著者 : リンゼイ・アームストロング
18歳のミアは、両親が仕える屋敷の御曹司カルロスに恋をした。初めてキスを交わした夜、彼の母親に見つかり、“使用人の娘のくせに”と激怒され、親をくびにすると脅されて、彼女は逃げるように屋敷を飛びだした。あれから7年。こんな形で彼と再会することになるなんて。ミアの会社が取りしきる結婚披露宴に、カルロスが出席したのだ。「ミア!ミアなのか?」彼が驚きのまなざしで見つめている。全身が炎のように熱くなり、ミアの封印した恋が息を吹き返した。だがその直後、またしても彼の母親からひどい侮辱を受け、カルロスに婚約者がいることを聞かされて…。
「おめでとう、8週目くらいね!」医師の言葉に、クレアは呆然とした。仕事一筋で来たので、子供のことなんて考えてもみなかったのだ。お腹の子の父親である大富豪ラクランだって、きっと同じはず。“ぼくは自立したきみが好きなんだ。だからこそ、ぼくたちは刺激的な関係でいられる”と、彼は言ったのだから。所詮、快楽の相手としか見られていないということ。なかなか妊娠を告げる勇気が出ないクレアを残し、ラクランは3週間の海外出張に出かけてしまった。これまでだって、私はいつも独りで生きてきたようなものだわ…。彼が帰国したとき、クレアは心に決めていたー未婚の母になることを。
21歳の誕生日を迎えるロズは最近、ずっと気分がもやもやしている。会社社長のアダムと結婚して2年がたつが、子宝に恵まれないのだ。夫にとって、私はただの“愛人”と変わらないのでは…?そんな気がして、ベッドをともにした翌朝は必ず自己嫌悪に陥る。もやもやの原因は、そもそも二人のいびつな関係にあるのかもしれない。当時、借金を抱えて困っていたロズには経済力が必要で、一方のアダムは愛には冷淡ながら、家族を欲しがっていた。なのに彼に家族を作ってあげられないなんて、契約結婚が成り立たない。いいえ、契約上の妻のつもりでいたけれど、本当は心から夫を愛している。だが彼にしばらく離れようと言われ、ロズの胸は張り裂けそうになり…。
友人の牧場からの帰宅途中、猛烈な嵐に遭ったブリジットは、偶然通りかかった男性と一緒に小屋に避難した。九死に一生を得た二人は互いの体を温め合い、愛し合った。だが翌日救助されると、彼はあっさりと別れを告げた。3週間後、ブリジットはあの夜の男性、アダムを新聞で見つける。なんと彼は名家の御曹司で、とてつもなく裕福な企業家だった。私とは身分が違いすぎるから、素性も明かさず去ったのね。時を同じくして、ブリジットは身ごもっていることに気づいた。アダムの情熱的な愛の営みと冷たい別れを思い出して胸が疼くが、彼に拒まれることを思うと、妊娠を告げるのは怖くて…。
人けのない岬で、キラはらしからぬふるまいをした。見知らぬ男とマットと、出会って数時間でキスしてしまったのだ。無理やりだったとはいえ、キラには婚約者がいるというのに、ハンサムな彼に我を忘れかけた。だがあやういところで身を離し、自分には婚約者がいることを告げ、その場を立ち去ったのだ。2カ月後、キラは軽率なふるまいを後悔することになる。父から紹介された大実業家が、あのマットだったから…。しかも父の会社の借金の肩代わりをする見返りに、欲望に濡れた目で結婚をーキラの体で代賞を求めてきたのだ。
5年前、ステファニーは弟の危機を救うため、富も権力もあわせ持つ大富豪ドミニクと愛のない結婚をした。だが、冷徹な彼は妻を都合のいい愛玩人形として見ているだけ。抱かれたら感じてしまう自分が許せず、いまは夫と別居している彼女のもとに、ある日、ドミニクから電話がかかってきた。“きみが条件さえのめば、正式に離婚してもいい”というのだ。応じたステファニーは、仲睦まじい夫婦を演じることになるが、夫と出かけた場で、若い娘がドミニクに恋していると気づき、頬をこわばらせてしまう。彼との間に愛などないはずなのに…。
結婚式の夜、二十歳の花嫁ルーシーは年上の夫に宣言した。“結婚しても絶対にベッドは共にしない”と。愛し合っての結果ではなかった。選択の余地などなかった。父親の死後、莫大な借金があるとわかり、投資の条件として、幼なじみの大富豪ジャスティンに結婚を申し込まれたのだ。それにルーシーは傷ついてもいるのだ。そのむかし、ジャスティンには、叶わなかった恋人がいたと知った日から。ほかに好きな人がいるのに、どうして幾度も愛をささやくの?誰よりも甘やかしてくれるジャスティン。心から慕っていたのに。
父親を亡くし、天涯孤独の身となった18歳のハンナを裕福な、父の友人アレックスが引き取るというが、村人はいい顔をしない。というのも、昔破れた恋を引きずり、彼が未だ独身だからだ。ハンナはアレックスに仄かな憧れを抱いていたのだけれど…。ある夜、村の男がハンナを車に乗せ、強引に体を奪おうとする忌ましい事件が起こる。なんとか逃れはしたものの、それがアレックスの逆鱗にふれた。怯えるハンナに彼は、「君に必要なのは父親じゃない、夫だ」と言い、口づけたのだ。あなたの心はほかにあるのに?ハンナの胸は諦めつけられる。
18歳でクラリッサは、心から慕っていたロブと結婚した。でも一回り近くも年上のロブが優しすぎて、ときどき不安になる。富豪の夫は幼いクラリッサを愛しているわけではなく、兄と父を亡くした彼女と母を救っただけではないか。厳しい親に躾けられて、寝室の行為もほとんど無知に等しかった。だからきっと彼を失望させているはずだと…。妊娠が発覚した夜のこと、クラリッサの予感は的中する。自分の母親とロブが熱く抱擁している姿を見てしまったのだ。動揺した彼女は「私でごめんなさい」と謝り、すぐさま逃げた。
父の急死で、身寄りのなくなった19歳のニコラは、憧れの弁護士ブレットと結婚した。しかし、新婚生活は惨めなものだった。父の親友で、ニコラの後見人でもあるブレットにとって、この結婚はニコラが男友達に襲われかけた事件がきっかけで生じた、便宜的なものにすぎず、ニコラを子供扱いして、指一本触れようとしないのだ。だから、2年たってもニコラは純潔のままーしかも彼は、別れた美しい妻にいまも想いを寄せていた。
すべては5年前の夜に起きた、あの忌まわしい出来事のせいだ。18歳の大学生モーガンはその日、二人組の男に襲われかけた。すんでのところで助かったのは、彼女が恋い焦がれていた大学講師スティーブが偶然通りかかったおかげだった。だがどういうわけか自宅へ送り届けてくれた彼の目は冷ややかで、さらに追い打ちをかけるように父親から侮蔑的な罵倒を受けて、彼女の心は粉々に砕かれてしまった。以来、モーガンは男性を遠ざけて暮らしてきたー今日までは。「また会えてうれしいよ。もっとも君は気分が悪そうに見えるが」スティーブ!二度と会いたくなかったのに。なぜ突然現れたの?
アナは旅の途中で所持金を盗まれ、働き口をさがしていた。ようやくある屋敷の家庭教師の職を見つけ、面接に行く途中、アナは海で溺れた少女を救い、そのまま意識を失ってしまう。気づくと、彼女は豪奢な屋敷で寝かされていた。そばで当主のリチャードが、娘の命の恩人である彼女に冷ややかな目を向けている。アナは、はっと気づいた。彼とは先日、偶然出会っている。しかも、キスまで奪われて…。この人は、私が愛人志願で現れたとでも思いこんでいるんだわ。なんて傲慢なの!私は家庭教師になりたいだけなのに。