしは身も心も彼と結ばれたいのに。どころが、マークがつい口にした言葉を聞いて、ダナは愕然とする。“脅迫”-この結婚はダナの父親に脅された結果にすぎない、と。打ちのめされたダナが、優しく慰めてくれる夫の弟に心を許すと、それに気づくや、マークは怒りを露わにし、妻を我が物にしようと…。
12歳のときライザは両親を亡くし、弟と二人で伯母に育てられた。だがその伯母も喪い、ライザは大学を諦めて身を粉にして働くが、弟はいつのまにか悪い仲間に入って、悪事に手を染めてしまう。そんな矢先に知り合った、完璧な美貌を持つ魅惑のブラッドリー。稀代の大富豪は、ライザに驚くべき提案をする。弟の借金を肩代わりする代わりに、今すぐ入籍してほしいと。奇妙に思いながら承知したライザだったが、すぐに理由を知った。結婚しなければ、莫大な財産を相続できないのだ。そればかりか彼は断言した。「もちろん、君に愛はない」
2年前、レオニーはヴィダルのプロポーズを断った。ヴィダル・パレッラ・ドス・サントスー貴族の末裔で、多くの女性と浮き名を流す色男、ポルトガルの大物実業家だ。彼は、会ったその日に体を求めてきた。レオニーが拒絶すると、今度は妻になってほしいと甘い言葉を囁いた、不埓な男だ。だが状況は一変した。父親がヴィダルの会社の金を横領したのだ。レオニーは父の罪を償うため、我が身を差しだす覚悟で、ヴィダルに面会を申しこんだ。彼が求めるものは2年前と同じ、相も変わらぬ、レオニーの奉仕だと知りながら。
大企業に重役の秘書として派遣されたトリシアは、オフィスに入った瞬間、息をのんだ。リー・スミスー3年前、ふたりは休暇中の豪華客船で、熱く燃え上がる3日間を過ごした。だが彼は、トリシアをーエマという偽名を使い、自由奔放なブロンド娘を演じていた彼女のことを、覚えてはいなかった。短い恋が胸に深い傷を残して終わりを告げて以来、トリシアは二度と恋などしないと心に誓い、仕事に打ち込んできた。それなのに、まさかこんなところで彼とまた会うなんて!リーは淡々とトリシアに翌週の出張旅行への同行を命じてきたが、やがて彼女が何者かに気づくと…。
リアーンは、4歳になる息子ジョナサンをひとりで育ててきた。公営アパートに住み、パートタイムの事務の仕事をしながら。今、リアーンは固い決意を胸に息子を連れてレブドン荘園をめざす。荘園を相続した著名な実業家ブリン・ソーンリイに会うためだ。観光客にまざって屋敷を見学している途中、こっそり“プライベート”と標示されたドアを抜けて奥に進む。5年ぶりに会ったブリンはリアーンのことを覚えておらず、「どこで会ったかな?」といぶかしそうな表情を浮かべた。「5年前、マンチェスターのパーティーで。あの夜私、妊娠して」自分の息子の存在を知って、ブリンは驚愕の表情を浮かべた。
ジュリアは目覚めると病院にいた。事故に遭い昏睡していたのだ。ベッドの傍らには、見覚えのないハンサムな男性が立っている。彼はロスと名乗り、君の夫だと告げる。ようやくわかったのは、彼と出会って恋に落ち、結婚したこの3カ月の記憶を失ったこと。結婚するほど深く愛していたはずの人を、なぜ思い出せないの?記憶から消したいほどつらい出来事でもあったのかしら…。肝心なことを何も語らないロスに、ジュリアは苦悩を深めていく。ある日、偶然話に出たルーという女性の名に動揺する彼を見て、彼女は心を決めた。記憶も人生も、すべてかならず取り戻すわ。