著者 : 京極夏彦
少女たちを襲った悍ましい事件から三箇月。来生律子の許を訪れた作倉雛子は、小壜に入った“毒”を托し姿を消した。相次ぐ殺傷事件、三十数年前の一家惨殺事件との奇妙な符号、彼女らを監視する何者かの影。少女たちは再び動き出す。巧緻に張り巡らされた伏線が思いもよらぬ収束を見せるシリーズ第二弾。
人と人との物理的接触が極めて希薄な高度情報化社会。清潔で完璧なはずの日常で起きた連続殺人事件が十四歳の少女達を覚醒させる。世界のすべてだと思っていた端末が“鎖”だと気づいたとき、牧野葉月は初めて友達と繋がる。真実を求める少女達を殺人鬼が狙う。“忌避すべき狼”の正体とは?シリーズ第一弾。
元デザイナーで小説家の「僕」は、知人友人からよく相談を受ける。「ナッちゃんはそういうの駄目な口やろ」と笑いながら、デザイン学校時代の年上の同輩、御木さんは奇妙な話を始めた。十三歳のときに山崩れで死んだ妹が、年老い、中学の制服を着て、仕事先と自宅に現れたというのだ。だが彼の話には、僕の記憶と食い違いがありー(「クラス」)。この現実と価値観を揺るがす、全9篇の連作集。
藩の剣術指南役・桐生家に生まれた作之進には、右腕がない。元服の夜、父は厳かに言った。「お前の腕を斬ったのは儂だ」。一方、柔らかで幸福な家庭で暮らす“私”は何故か、弟を見ていると自分の中に真っ黒な何かが涌くのを感じていた。ある日、私は見てしまう。幼い弟の右腕を掴み、表情のない顔で見下ろす父を。過去と現在が奇妙に交錯する「鬼縁」ほか、情欲に囚われ“人と鬼”の狭間を漂う者たちを描いた、京極小説の神髄。
いく度も奉公先を追われる美しい娘・菊。慾のない菊の姿はやがて、つねに満ち足りない旗本青山家当主・播磨の心に触れるが、菊の父親の因果や、播磨の暗い人間関係が、二人を凄惨な事件に突き落とす。数えるから、足りなくなるー欠けた皿と心の渇きに惑う人々が織りなす、今まで語られなかった「皿屋敷」の真実。
同居の老人の奇行に悩まされ追い詰められた主婦が、一線を越えた末に信じがたい事実を知ることになる(「厭な老人」)。静かな部屋で時を告げる古い鳩啼時計には、遠く離れた恋人との悲劇の結末が隠されていた(「鳩啼時計」)など、歴史ある日本推理作家協会賞を受賞し、ミステリー界が誇る作家六名による、幻想と怪奇に彩られた物語を収録した珠玉作短編集シリーズ第五弾。
明治二十年代中頃、東京の外れに佇む三階建ての灯台のような異様な本屋「書楼弔堂」。無数の書物が揃うその店で、時代の移り変りの中で迷える人々と彼らが探し求める本を店の主人が引き合わせていく。
明治三十年代初頭。古今東西の書物が集う書舗に導かれる、一人の若き女性。語は呪文。文は呪符。書物は呪具。足りぬ部分を埋めるのは、貴方様でございますー。彼らは手に取った本の中に、何を見出すのか?
揺るぎ無いはずの「日常」が乱れる時、人は心の奥に潜む「闇」と直面する。意識の底に産まれた「妖怪」が精神を喰らう。女の手を忌む教師。十糎ほどの小さな女を幻視する病気がちの女。自分を覗く視線に恐怖する職人。煙に憑かれた火消し。海を厭う私小説作家。人が出合う「恐怖」の形を多様に描き出す怪異譚ー。