著者 : ベティ・ニールズ
病院で実習中の看護学生エミリーは、下宿で倹約生活をしながら、車椅子で一人暮らしをする父のために手術費を貯金している。冷たい雨の朝、夜勤明けでくたくたに疲れたエミリーがうつむきぎみに歩いていたとき、長身の男性と正面衝突してしまった。相手ははじめこそ不機嫌な声で文句を言ったものの、散乱したものを拾い集め、親切にも彼女を下宿まで送ってくれた。それが後日、エミリーが転属することになった科のオランダ人名医、セバスチャンだとわかり、彼女は驚きとともに胸の高鳴りを覚えた。しかも、彼はエミリーの父の手術を無償で行うかわりに、病後の妹につき添ってほしいと、エミリーをオランダへ連れていき…。
花屋で働くユーレィリアは、家族の生活を支える大黒柱だ。ある日、長身でとても趣味のいい、けれどひどく不機嫌な男性が店に現れ、彼の婚約者に花束を届けるよう注文した。花を贈るのは喧嘩の謝罪らしい。でも、うまくいくかしら?案の定、届けた花束を彼の婚約者はユーレィリアに叩き返した。同じことが何度かあり、ついに婚約者は高価な蘭を踏みにじった。その女性が腹立ちまぎれに、花屋の店主にあらぬことを告げ口し、ユーレィリアは解雇されてしまった。わびしい雨のなか、必死で職探しをするユーレィリアを、そっと見ていたのは、花を注文したヴァン・リンセンだった。
父の仕事を手伝いながら、のどかで単調な毎日を送るビアトリス。ある日突然、父が心臓発作で倒れて動転するが、幸い、近くにいた医師オリバーのおかげで一命をとりとめた。オリバーとは先日、日の出を見にのぼった丘で偶然出逢い、長身で感じのいい彼が著名な医師だということを、のちに知った。父の入院から留守宅のことまで世話をしてくれるオリバーに、彼女はいつしか特別な気持ちを抱くようになっていく。そして、元ボーイフレンドからの迷惑行為について相談すると、オリバーは親切に、ぼくと婚約したふりをすればいいと提案してくれた。でも切ない…だって、彼はもうすぐ別の誰かと結婚してしまうのだから。
心優しいけれどとても引っ込み思案なルーシーは、華やかで充実した生活を送る姉と妹に挟まれ、目立たぬ存在の娘だ。児童養護施設での仕事に生きがいを感じてはいるものの、母には、この子は結婚できないかもしれないと悲観されていた。そんなある日、ルーシーは児童を連れていった病院で、笑顔のすてきなドクター・サーロウに一目で恋におちてしまう。背が高く、女性なら誰もが振り返らずにはいられないほど整った顔立ち。いつもは控えめなルーシーも、このときばかりは一大決心をしたーどんなことをしても、私は彼と結婚したい!けれども、恋に慣れないルーシーのがんばりは空回りするばかりで…。
夜勤の看護師ルイーズが昼夜逆の生活をするのには、理由があった。2年前に父を追うようにして母が亡くなってから、弟や妹たちを養うために、楽しみも忘れて働いているからだ。それがある日突然、大家から立ち退きを求められ、やむなく引っ越した先で、驚きの事実が判明するールイーズが長年にわたって尊敬してきたとびきりハンサムな顧問医師、ドクター・ファン・デル・リンデンが近くに住んでいるというのだ。彼はルイーズたちに何くれとなく親切にしてくれるが、美しい妹のほうを気に入っている様子で、ルイーズは内心落胆した。そんな気持ちの反動か、いつしかドクターを避けるようになって…。
ドクター・グレンフェルの下で働く看護師のユージニア。外科医長の彼とはもう3年も一緒だというのに、いまだにお互い他人行儀でよそよそしい態度のままだ。長身で悠然としていて、誰からも尊敬されるドクターが相手では、ユージニアが緊張してしまうのは無理もなかった。それでもふとした拍子に、こちらを見ている彼と目が合うと、なぜかユージニアの頬はぽっと赤く染まるのだった。そんなある日、彼女はグレンフェルから突然、驚きの指名を受ける。「海外に出張する予定が入ったので、君を連れていくことにした」なぜ私を?思わず湧いた恋の期待をかき消すユージニアだったが…。
冬のさなか、病床にあったメグたち三姉妹の母親が亡くなった。家を売って、お金は姉妹で分けましょうという長女の提案に、ロンドンで華やかに暮らす末の妹も大賛成。家を守り、母の看病に明け暮れた次女のメグは気が重かったけれど、自己主張が苦手で、ひと言も反論できないままだった。ところがいざ売りに出してみると、なかなか買い手がつかない。誰もこの家を買わないかもしれないわーそんな期待が芽生え始めた時、長身でハンサムな医師ラルフが現れた。魅力的な彼に思わず胸をときめかせるメグだったが、彼は母のために家を探していると言って、彼女に目もくれず…。
年金暮らしの両親のため、少しでも家計の助けになればと、診療所の受付係として働き始めたマチルダ。雇主のドクター・ラヴェルは魅力的な男性だったが、彼女は思った。母にさえ不器量と言われる私では彼を惹きつけられない。だから、この想いは隠そう、と。案の定、ドクターは地味な受付係などまるで見えない様子で…(『片思いの日々』)。ローレンは自らの運転中に事故で愛娘を失って以来、心が塞ぎ、すれ違いから会社社長の夫ザックと別居。でも、まだ彼を愛していた。心から。本当の別れを考えては切なさに胸を締めつけられるローレンだったが、ある日、突然弁護士に呼ばれて事務所に赴くと、ザックと鉢合わせした。まさか、とうとう彼は離婚を決意したの…?(『星降る夜の奇跡』)。故郷を離れてシカゴで孤独に暮らすクリスティのもとに、匿名で薔薇の花束とメッセージが届いた。ストーカーの影におびえていた彼女は警察に通報するが、駆けつけた刑事の姿を見て、思わず目を疑った。なんとそこには、かつて彼女が初めて恋し、破れた相手スコットが、すっかりたくましい大人の男性となって立っていたのだ!(『危険な薔薇』)。新たな人生をつかむシンデレラたちの感動ロマンス!
高校を卒業後、経済的な理由で大学進学をあきらめたチャリティは、速記とタイプを習い、今はロンドン市内の病院で秘書を務めている。彼女の収入をあてにする家族と暮らす平凡な日々の中、内科医長のワイリーライアン教授のことが、心の片隅で気になっていた。院内の事情通たちも、彼の私生活についてはほとんど知らない。住まいや、結婚しているかどうかさえ。でも、チャリティは知っていた。以前、教授に手紙のタイプを頼まれた際、彼がまだ独身とわかったが、それを誰にも話さず、自分の心の中だけにとどめておいたのだ。そんなある日、チャリティは教授に引き抜かれ、彼の診療所の秘書となる。舞い上がったのもつかのま、彼が近々婚約するという噂を耳にし…。
2年前に母を亡くし、横暴な兄夫婦と暮らし始めたキャサリン。以来ずっと、朝早くから子供たちの世話をし、食事を作り、掃除に追われ…使用人のようにこき使われていた。けれど、そんなキャサリンの灰色の日々に、光が差す。まだ外が薄暗い夜明け前、路上に捨てられていたという赤ん坊を抱いた、容姿端麗で高名な医師のジェーソンが家の扉を叩いたのだ。キャサリンは彼が赤ん坊の手当てをするのを手伝い、病院へつき添った。そして、キャサリンの恵まれない境遇に同情したジェーソンが、住みこみの仕事を紹介してくれたことで、彼女の恋は走りだした。なんの取り柄もない平凡な私と彼では、つり合うはずもないのに。
病院で栄養士助手として働くシアドシアは、屋根裏部屋で愛猫と暮らしている。クリスマスも、唯一の身寄りである大おばと質素に祝うしかない。ある日、憂鬱な雑用をきっかけにハンサムなベンディンク教授と知り合った。彼は病院の重役で雲の上の人だ。かなわぬ恋と知りつつ、いつしか彼女は教授と過ごすイブを夢見ていた…(『聖夜の訪問者』)。クリスマスを前に、息子ジェイムズを連れて生家に戻ってきたベス。そこで思いがけず、かつて憧れていたカールと再会する。束の間の愛を分かち合ったあと、彼は私を捨て、異国の令嬢と婚約したはずなのに…なんて皮肉な巡り合わせ。彼女は運命の悪戯を呪い、心から神に祈った。ジェイムズが、彼の子だと悟られませんように(『恋人はツリーとともに』)。寒風の吹きつけるなか、マリアンは赤子を抱え、やっとのことで亡き夫の生まれ故郷にたどり着いた。ここへ来たのは、臨終の際に夫と交わした、この子を夫の養父ヘイウッドに託すという約束を果たすため。だが、ヘイウッドには冷酷な男という悪い噂があった。マリアンは心配になり、家政婦として雇ってほしいと申し出るが…(『旅路の果てに』)。世界に愛され惜しまれる三作家が遺した、英国のクリスマスを綴ったロマンス短篇集。
姉夫婦の旅行中、カッサンドラは甥と姪を世話することになった。子供たちはすぐになついてくれたが、ひとつ気になるのは、何かにつけて彼らが口にする、裏山の山小屋に住む“人食い鬼”の話だ。興味を引かれてそこへ様子を見に行ったカッサンドラは、目の悪い、ひどく無愛想な男性に冷たくあしらわれる。でも黒眼鏡をかけた彼は、鬼にしてはずいぶんハンサムだった。ベネディクトと名乗るその長身のオランダ人男性は、外科医の仕事に復帰するため、ここで視力の回復を待っているらしい。なぜか放っておけず、カッサンドラは彼の目となって読み物を読み、ケーキを焼いては彼を訪ねたーそれが、恋であることにも気づかずに。
新生児室の看護師ハナは、献身的にある赤ん坊を看病している。英国旅行中に事故に遭ったオランダ人女性が産んだ未熟児だ。順調に母子が回復し始めたころ、オランダから見舞い客が訪れた。赤ちゃんの母親が心酔する名医の“ファレンテインおじさま”だわ。おじさまという呼び名から想像していたよりずいぶん若々しく、人目を引く端整な顔立ちに、ハナは思わず心を奪われた。でも、彼の態度は冷淡で、私のことなんて目に入らないみたい…。もう会うことはないのだから、とハナは胸の痛みをやり過ごした。ところが後日、そのフィレンテインが、赤ん坊の看護のためにハナをオランダへ連れていく手はずを整えていることがわかりー
牧師の父と古風な母に育てられたレティシアは、初めての恋に破れて以来、男性には心を開けなくなっていた。そんなときに出会ったのが、知人宅に滞在しているヤソンだった。35歳のオランダ人医師はとても背が高く、ハンサムで、警戒心をあらわにするレティシアに優しく言った。「いつの日か、きみは誰かを好きになる。そしてその誰かは、きみが世界でいちばんきれいだと気づくんだ」事情を知る彼の、なぐさめの言葉でしかないことはわかっていても、レティシアはしだいにヤソンに惹かれていくのを感じた。夏の恋のはじまりーそれは、眠れない夜のはじまりでもあった。
夜勤の日、看護師のジョージーナが交通事故に遭った子どもたちを手当てしていたところへ、背の高い見知らぬ男性が現れた。父親だろうと思って接していたが、じつはオランダの高名な医師で、子どもたちの後見人のユリウスだということがわかる。勤務を終えて眠りに就く前、彼女はユリウスのことを思い出した。すてきな人にぴったりの名前ね。口元もとてもやさしげだった…。その後も、気づくと彼のことを考えてしまうジョージーナだったが、ただの看護師が名医に恋するなんてと、慌てて想いを打ち消した。ところが後日、彼女は憧れのユリウスから思わぬ申し出を受ける。「住み込みの看護を頼みたいので、君を借りることはできないか?」
家族旅行の帰りに通ったオランダで、セーラの継父の運転する車が排水溝に落ち、両親が入院することに。ほぼ無傷だが泥だらけのみっともない姿で待合室にいたセーラは、担当医のリトリクを見て息をのんだ。なんてハンサムな人…。すると驚くことに、物憂げな瞳の彼が言った。「お金も服もないなら、僕の家にいらっしゃい」(『プロポーズは慎重に』)。「僕と婚約してほしい」長年の親友で医師のマークから突然頼まれ、ホリーの心臓はどきんとした。同僚の女性に迫られて困っているようだけれど、婚約者の“ふり”なんてできるわけがない。これまで知らず知らず心の奥に閉じ込めてきたマークへの想いが頭をもたげてしまうから。しかし、ノーとも言えず、引き受けることに…(『永遠の一秒』)。ある嵐の晩、ジャッキーの家に、別居中の夫で医師のネイトが現れた。今や実業家の顔も持つ億万長者だが、車の故障で大雨の中を歩いてきたため高熱を出していた。やむなく家に入れ、看病することにしたジャッキーは、彼の美しい寝顔に見とれた。しかし、目を覚ました彼が要求したのは、ビジネスのための期間限定の復縁でー(『億万長者の忘れもの』)。
ロンドンの病院で主任看護師を務めるマギーは、恋に奥手な24歳。あるとき、オランダから著名な専門医パウルが講演に訪れた。長身で鷲のような風格漂う30代半ばの彼に、看護師たちは色めき立ち、遅れて講堂に入ったマギーもまた、壇上の彼と目が合い、強く惹かれる。講演のあと、主任室に戻ったマギーを追うように現れたパウルに、「僕のことを覚えておいてほしい」と言われ、唇を奪われた。それからというもの、マギーは気づけばパウルのことを考えていたが、すでに帰国したであろう彼とどうなるわけもなく…。そんなとき、マギーが非番の日に書かれた看護ノートを目にし、驚いた。なんと、パウルの母親が病に倒れ、この病院に運び込まれたというのだ!
有能で心やさしい看護師エスメラルダは、男性に対して奥手。というのも、幼いころポニーに踏まれて足が不自由になり、自分に自信が持てなくなってしまったことが原因だった。そんなある日、オランダから形成外科医のバムストラ医師がやってきた。一分の隙もない服装のハンサムな彼は、エスメラルダの足を診るなり、自分なら治せると断言した。これまであきらめていたけれど、本当はみんなみたいに踊りたいし、優雅に歩けるようになりたい。バムストラ医師を信じて、オランダで受けた手術は無事成功する。その後も親切にされ、エスメラルダは彼に好意を抱くようになるが、私生活のことになると、彼はなぜか話をはぐらかし…。
ローラは地味な容姿のせいか、20代も終わりでいまだに独身だ。ある日、ローラの名付け親がレイロフという友人を伴って訪ねてきた。そのハンサムなオランダ人医師を見るなり、ローラは目をみはった。包容力と落ち着きのある大人の彼は、まさに思い描いてきた理想の男性。しかし、レイロフが心を奪われたのは、見るからに華やかな妹だった。ほどなく婚約した二人を、ローラは胸の痛みをこらえながら祝福した。ところが移り気な妹は、出会ったばかりの別の男性と駆け落ちし、婚約破棄をレイロフに伝える役目をローラに押しつけた。ローラがありのままを告げると、レイロフは彼女を見据え、驚くべき言葉を口にした!「それなら、君と結婚したっていいわけだ」
ある雨の日、バス停にいたクレアラベルに、とんだ災難が降りかかる。前の客に足を踏まれてけがをし、後ろの客に傘で小突かれたあげく、側溝の泥水に足をとられているうちに、バスが走り去ってしまったのだ。だが通りすがりのロールスロイスに拾われ、家まで送ってもらうことに。車の主は長身でハンサムな整形外科医、マルク・ファン・ボーゼル。猫2匹と暮らす彼女の狭いフラットには場違いなほど洗練された男性だ。「5分しかないんだ」彼は傲慢ともいえる態度でそう言うと、そそくさとクレアラベルのけがの手当てをして帰っていった。翌朝クレアラベルは職場の病院で、回診に加わった意外な人物を見て驚く。昨日のあの人だわ!けれど、当のマルクは彼女に目を留めもしなかった。