著者 : ロビン・ドナルド
18歳の夏、ロージーは初恋の人ガードとキスを交わした。それは体中に電流が走るほどの、甘く衝撃的な体験だった。それから3年。カラシア国大公となるガードの戴冠式に、ロージーは招待された。祝賀舞踏会で彼と久々に顔を合わせ、その腕に抱かれたとたん、抑えてきた熱い想いが溢れ出た。あろうことか身分を忘れ、彼と一夜を共にしてしまったのだ。ガードにはすでに花嫁候補もいる。私は身を引くしかない…。ところが、盗撮された二人の熱愛写真が流出してしまい、ガードは態度を翻して、ロージーに求婚した。これは愛のためでなく、国の平和のための結婚だと言って。
ヨットで航海中に父が急逝し、天涯孤独になった18歳のクレシダ。ただひとり気丈に荒波と闘う彼女を救ったのは、目をみはるほどの美貌とたくましさを併せ持つ大人の男性ルークだった。ためらいもせず救助船から海に飛び込んで助けてくれた彼はまさに、クレシダのヒーロー、そして密かに想いを寄せる初恋の人となった。その後、裕福なルークに引き取られたクレシダは、これはたんなる思春期の恋心にすぎないと自分に言い聞かせた。けれど、ルークとヨットで出かけて嵐に見舞われた夜、島陰で急接近したふたりは、ついに結ばれるー家に帰れば、ルークと親しくしている美女が、妊娠の知らせを持って待っているなど夢にも思わずに…。
母を亡くしたオリビアは、邪な継父から逃れるため、当時1歳だったサイモンを連れて家出をした。それから逃亡生活を続けながら懸命に働いてきたが、失業してしまう。6歳になるサイモンの難聴が進行するなか、手術代を工面できず、オリビアはやむなく初恋の相手ドレイクに手紙を送る覚悟を決めた。今やホテル王となった彼に頼るのはいやだけれど、ほかに道がなかった。手紙を受け取り、オリビアのもとを訪れたドレイクに向かって、彼女は告げた。「サイモンはあなたの息子よ」君にはキスと愛撫しかしなかったと一笑に付され、オリビアは言い募った。「私の子じゃないわ。母の子よ。そして、父親はあなたなのよ!」
18歳の誕生日、ペトラは気鋭の投資家ケイン・フレミングと恋におちた。彼はペトラの若さを案じて関係を深めようとはしなかったが、やがて彼女の一途な願いが叶い、二人は年の差を乗り越えて結婚した。だがある日、家に帰ってくるなりケインは衝撃の事実を告げた。ペトラの伯父が、100万ドルの借金を申し込んできたという。しかも、ペトラが結婚したのは、金のためだと断言して。そしてケインは反論の余地も与えず、彼女に出ていけと言い渡した。あれから8年。その彼がペトラの前に現れ、借金の返済を迫った。100万ドルなんて、とうてい無理よ…。青ざめるペトラに、ケインは言った。「僕と再婚するという方法もある」
母の死後、19歳のメレデスは幼い弟とふたりだけになった。困窮したメレデスは、長らく絶縁状態にあったファウラー大財閥を築いた、母方の祖父を頼るしかなくなった。だが祖父は血筋のためなら、なんでもする冷帝な人物だという。機転をきかせた彼女は屋敷に着くなり、権力闘争から守るため弟を自分の息子だと偽るが、すぐに激しく後悔した。祖父の後継者、実質上の大財閥の統括者であるデインに、身持ちの悪い女だと、底冷えする目つきで蔑まれたから。そして、メレデスは寡黙で美しい彼に心を奪われたから。
花屋で働くイレーナは、隣家の新しい主に思わず目を奪われた。ニコ・ラドクリフーヨーロッパの小国の伯爵だという。魅力的だけれど、私には雲の上の人だわ。彼女は自身を戒めた。だが思いがけず、ニコから多額の報酬の仕事が舞いこむ。「司書の資格を持つきみに、屋敷の古文書の整理を頼みたい」屋根の修繕も満足にできないほど困窮していたイレーナは引き受けざるをえず、彼の屋敷に通いつめることに。数日後の朝、ニコのベッドで目覚めた彼女は青ざめた。なんてこと!彼の誘惑に負けて戒めを破ってしまうなんて…。
12歳のとき、マーリンは父を亡くし、大富豪スタンホープ一族に引き取られた。15歳のとき、その子息ブレイズにキスをされて、愛し合うようになった。そして17歳のとき、彼への想いは無残に打ち砕かれたのだ。ブレイズのいとこに、泥棒の濡れ衣を着せられたうえに、マーリンと関係があったと嘘をつかれ、それがブレイズの逆鱗に触れた。ただの一言も信じてくれず、執拗に苛まれる苦痛に耐えかねて、マーリンは彼から逃げ出した。身ごもっているとブレイズに告げられないまま…。
年上の富豪キアに想いを寄せていた18歳のホープは、ある日、彼女の継父とキアの信じがたい話を立ち聞きしてしまう。キアが継父の会社を買収することになり、その見返りとして、継父はホープを差しだす提案をしたのだ。それに対してキアは、ホープは欲しいが妻に迎える気はさらさらない、と拒絶した。深く傷ついたホープは、翌日逃げるように家を出た。4年後、ホープが働く宝石店に突然キアが現れた。キアは臆面もなく彼女に4年間の空白を埋めるよう迫り、彼を忘れられなかったホープは一夜だけと誓い純潔を捧げてしまう。キアのもとを去った彼女だったが、ほどなく妊娠に気づき…。
またあの人だわ…。図書館司書のフェインは密かに胸を躍らせた。今朝、花屋の店先で偶然出会った、目も覚めるようなハンサムな男性。貸し出しカードの名前は…バーク・ハーディング!経済界に彗星のごとく現れた気鋭の実業家が本を借りに来たの?そして数日後、フェインはバークからデートに誘われ、1カ月後にはプロポーズを受けていた。豪奢な新居の鍵とともに。友人からは羨ましがられ、家族も手放しで祝福しているというのに、フェインは胸の奥に巣くう微かな不安を払うことができなかった。なぜ、バークは私に“愛している”と言ってくれないのだろう…。結婚式当日の夜、フェインはその理由を知ることになるー。