著者 : マーガレット・アトウッド
『侍女の物語』前夜のアトウッド 世界的作家アトウッドの初期短編集が待望の復刊。キャンパスで繰り広げられる奇妙な追跡劇(「火星から来た男」)、記者が陥る漂流の危機(「旅行記事」)、すれ違いから若い夫婦が深める孤独(「ケツァール」)、悩める医者の卵がある少女に向ける感情(「訓練」)、下宿屋で巻き起こる異文化をめぐる騒ぎ(「ダンシング・ガールズ」)など──アトウッドのぞくぞくするような「巧さ」が詰まった七編を収録。あからさまにではなく、ほんの少しだけ垣間見せるというやり方で、日常に潜む違和や世界の綻びが、複雑と混沌のままに示される。 「ことに「キッチン・ドア」で描かれる、形のない、だがはっきりと肌で感じる破滅の予兆は、のちの『侍女の物語』や〈マッドアダム〉三部作のディストピア世界の前日譚と見ることもでき、世界のあちこちで不穏な狼煙の上がる二〇二五年に読むと、これを訳した当時よりずっと生々しい実感をともなって迫ってくる。およそ五十年前に書かれたにもかかわらず、これらの物語は少しも古びていない、どころか読むたびに「今」の物語として更新されつづける。そのことに何よりも驚きを感じる」(「復刊によせて」より)
高齢者を口減らしすべく介護施設をつぎつぎ襲撃する若者と、待ち受ける老婦人を描く表題作。4人の夫を看取ってきた女性と、"運命の相手"との再会を描く「岩のマットレス」。復讐譚、ゴシックホラー、社会批評など、バラエティに富んだ9篇を収めた傑作短篇集
謎のウィルスにより人類はほぼ絶滅した。生き残ったのはトビーやゼブら一握りの人々と、人造人間クレイカー、そして残忍な凶悪犯たち。ゼブは荒廃した街で兄アダムの手がかりを探す。世界を破滅させたウィルスの正体は何だったのか──時間はゼブが若き天才クレイクに出逢った日に遡る。壮大な物語はクライマックスへ。 マッドアダム三部作 これまでの物語 〈卵〉 〈卵〉の物語、オリクスとクレイクの物語と、二人が人や動物をどう作ったかの物語。カオスの物語。スノーマン・ザ・ジミーの物語。いやなにおいがする骨の物語と、悪人二人が出てきた物語 ロープ ロープ 行 列 ケ シ 土壁ハウス 朝 朝 食 ハンモック 物 語 帰 還 ベアリフト ゼブが山で迷い、クマを食べた物語 ファートレード 墜 落 食 料 おんぼろ小屋 ビッグフット ゼブと“ありがとう”と“おやすみなさい”の物語 傷 傷 バイオレット・バイオトイレ まばたき ゼブの闇 ゼブの闇 ゼブ誕生の物語 石油教会の子どもたち スキリッツィの技 ミュートとセフト ヘーミン地の奥深く 目覚めるスノーマン 花柄のベッドシーツ 女の子用品 目覚めるスノーマン ドラッグストアのロマンス 草むしり ブラックライトのヘッドランプ ゼブとファックの物語 〈浮き世〉地区 ザ・ハッカリー 冷めた料理 ブラックライトのヘッドランプ 腸内パラサイト・ゲーム
過ぎし日、父親レヴの虐待を逃れて家を出たゼブ。しかし潜伏先でレヴに遭遇したゼブは…。運命はクレイクと謎のウィルスへと繋がっていく。一方、凶悪犯と闘うため、トビーたちは昨日の敵と手を結ぶことに。すべてが終わった後に開ける未来とは? 科学技術と環境破壊が行きつく先を構想した近未来小説三部作、ここに完結! 骨の洞窟 筆記体 ハチの群れ 骨の洞窟 子ブタたち ベクター クレイク誕生の物語 少年クレイク グロブ・アタック ベクター ウロコとシッポ ゼブとヘビ女たちの物語 子ブタ 預言者 子ブタ 長いおしゃべり 退 避 アヌーユー砦 クライオジーニアス行きの列車 二つの卵とクレイクが考えたことの物語 サングラス キックテイル ラズベリームース クライオジーニアス行きの列車 ルミローズ エデンクリフ 卵の殻 招 集 出 撃 卵の殻 戦いの物語 月の暦 裁 判 儀 礼 月の暦 本 本 トビーの物語 謝辞 訳者あとがき
アパートの扉にスプレーで記されていく“V”の字、悲しい記憶を洗い流すエステ、宇宙から派遣された謎のタコ型エイリアン、女子刑務所からの脱獄、遅れていく“時”の流れ、ロックダウン解除後の世界…。ベスト禍で紡がれた名作『デカメロン』にならい、ユニークな視点と着想で書き下ろされた個性的アンソロジー。さまざまな言語、人種、ジャンルからなる世界の作家が書き下ろした、コロナ禍のいまを生きるための物語。
『侍女の物語』から十数年。ギレアデの体制には綻びが見えはじめていた。政治を操る立場にまでのぼり詰めたリディア小母、司令官の家で育ったアグネス、カナダの娘デイジーの3人は、国の激動を前に何を語るのか。カナダの巨匠による名作の、35年越しの続篇。
世界のベストセラー作家が、シェイクスピアの名作を語りなおすシリーズ第一弾。 M・アトウッドによって、傑作『テンペスト』が現代に蘇る! 『テンペスト』の演出に心血を注いでいた舞台芸術監督フェリックスは、ある日突然、部下トニーの裏切りにより職を奪われた。失意のどん底で復讐を誓った彼は、刑務所の更生プログラムの講師となり、服役中の個性的なメンバーに、シェイクスピア劇を指導することに。 12年後、ついに好機が到来する。大臣にまで出世したトニーら一行が、視察に来るというのだ。披露する演目はもちろん『テンペスト』。フェリックスの復讐劇の行方は!? --天才シェイクスピアと現代文学界の魔女アトウッドの才気が迸る、奇跡のような物語の誕生! 【著者略歴】 マーガレット・アトウッド カナダを代表する作家・詩人。その著作は小説、詩集、評論、児童書、ノンフィクションなど多岐にわたって60点以上にのぼり、世界35か国以上で翻訳されている。1939年カナダのオタワ生まれ。トロント大学、ハーバード大学大学院で英文学を学んだ後、カナダ各地の大学で教鞭を執る。1966年に詩集「The Circle Game」でデビューし、カナダ総督文学賞を受賞。1985年に発表した『侍女の物語』は世界的ベストセラーとなり、アーサー・C・クラーク賞と二度目のカナダ総督文学賞を受賞。1996年に『またの名をグレイス』でギラー賞、2000年には『昏き目の暗殺者』でブッカー賞、ハメット賞を受賞。2016年に詩人としてストルガ詩の夕べ金冠賞を受賞。そして2019年、「The Testaments」で2度目のブッカー賞を受賞した。トロント在住。 【訳者略歴】 鴻巣友季子(こうのす・ゆきこ) 翻訳家・文芸評論家。1963年東京生まれ。訳書『恥辱』『イエスの幼子時代』『イエスの学校時代』J・M・クッツェー、『昏き目の暗殺者』M・アトウッド(すべて早川書房)、『嵐が丘』E・ブロンテ、『風と共に去りぬ』M・ミッチェル(ともに新潮文庫)、「灯台へ」V・ウルフ(河出書房新社 世界文学全集2-1収録)など多数。編書に『E・A・ポー ポケットマスターピース』(共編、集英社文庫ヘリテージシリーズ)など。『全身翻訳家』(ちくま文庫)、『翻訳ってなんだろう?』(ちくまプリマー新書)、『謎とき「風と共に去りぬ」』(新潮選書)ほか、翻訳に関する著作も多数。 【原書】HAG-SEED
ローラの死後出版され、彼女を伝説の作家としてまつり上げることになった小説『昏き目の暗殺者』-人目を忍んで逢引を続ける男女と、惑星ザイクロンの王政転覆を企む貴族に雇われた盲目の暗殺者のふたつの物語に隠された秘密とは?蜘蛛の巣のように絡み合う現在、過去、そして物語。「昏き目の暗殺者」とはいったい誰を意味するのか?現代文学の数多の技法を駆使し、虚構の神殿を紡ぎあげるアトウッド文学の総決算。
遺伝子操作で新しい生物が次々に作られ、食べ物は合成物ばかり。人々は巨大企業とエリートたちに支配されている。人工世界に異議を唱えるエコ原理集団「神の庭師たち」と、その中で暮らす孤独な女性トビーと少女レン。突然、新型ウイルスが襲ってきて地上は廃墟となる。偶然生き残ったトビーとレンは、それぞれの隠れ家で固唾を吞んで様子を窺う。圧倒的な構想力と息もつかせぬストーリー展開で読ませる近未来小説。
遺伝子操作で新しい生物が次々に作られ、食べ物は合成物ばかり。人々は巨大企業のエリートと平民に二分されている。人工世界に異議を唱えるエコロジカル宗教団体「神の庭師たち」と、その中で暮らす孤独な女性トビーと少女レン。突然、新型ウイルスが襲ってきて地上は廃墟となってしまう。偶然生き残ったトビーとレンの運命は?圧倒的な構想力と息もつかせぬストーリー展開で読ませる近未来小説。「マッドアダムの物語」三部作の第二作、待望の邦訳。
殺人事件で犯人とされた美女は事件を主導した「魔性の女」だったのか、それとも歴史に翻弄された犠牲者だったのか。一九世紀カナダで起き、当時世界中で話題となった殺人事件の記録を素材に、巧みな心理描写を織りこみながら、ミステリー仕立てに、人間存在の根源を鋭く問いかける。ノーベル文学賞候補ともいわれるカナダの女性作家、マーガレット・アトウッドの傑作。
殺人事件で犯人とされた美女は事件を主導した「魔性の女」だったのか、それとも歴史に翻弄された犠牲者だったのか。一九世紀カナダで起き、当時世界中で話題となった殺人事件の記録を素材に、巧みな心理描写を織りこみながら、ミステリー仕立てに、人間存在の根源を鋭く問いかける。ノーベル文学賞候補ともいわれるカナダの女性作家、マーガレット・アトウッドの傑作。
人類がいなくなった海辺で、スノーマンは夢うつつを漂っている。思い出すのは、文明があったころの社会。スノーマンがまだジミーという名前だった少年時代。高校でめぐりあった親友クレイクとかわした会話。最愛の人オリクスとのひとときー。誰がこんな世界を望んでいたのだろうか。そして、自分はなにをしてしまったのだろうか。カナダを代表する作家マーガレット・アトウットが透徹した視点で描き出す、ありうるかもしれない未来の物語。
アトウッド作のなかで最高傑作といわれる作品。1843年にカナダで実際に起きた殺人事件に題材を求める、入念な資料調査をもとに仕上げられた歴史小説風作品。同国犯罪史上最も悪名高いと言われている女性犯のひとり、16歳の少女グレイス・マークスの物語である。グレイスはfemme fatale魔性の女か、それとも時代の犠牲者か。単に歴史小説の域に留まらず、性と暴力をはじめとする人間存在の根源に関わる問題をミステリー仕立てで鋭く追及する。
侍女のオブフレッドは、司令官の子供を産むために支給された道具にすぎなかった。彼女は監視と処刑の恐怖に怯えながらも、禁じられた読み書きや化粧など、女性らしい習慣を捨てきれない。反体制派や再会した親友の存在に勇気づけられ、かつて生き別れた娘に会うため順従を装いながら恋人とともに逃亡の機会をうかがうが…男性優位の近未来社会で虐げられ生と自由を求めてもがく女性を描いた、カナダ総督文学賞受賞作。
“魔性の女”ズィーニアの正体は?──人生を弄ばれた、三人の女性に執拗に取り憑くズィーニアの影が、再び三人を危機に追い込む。その結末は……。 ──アトウッド自身「自分の作品の中でも、いちばん翻訳しにくいかもしれない」という翻訳者泣かせの労苦にもかかわらずやってこられたのは、作品の面白さである。アトウッドの手法はユニークである。推理小説ではないが、次に話がどう展開するのだろうか、と読者を先に急かせるサスペンスがある。読み手側がこうなるのではないか、と思いながらもとんでもないどんでん返しがある。結末についてはなかなか分からない。エンターテイメント的要素もあるが、心理描写はさすがで、哲学もあり、知的小説である。暗いテーマを扱いながらも、辛味の効いたウイットとユーモアで軽みをだす。さすがである。彼女の中では物語が枯渇するということがないのではないかと思う。(「訳者あとがき」より)
死んだはずの“魔性の女”が再び現れた…… かつて彼女に振り回された苦い経験を持つ三人の中年女性が、若き日を回想しながら新たなる人生の危機に立ち向かう。鋭い時代感覚で照射する80年代カナダの肖像。ミステリー仕立ての知的エンターテイメント。ブッカー賞受賞作家の長編小説!