著者 : 京極夏彦
盛岡藩筆頭家老にして遠野南部家当主の密命を受けた宇夫方祥五郎は、巷に流れる噂話を調べていた。郷が活気づく一方で、市場に流れる銭が不足し困窮する藩の財政に、祥五郎は言い知れぬ不安を感じる。ある日、世事に通じる乙蔵から奇異な話を聞かされた。菓子司山田屋から出て行った座敷童衆、夕暮れ時に現れる目鼻のない花嫁姿の女、そして他所から流れて迷家に棲みついた仲蔵という男。祥五郎のもとに舞い込む街談巷説、その真偽はー。
昭和29年3月に起きた連続通り魔「昭和の辻斬り事件」。「稀譚月報」記者・中禅寺敦子は事件を通じて女学生・呉美由紀と知り合い、その年、続々発生する怪事件に関わることになる。「鬼の因縁で斬り殺される」「河童の仕業で連続水死」「高尾山中で天狗攫いが」。怪奇が、事件の真相を呼び起こす「稀譚小説」。
72歳の益子徳一は定年退職後、公団アパートで一人暮らし。誰かに優しく「オジいサン」と呼びかけられたことを思い出したり、大した用もないのに訪ねてくる田中電気の2代目と言い合いしたり、調子に乗って変な料理を作ったりー。1日1日をきちんと大事に、そしてあるがままに生きる徳一は、何気ない日常の中で、ささやかだけれど大切なことに気づいてゆく。ほっこり笑えてちょっぴり胸が温まる、連作短編集。
明治三十年代初頭。人気のない道を歩きながら考えを巡らせていた女学生の塔子は、道中、松岡と田山と名乗る二人の男と出会う。彼らは幻の書店を探していてー。迷える人々を導く書舗、書楼弔堂。田山花袋、平塚らいてう、乃木希典など、後の世に名を残す人々は、出会った本の中に何を見出すのか?移ろいゆく時代を生きる人々の姿、文化模様を浮かび上がらせる、シリーズ待望の第二弾!
昭和二十九年八月、是枝美智栄は高尾山中で消息を絶った。約二箇月後、群馬県迦葉山で女性の遺体が発見される。遺体は何故か美智栄の衣服をまとっていた。この謎に旧弊な家に苦しめられてきた天津敏子の悲恋が重なり合い──。『稀譚月報』記者・中禅寺敦子が、篠村美弥子、呉美由紀とともに女性たちの失踪と死の連鎖に挑む。天狗、自らの傲慢を省みぬ者よ。憤怒と哀切が交錯するミステリ。
「そうですね。その河童がーー誰かと云うことです」 「河童が誰かって、中禅寺さんあんた」 小山田は顔を顰めた。 昭和29年、夏。 複雑に蛇行する夷隅川水系に、次々と奇妙な水死体が浮かんだ。 3体目発見の報せを受けた科学雑誌「稀譚月報」の記者・中禅寺敦子は、薔薇十字探偵社の益田が調査中の模造宝石事件との関連を探るべく現地に向かった。 第一発見者の女学生・呉美由紀、妖怪研究家・多々良勝五郎らと共に怪事件の謎に迫るがーー。 山奥を流れる、美しく澄んだ川で巻き起こった惨劇と悲劇の真相とは。 百鬼夜行シリーズ待望の長編!
「先祖代代、片倉家の女は殺される定めだとか。しかも、斬り殺されるんだと云う話でした」昭和29年3月、駒澤野球場周辺で発生した連続通り魔・「昭和の辻斬り事件」。七人目の被害者・片倉ハル子は自らの死を予見するような発言をしていた。ハル子の友人・呉美由紀から相談を受けた「稀譚月報」記者・中禅寺敦子は、怪異と見える事件に不審を覚え解明に乗り出す。百鬼夜行シリーズ最新作。
「死にたいんーです」「なら死ねよ」。娘を亡くし、妻だった人に去られ、十五年勤めた会社を解雇された。全てを失い彷徨していた尾田慎吾は、雨の夜、自殺を図る見知らぬ女にそう告げた。同日、旧友荻野と再会する。彼は、情、欲望、執着を持たぬ慎吾を見込んで、宗教を仕事にしないかと持ちかける。謎めいた荒れ寺に集いし破綻者たち。仏も神も人間ではない。超・宗教エンタテインメント。
読みまどい、辿りつけ。きっとあるはずだ。竹林(と美女)の理想郷が。十人の人気作家による「美女と竹林」モチーフの新作短編集。
シリアの砂漠に現れた謎の男。旧日本兵らしき軍服に、五芒星が染め付けられた白手袋。その男は、古今東西の呪術と魔術を極めた魔人・加藤保憲であった!妖怪専門誌『怪』の編集長と共に水木プロを訪れたアルバイトの榎木津平太郎は、水木しげるの叫びを聞いた。「妖怪や目に見えないモノが、ニッポンから消えている!」と。だがその言葉とは逆に、妖怪が次々と姿を現し、日本は大混乱に陥ってゆく。驚異の実名小説、ここに開幕!
富士の樹海。魔人・加藤保憲の前に、ある政治家が跪いていた。太古の魔物が憑依したその政治家に、加藤は言い放った。この国を滅ぼす、と。妖怪が出現し騒動が頻発すると、政府は妖怪を諸悪の根源と決めつけ駆逐に乗り出す。世相は殺伐とし民衆は暴力的となり、相互監視が始まった。この異常事態の原因究明のため、『怪』関係者は居酒屋に集い、信州山中で入手した、呼ぶ子を出現させる謎の石の秘密を解き明かそうとするが…。
妖怪研究施設での大騒動を境に、妖怪は鳴りを潜めていた。政府は妖怪殱滅を宣言すると、不可解な政策を次々と発表。国民は猜疑心と攻撃性に包まれてゆく。妖怪関係者は迫害を逃れて富士山麓に避難するが、荒俣宏や榎木津平太郎は、政府の特殊部隊によって捕縛されてしまう。平太郎らは、妖怪出現の謎、そして日本を殺伐とさせる真の要因を突き止められるか?加藤保憲、妖怪、軍隊、妖怪関係者が入り乱れた“大戦争”が始まる!