著者 : ヴァイオレット・ウィンズピア
買われた花嫁の涙はいつか、 愛の喜びに昇華するのかーー 幼い頃に両親を事故で亡くしたドミニは、伯父に愛情深く育てられた。 その伯父が今、窮地に陥っていたーー息子が会社で横領を働いたのだ。 会社の社長でギリシア人大富豪のポール・ステファノスは、 ドミニの伯父には内緒で彼女に取引を持ちかけた。 「君が僕と結婚するなら、事件は公にしないでおこう」 最愛の伯父を救うため、ドミニはうなずくほかなかった。 結婚式がすむと、悔し涙を流した。私はお金で買われた花嫁なのね……。 そしてドミニがハネムーン先から逃げ出そうとしているのに 気づいたポールが、恐ろしいほど静かに告げた。 「僕は君を放さない。僕の気がすむまで、君を捕まえておくつもりだ」 ハーレクイン・ロマンス日本創刊を前にサンプル本として選ばれた、巨匠ヴァイオレット・ウィンズピアの幻の名作! 15歳年上のヒーローは、じつはヒロインがまだ学生の頃から彼女の魅力に気づいていて……。耽美的な世界観をご堪能ください。紙書籍限定発売です。
愛しすぎれば傷つくと知る娘は、 愛を恐れ、愛を隠す……。 ヘロンは幼いころ、睡蓮の花を摘もうとして湖に落ちた。 そのとき助けてくれた庭師の青年のことが忘れられず、 美しく成長した今も、ほかの誰も愛することができずにいた。 とはいえ、その青年のことはおぼろげにしか憶えていないけれど。 ある晩、ヘロンはパーティで端正な紳士に突然プロポーズされる。 エドウィンと名乗った彼は外国から戻ったばかりの実業家で、 町外れの海に面した崖に立つ“ガラスの城”を買い取ったので、 そこに似合うような美しい若妻が欲しいのだという。 よく知りもしない年上男性と暮らすなんて、絶対にいや! 激しく拒むヘロンを、彼はすべてを見透かすような目で見つめ……。 不世出の作家ヴァイオレット・ウィンズピアが生んだ名作の中でも特におすすめの本作には、まるで言葉の宝石箱のように美しい表現が詰まっています。幻想的な初恋と年の差ロマンスが描かれ、ウィンズピアの耽美な世界観を存分に味わえる極上の物語です。
ああ、自分の名字すら思い出せない。わたしはいったい誰なの?記憶を失ったリギアがたどり着いたのは、荒れ野にぽつんと立つ屋敷。当主のエイブリーは医師で、親切に面倒を見てくれたが、近くに住む彼の従兄弟ロバートははなから彼女を疑ってかかる。記憶喪失と偽って財産を狙う女狐め!ロバートは意地悪な秘書とともにリギアに冷たく当たった。つらい、もうここにはいられない…。リギアがいたたまれない思いをしていたある日、ロバートの愛犬を助けたことで、彼の態度が和らいだ。そして雨宿りで寄った彼の家で、ついに記憶の扉が…。
隼のような鋭い瞳の伯爵が 美しさの陰に秘めた、傲慢な魂ーー 骨董店の売り子をしているフェイは、まだ恋をしたことがない。 休暇で旅に出たある日、乗っていたバスが立ち往生し、 なにげなく外へ出た彼女は森のなかに立つ美しい古城に魅了された。 そこへ突然、金色の瞳をした容姿端麗な男性が木陰から現れ、 フェイは驚いた弾みで足首を捻挫してしまう。 彼こそ、城主のデ・リベロ・ファルカン伯爵、ヴィンセント。 伯爵は痛みで歩けない彼女をなんなく抱え上げ、そのまま城へ向かった。 人に命令して従わせるタイプの男性にこんなに近づくのは初めて……。 ときめきと不安が入りまじるフェイの心に、伯爵の甘い問いが忍びこむ。 「さて、とらわれの姫の名前を教えてくれないか?」 今やロマンス小説界の女王となったリン・グレアムも尊敬する作家として挙げる、名匠ヴァイオレット・ウィンズピア。美しい情景と深遠な心情の境を彷徨い描き出される世界観をご堪能ください!
幼いころ母に捨てられたイニスは、長年暮らした修道院を出て、 大富豪ガード・セントクレアの邸宅へ向かっていた。 ガードから金を詐取した義理の父に代わって許しを乞うために。 だが、けんもほろろに追い返され、嵐のなかを帰る途中、 不運にも車にはねられ意識を失ってしまう。 数週間後、ガードの屋敷のベッドで目を覚ましたイニスは、 事故のせいで記憶を失い、自分の名前さえ思い出せずにいた。 ふと左手を見ると、薬指に美しい指輪が輝いている。 わたしに婚約者が? 何もわからないイニスに、看護師が教えた。 「婚約者は裕福で頭が切れる、悪魔みたいなガード・セントクレアよ」 HQプレゼンツ作家シリーズ別冊より、記憶喪失ロマンス特集〈閉ざされた記憶の扉〉をお届けします。不世出の作家V・ウィンズピアが描いた本作は、清廉なヒロインと傲慢なヒーローが出逢い、互いに反発しながらも孤独な魂が惹かれあう、クラシックな恋物語です。
むせ返るような野生の花の香は誘うーー 運命の人が待つ、遙かなる金の砂の王国へ。 亡き父への思慕を募らせ、彼が生涯愛した砂漠を訪れたローナ。 だが、オアシスに立つ父の家はすでに朽ち果て、廃墟と化していた。 茫然とするローナに追い討ちをかけるように、 とつぜん盗賊が現れ、襲いかかってきた。 と、妖しい光を瞳に宿した馬上の男がローナを救った。 きのう、砂占い師が予言した、黒い髪の男性との出会い。 私を追いかけ、私に触れるというその人は、彼のことなの? 不安に駆られ、町まで送ってほしいと懇願するローナをよそに、 男は彼女を連れ去ったーーあまりに熱く、甘美な砂の世界へ。 HQロマンスが誇る数々の逸作を厳選してお贈りする、伝説の名作選。宝塚歌劇団で舞台化されたことはあまりに有名な、知る人ぞ知る珠玉作です。ウィンズピアらしいクラシカルな雰囲気漂う、王道シークものをお楽しみください。
物心つく前に交通事故で両親を亡くして以来、愛情のかけらもない叔母にひきとられ、孤独に耐えてきたティナ。叔母の親戚が、財産目当てで近づいてきたのを機に、ティナは憧れの地ロンドンに出ることにしたのだ。そこでは、思いもかけない男性との再会が待ち受けていた。かつて故郷の地で、ティナが密かに心惹かれていた大富豪ジョン。ジョンに誘われて過ごす、夢のような日々のなかで、親子ほど年の離れた彼に求婚され、幸せの絶頂で結ばれた。だがやがてティナの心に嫉妬が芽生える。彼の亡き妻の存在に。
スペインで修道女見習いをしている身寄りのないトニは、 いわれのない差別を受け、つらい毎日を送っていた。 ついに園丁の服を拝借した彼女は修道院からの脱走を企てるが、 途中、紛れこんだ祭りの喧噪のなかで盗人に間違われてしまい、 美貌の貴族ルークの手によりなんとか救われる。 トニは彼の船でスペインからイギリスへ向かうことになり、 身の安全のため、少年のふりのままルークや周囲の人々を欺いた。 だが一方で、ルークへの思いは日々膨らんでいくばかりだった。 そんなある日、彼らを乗せた船が嵐に巻きこまれてしまい……。
義兄が他人の車に衝突して、救助もせず逃げただなんて。ラヴェンナは、悪夢のような現実に信じられない思いだった。相手はイタリア領サルデニヤ島の豪族マーク・ディ・クルツィオ。マークはその事故で亡き妻の忘れ形見を失った。そしていま、“罪の償いは家族に求める”というサルデニヤの掟に従って、ラヴェンナに、跡継ぎを産むための犠牲結婚を強いてきたのだ。言いなりにならなければ、その罪を暴露すると脅されては、病身の義父のためにも、ラヴェンナは純潔を捧げるしかなかった。暗く凍てついた彼の瞳から、逃れられなくなるとも知らずに。
私の代わりに、婚約を破棄したいと彼に伝えてきてーアリスは妹からの無理なお願いを断りきれず、妹の婚約者に会うため、ひとりギリシアへ飛んだ。旅の途中、とあるホテルに滞在していたとき、あろうことかボーイに扮した謎の男に誘拐されてしまう。名はステファン・カサンドロス。妹の婚約者をよく思わぬホテル王。アリスを妹だと思い、彼女を道具に一矢を報いようとしているらしい。彼女が必死で人違いだと訴えても耳を貸そうとせず、ステファンは彼が所有する地所へアリスを連れ去った。「きみを、思うがままに扱わせてもらう」と、容赦なく宣告して。
幼い頃に両親を亡くし、冷淡な親戚の家で育ったロミーは、亡き祖母が遺してくれたお金で念願の外国旅行へ出た。訪れたメキシコで生まれて初めて地震に遭い、恐怖で震えていると、真っ白なスーツを一分の隙もなく着こなした男性が手を差しのべた。ドン・デルガード・ヴァルカサールースペインの名門富豪だった。彼の放つ悪魔的な魅力にロミーは心乱され、慌ただしく別れを告げたが、そのあと乗った列車が脱線。その直前に、部屋を間違えて個室に入ってきた彼と、パジャマ姿のまま救助を待つはめに…。「互いの評判を守るため、婚約者のふりをしよう」そう囁いたデルガードのブロンズ色の瞳に、不穏な光が宿った。
「きみは自分が何をしたのか、わかっているんだろうな!」 激昂したヘラクリオンに体を揺さぶられながら、 花嫁の長いベールを脱いだフェニーは罪悪感に苛まれていた。 神の前で結婚の誓いを立てた相手が美しい婚約者ペネラではなく、 地味でさえないその従妹だったとわかれば、激怒して当然だ。 でも、奔放なペネラは恋人とアメリカへ逃げてしまった。 そして私は、ひそかにヘラクリオンを愛していたのだ……。 フェニーはエーゲ海の島に立つ白亜の豪邸に迎え入れられた。 男の子をひとり産み、その子を置いて去れという条件のもとに。
スペインの名門貴族リック・デ・サルドとの再会を前に、アンジーの心は揺れていた。身寄りのない彼女は10代のころ、よく親友に招待され、美しいスペインの島で休暇を過ごしたー親友の兄リックへの恋心を胸に秘めて。その後、看護師となった彼女のもとに、しかし先週、痛ましい報せがもたらされたのだ。リックが事件に巻き込まれ、失明したと。彼の役に立ちたい。ただその一心で、アンジーは故郷へ飛んだ。だがそこにいたのは、心を荒ませた別人のようなリックだった。
大金をすってしまった妹のために、ジュリアが駆けつけると、 待ち受けていたのは、今やカジノの経営者となったロームだった。 冷たい美貌の彼は、鋭く告げた。借金の形にぼくと寝るんだ、と。 ロームは、ジュリアたちが裕福だったころの使用人の息子だ。 かつて、幼いジュリアがロームに苛められて泣き出したとき、 祖母は理不尽にも、取りすがるロームの母親ともども解雇した。 それに対する負い目は、いまも影としてジュリアの心に残る。 だから罪を一身に背負い、彼に純潔を差し出したのだ。 一夜の関係で、子を身ごもってしまうとは思いもせずに。
今は亡き夫の不義の子テリーを育てているキャロルは、子供の将来のために亡夫の実家を訪ねる決心をする。たどり着いたのは、イタリアの美しい小島に立つ壮麗な屋敷。夫の兄である男爵、ルドルフがそこに住んでいる。彼を見たとたん、キャロルは衝撃を受ける。貴族の血を引き、彫刻のような美貌を持ちながらも、その横顔には人を寄せつけない傷跡がほの見えていたのだ。キャロルはなんとか彼から滞在の許可を得たものの、引き替えに提示されたのは、彼との形だけの結婚だった!
ロザリーは、ポルトガル沖の島ヴォース・ド・マールへやってきた。島の領主ドゥアルテ・アルド公爵の娘の家庭教師として、小宮殿と呼ばれる屋敷に住み込みで働くためだ。初めて会った公爵は見上げるほど背が高く威圧的で、聞けば、6年前に悲劇的な事故で妻を亡くしたという。ロザリーは、彼の謎めいた黒い瞳に見つめられるのが苦手だった。なぜか落ち着かない気分になり、つい生意気なことを言ってしまうのだ。馴染みのない感情をもてあまし、ロザリーはひとりピアノを弾いた。夕闇の中、公爵がじっと耳を傾けていることに気づいたとき、彼が言った。「誰か、愛する男を思って弾いていたのだろう?」
天涯孤独のメリーは病院で働き、ひっそりと暮らしていた。ある日、メリーの輸血で救われた患者ジュールダンの熱心な誘いで、食事に出かけることになり、そこで上流階級の彼から、偽装結婚を申し込まれる。娘の親権のために、後腐れのない彼女を妻役に選んだだけーそうと知りながらも、生まれて初めて優しくされて、一回り以上も年上のジュールダンに次第に惹かれていくメリー。ところが、彼の元妻が再婚し、娘の親権が取れなくなってしまう。用済みになったメリーは、別離の予感に小さく震えた…。
“ただちに来てくれ。君の妹は助けを必要としている” 修道院へ入る直前、敬虔なクリスチャンの看護師ドミニクは、 妹の嫁ぎ先であるイタリアのロマノス家から火急の知らせを受けた。 美しく華やかで、陽気なあの子にいったいなにがあったの? サン・サビーナに到着し、船のタラップを下りた瞬間、 高級車の脇に立ち、彼女を尊大に眺めまわしている男が目に入った。 あの人が妹の夫の兄で、ロマノス家の家長ドン・プレシディオ……。 このときドミニクはまだ知るよしもなかった。 一生を神に捧げるという誓いが、 プレシディオによって、根底から揺さぶられることになろうとは。 容姿に恵まれず、人々のために尽くすことに生き甲斐を見いだし、修道院に入る決意をしていたヒロイン。けれど傲慢で皮肉屋のヒーローと出会って、燃えるような愛に目覚め……。稀代のストーリーテラー、V・ウィンズピアの大ヒット作をお贈りします。
スペインの病院で目覚めたとき、アラベルは記憶を失っていた。見舞いに来たコルテスに夫だと言われても、何も思い出せない。それどころか、地元の名士だという尊大そうな夫の顔は、アラベルをひどく落ち着かない気持ちにさせるのだ。だれかほかに愛した人がいたような気がして…。連れて帰られた豪奢な屋敷で、コルテスに執拗に体を求められて、否応なく甘美な夢を与えられるけれど、なぜかむなしさが募る。ある日、夫の愛人と名乗る女性に、金の籠に入った鳥を見せられ、アラベルは思わず悲鳴を呑み込んだ。もしかしてこれが私なの?