著者 : 上田岳弘
謎めいた「神話」が IT企業を舞台によみがえる── 現代のカフカ的傑作! そのYouTuberは「予言」する。 世界の危機を回避し、人類が進むべき方向を指し示すために。 かつて存在した「完璧な文章」を取り戻すために。 「この世界は、生きるに値するのだろうか?」 会社員からトップYouTuberに転身した元後輩の桜井君。またの名を、「YouTuberロボット」。 IT企業の幹部としてプロジェクトに忙殺される日々を送る「僕」の前に、再び彼が現れた──。
久島は、情報も欲望もそつなく処理する「血も涙もない的確な現代人」として日常を生きている。だが、学生時代に手紙を交わしつづけた望未だけが、人生唯一の愛として、いまだ心を離れない。望未は手紙の始まりで必ず「最愛の」と呼びかけながらも、常に「私のことは忘れて」と願い、何度も久島の前から姿を消そうとした。今その願いを叶えるべく、久島は自分のためだけの文章を書き始めるー。代替不可能な存在に出会うことは、呪いか、それとも祝福か。超越的恋愛小説!
数々の企業の上場にCFO(最高財務責任者)として関わったことで巨富を得て、半ば人生を上がってしまった行先馨。経済的には充足しつつも深い孤独を抱える彼女は、マミヤと名乗る弁護士から「人間からはみ出した方が良い」と告げられ、奇妙なペントハウスに招待される。そこでは中国を統一した「始皇帝」や、水からガソリンを精製した「本多維富」を自称する者たちが、カードゲームに興じていた。はたして彼らは何者なのか。そして人間は、欠落や孤独から解放されることで、ネクストステージへ進むことは真に可能なのか。芥川賞作家が鋭い筆致で挑む、超現実の新地平。
コロナ禍中の日々を映す4つのストーリー。 芥川賞作家・上田岳弘、初めての短篇集。 【収録作品】 「悪口」 恋人と過ごすホテルでのゴールデンウィーク。「じゃあ、悪口の練習しよっか?」。僕は初めて彼女と会った時のことを思い出す。 「つくつく法師」 朝の散歩は4歳の息子との日課だ。午後、僕は古いPCで、昔書いた小説を読み返す。 「ボーイズ」 10歳と6歳のボーイズは、亀甲柄と市松模様のマスクでやって来た。弟の息子たちを預かることになった夫婦の夏。 「旅のない」 「作家さんなんですよね?」。出張先での車中、会話が途切れると取引先の村上さんが聞いてきた……。
【概要】 この本はあなたの本棚のために特別に作られました──。 西崎憲がプロデュースする短文集シリーズ〈kaze no tanbun〉第一弾。現代最高の文章家17人が「特別ではない一日」をテーマに、小説でもエッセイでも詩でもない「短文」を寄せました。作品同士が響き合い、まるで一篇の長編作品のようにも読めるかつてない本です。 【kaze no tanbunとは】 「自分の生涯においてこれを作ったと自慢できる本を作りたい」。日本翻訳大賞の発起人であり、電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」主宰、そして文芸ムック『たべるのがおそい』編集長をつとめた西崎憲の発案からスタートした、全篇新作の「短文」アンソロジーシリーズ。「短文」とは「小説でもエッセイでも詩でもない、ただ短い文。しかし広い文」(西崎氏)。全3冊を予定。シリーズ通してブックデザインは奥定泰之。 山尾悠子 「短文性について1」 岸本佐知子「年金生活」 柴崎友香 「日壇公園」 勝山海百合「リモナイア」 日和聡子 「お迎え」 我妻俊樹 「モーニング・モーニング・セット」 円城塔 「for Smullyan」 皆川博子 「昨日の肉は今日の豆」 上田岳弘 「修羅と」 谷崎由依 「北京の夏の離宮の春」 水原涼 「Yさんのこと」 山尾悠子 「短文性について2」 円城塔 「店開き」 小山田浩子「カメ」 滝口悠生 「半ドンでパン」 高山羽根子「日々と旅」 岡屋出海 「午前中の鯱」 藤野可織 「誕生」 西崎憲 「オリアリー夫人」
さあ、今から「世界最終戦争」を始めよう。人類を終わりにするために。平凡な医師の僕が突然拉致された先では、世界の趨勢を巡る暗闘が繰り広げられていた。その中心には、長年寝たきりのはずの祖父がいるという。そして明かされる祖父の秘密、それは人類を一つに溶かすという使命なのだがー超越系文学の旗手がその全才能を注ぎ、Yahoo! JAPANでの同時連載も話題となった、芥川賞受賞第一作。
第160回芥川賞受賞作。 NHK総合「おはよう日本」 インタビューシリーズ「令和に生きる」に著者出演で大反響! それでも君はまだ、人間でい続けることができるのか。 あらゆるものが情報化する不穏な社会をどう生きるか。 新時代の仮想通貨小説! 仮想通貨をネット空間で「採掘」する僕・中本哲史。 中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の恋人・田久保紀子。 小説家への夢に挫折した同僚・ニムロッドこと荷室仁。…… やがて僕たちは、個であることをやめ、全能になって世界に溶ける。「すべては取り換え可能であった」という答えを残して。 …… 「すごく好きです。胸がつまって泣きそうになりました。」--島本理生さん (TBS系毎週土曜日あさ9:30〜放送中「王様のブランチ」より ) 【芥川賞選考委員絶賛、選評より】 「地上から塔の頂上へと、軽々と読者を運んでいく垂直の跳躍力こそがこの作家最大の魅力である。」--吉田修一さん 「ここには小説のおもしろさすべてが詰っている。」--山田詠美さん 【各メディアで書評続々掲載中】 朝日新聞、讀賣新聞、毎日新聞、日経新聞、東京新聞、京都新聞、産経新聞、赤旗、共同通信、週刊朝日、週刊新潮、東京新聞、ダ・ヴィンチ…。
一人目は恐るべき正確さで世界の未来図を洞窟の壁に刻んだクロマニョン人。二人目は大戦中、収容所で絶命したユダヤ人。いずれも理想の女性を胸に描きつつ34年で終えた生を引き継いで、平成日本を生きる三人目の私、井上由祐は35歳を過ぎた今、美貌のキャロライン・ホプキンスに出会う。この女が愛おしい私の恋人なのだろうか。10万年の時空を超えて動き出す空前の恋物語。三島賞受賞作。
予備校仲間と勉強合宿のさなか、阪神大震災で初恋の相手とともに、倒壊したホテルに生き埋めとなった僕は、ひとり生還したのち、失われた彼女の記憶を抱えて生きていた。20年後、Facebookを通じて再会した大学の旧友は、そんな僕に、「今日は美希子を呼んでいるんだ」と持ちかけた。表題作と響きあう2つの短篇併録。
ねえ、神様。あんたにやってもらいたいことがある。世界を正しいあり方に戻すんだ。阪神大震災を予言し、信者を増やす淡路島の新興宗教。教祖Sはイザナキ、イザナミの国生みの地で、新たな世界創世を説いていた。ある日、アメリカ西海岸の秘密組織から男たちが訪ねてくる。彼らは何を企んでいるのか。すべてを見通す僕とは、いったい何者か? 世界のひずみが臨界点に達したとき、それは起きたーー。大注目の芥川賞候補作。
時空を超えて転生する「私」の10万年越しの恋。旧石器時代の洞窟で、ナチスの収容所で、東京のアパートで、私は想う。この旅の果てに待つ私の恋人のことをーー。アフリカで誕生した人類はやがて世界を埋め尽くし「偉大なる旅」一周目を終える。大航海時代を経て侵略戦争に明け暮れた二周目の旅。Windows95の登場とともに始まった三周目の旅の途上で、私は彼女に出会った。
アフリカの赤ちゃん工場、新宿のデリヘル、パリの蚤の市、インドの湖畔。地球上の様々な出来事が交錯し、飽くなき欲望の果て不老不死を実現した人類が、考えうるすべての経験をし尽くしたとき、太陽による錬金術が完成した。三島賞選考会を沸かせた新潮新人賞受賞作「太陽」と、対をなす衝撃作「惑星」からなるデビュー小説集!