著者 : 上田早夕里
舞台は室町、播磨の国。 律秀・呂秀の兄弟は、庶民を相手に、病者を診て、薬を方じ、祈禱によって物の怪や禍を退ける法師陰陽師である。 彼らはある日、地元の農民から相談を受ける。曰く、「川で砂鉄を拾っていると、皆が一斉に転ばされるのです」。 兄弟が川へ入ると、向こう岸に見えたのは怒れる坊主たちの姿だった……⁉ 徐々に明らかになるのは、裏で糸を引く「蒲生醍醐」なるはぐれ陰陽師の存在。 彼は人間に恨みを持つ山河の生き物に術をかけ、人間たちを襲わせていたのだ。 さらに、播磨国に伝わる巨鹿の妖怪・伊佐々王を復活させ、さらなる大混乱を起こそうとしていたーー。 蒲生醍醐の正体とは? そして、式神・あきつ鬼の前世とは何なのか?
1934年上海。「魔都」と呼ばれるほど繁栄と悪徳を誇ったこの地に成功を夢見て渡ってきた日本人の青年・吾郷次郎。彼の許を謎めいた日本人女性が訪ねる。ユキヱと名乗るその女が持ちこんだのは、熱河省産の極上の阿片と芥子の種。次郎は阿片の売買を通じて上海の裏社会を支配する青幇の知己を得て、上海の裏社会に深く踏み入っていく。栄光か。破滅か。夜に生きる男たちを描いた、上海ピカレスク。
舞台は室町時代、播磨国。律秀・呂秀の兄弟は、庶民を相手に病を診て、薬を方じ、祈祷によって物の怪を退ける法師陰陽師。だが、実際に物の怪が見えているのは弟の呂秀だけだった。ある晩、呂秀のもとに恐ろしい異形の鬼が現れる。鬼は、かつて蘆屋道満に仕えた式神で、三百年以上も新たな主を求めていたのだったー。新たな陰陽師ものの誕生!
一九三九年、上海。蒋介石と和平交渉にあたってきた工作機関の責任者・小野寺信陸軍中佐は、別ルートで中国と交渉を行っていた影佐禎昭陸軍大佐からの抗議によって、その道を絶たれてしまう。失意の小野寺から交渉を引き継いだのは、盧溝橋事件で停戦交渉に尽力した今井武夫陸軍大佐だった。小野寺の工作に関わってきた民間人の倉地スミや生物学者の森塚たちは、今井大佐から、これから行う和平交渉を手伝ってほしいと頼まれる。それは蒋介石に繋がる人脈の中から協力者を探すことと、和平の密書を届けるというものだったー。
一九四三年、上海。「魔都」と呼ばれるほど繁栄を誇ったこの地も日本軍に占領され、かつての輝きを失っていた。上海自然科学研究所で細菌学科の研究員として働く宮本は、日本総領事館からある重要機密文書の精査を依頼される。驚くべきことにその内容は、「キング」と暗号名で呼ばれる治療法皆無の細菌兵器の論文であり、しかも前後が失われた不完全なものだった。宮本は、陸軍武官補佐官の灰塚少佐の下で治療薬の製造を任されるものの、即ちそれは、自らの手で究極の細菌兵器を完成させるということを意味していたー。
愚かで愛おしい人類の歴史を見守る不死の「伯爵」と少女リラ。彼らの旅路に巻き込まれた兵士は、やがて世界を変える夢を見るーー『破滅の王』の著者が壮大なスケールでおくる歴史ファンタジー!
ある日、街に現れたイソギンチャクのような頭を持つ奇妙な生物。不思議な曲を奏でるそれは、みるみる増殖していく。その美しい歌声は人々を魅了するが、一方で人間から大切な何かを奪い去ろうとしていた。(表題作)人と人あらざるもの、呪術と科学、過去と未来。様々な境界上を自在に飛翔し、「人間とは何か」を問う。収録作すべてが並々ならぬ傑作!奇跡の短篇集。
生態系が一変した未来の地球、その熱帯雨林で少女は暮らす。“カナピウム”と呼ばれる地上四十メートルの林冠部には多彩な動植物が集まり、少女たちは彼らが発散する匂いを手掛かりに、しなやかに樹上を跳び回る。ある日やってきた旅の者たち、そして森に与えられた試練。少女の季節は大人へと巡っていく。
一九四三年、上海。かつては自治を認められた租界に、各国の領事館や銀行、さらには娼館やアヘン窟が立ち並び、「魔都」と呼ばれるほど繁栄を誇ったこの地も、太平洋戦争を境に日本軍に占領され、かつての輝きを失っていた。上海自然科学研究所で細菌学科の研究員として働く宮本は、日本総領事館から呼びだされ、総領事代理の菱科と、南京で大使館附武官補佐官を務める灰塚少佐から重要機密文書の精査を依頼される。その内容は驚くべきものであった。「キング」と暗号名で呼ばれる治療法皆無の細菌兵器の詳細であり、しかも論文は、途中で始まり途中で終わる不完全なものだった。宮本は治療薬の製造を任されるものの、それは取りも直さず、自らの手でその細菌兵器を完成させるということを意味していたー。
いまや真朱の街は、妖怪“濁”が持つ無数の腕によって完全に包囲されていた。人々の憎悪を糧に強大化し続ける“濁”。県警の忌島らの奮闘もむなしく、力の弱い妖怪や人間たちが次々とその餌食にされていった。拝み屋・播磨遼太郎と百目ら妖怪たちは、ついに手を結び、最強最悪の敵に立ち向かってゆくー。凄絶な最終決戦の結末は!?人気シリーズ待望の完結編!
戦渦を駆ける少年は出会う。戦局を左右するのは、謎の少女か、海に潜む異形か。日本SF大賞作家が放つ歴史海洋冒険小説。トラファルガー海戦×ボーイ・ミーツ・ガール! 日本SF大賞受賞、「SFが読みたい!2011年版」第1位に輝いた『華竜の宮』の著者が、はじめて歴史ファンタジーに挑む。19世紀初頭、ナポレオン戦争における最大の海戦・トラファルガー海戦を舞台に、縦横無尽の想像力が炸裂する! 戦渦を駆ける少年は出会うーー。戦局を動かすのは、謎の少女か、海に潜む異形のモノか。 日本SF大賞作家が放つ歴史海洋冒険小説。トラファルガー海戦×ボーイ・ミーツ・ガール! 歴史のうねりに奇想のうねりが重なって、神話のように美しく惨たる海戦が顕現した! --皆川博子氏 日本SF大賞受賞、「SFが読みたい!2011年版」第1位に輝いた『華竜の宮』の著者が、 ナポレオン戦争における最大級の戦い、トラファルガー海戦を舞台に、縦横無尽の想像力を炸裂させる! 19世紀初頭。英海軍に徴集された天涯孤独の少年トビーは、交戦中に遭難し、見たことのない船に救出される。 そこで働くのは、主に十代二十代の子供や若者たち。セント・イージス号ーー世界に先駆けた新技術を搭載する、極秘任務を帯びた軍艦だった。 謎の少女ファーダと出会い、トビーの世界は大海原へ、そして激化する戦闘へと開かれていく。 序章 第一章 コペンハーゲンの海戦 第二章 聖なる盾 第三章 イギリス海軍委員会艦政本部 第四章 地中海の蛇 第五章 従軍 第六章 トラファルガルの海戦 終章
牛鬼と死闘を演じ、かまいたちの風鎌を土に還した男。拝み屋・播磨遼太郎は、真朱の街の妖改たちにとって最も警戒すべき敵だ。百目と助手の邦雄は、その謎に包まれた過去を探ってゆくのだが…。一方、県警妖怪対策課の忌島は、播磨から想像を絶する話を明かされる。人間のみでなく妖怪をも食う恐るべき妖怪“濁”を倒すための計画とは?人気沸騰シリーズ第二弾!
赤道直下の熱帯雨林、地上四十メートルの林冠部が〈カナピウム〉と名付けられた未来。 豊かなる生態系を誇る樹上には、多彩な生物が集まっていた。生命の坩堝たるこの場所で生きる少女たちは、枝から枝へしなやかに跳ぶーー。やがて〈巡りの者〉と出会った少女たちは恋を知り、ともに森を襲う試練と闘っていく。 日本SF大賞を受賞したSF巨編『華竜の宮』で人類滅亡の危機と闘いもがく人々を描き話題を呼んだ著者が初めて紡ぐ、たおやかなる少女のビルドゥングスロマン。 イラストレーション:鈴木康士
絶世の美女にして全身に百の眼を持つ妖怪・百目。彼女の探偵事務所は、妖怪と人間が共存する“真朱の街”にある。請け負う事件は、すべて妖怪がらみ。依頼人は、報酬を自分の寿命で払うのが決まりだ。助手の相良邦雄は、時々百目に寿命を吸われつつ、事件解決にこき使われる日々を送るのだが…。数多のもののけたちが跳梁跋扈する、妖怪ハードボイルド第一弾!
支援団体“パンディオン”の理事長・青澄は、陸と海との対立を解消するため、“ラブカ”の指導者のひとりザフィールとの接触を試みた。だが、海上民の悲惨な現実に絶望してラブカの指導者への道を選んだザフィールは、交渉による和平への道を徹底的に拒否し続ける。その背後にさらに深い闇が隠されていることを青澄は独自の経路で知るようになる。不穏な社会状況が続く中、人類の記録と生命の種を系外惑星に送り込む計画に共感した星川ユイは、深宇宙研究開発協会の門戸を叩くが、協会もまた、部品調達の困難や世論の批判によって多くの問題を抱えていた…。苛烈な闘争の時代に己の信念を貫く者達が、この星に生の輝きを灯す究極の黙示録巨篇。