著者 : 京極夏彦
特集は「幽玄鉄道」。鉄道好き作家・有栖川有栖との旅企画、一穂ミチによる新作怪談、澤村伊智×田辺青蛙の探訪企画など。連載も「怪と幽」でしか読めない豪華執筆陣。お化けを愉しみ、お化けを読むなら「怪と幽」! === 特集 幽玄鉄道 「いま・ここ」から別の地へと、我々を運び、繋いでくれる鉄道。それはともすれば、異界との幽玄なる接続口。鉄道は、日常生活から私たちを解き放ち、異なる世界に誘ってくれる装置であり、未知なる文化や存在を運んでくるものでもある。沿線の土地と密接に結びついた旅情や郷愁も味わい深い。そして、日常のなかの鉄道であっても、その運行は人のいのちを預かる仕事。数多くの人生を乗せて今日も列車は走っているのだ。いのちが行き交う所では、怪しい話もまた生まれる。この世とあの世の架け橋となるような、幽玄なる鉄道世界の旅へ、いざ、出発進行! 【ルポ&エッセイ】有栖川有栖 【新作怪談】一穂ミチ 【ルポ】澤村伊智×田辺青蛙 【インタビュー】三上 延 【寄稿】伊藤龍平 【駅ガイド】村上健司 【対談】竹本勝紀×登龍亭獅鉄 【ブックガイド】千街晶之 【名作怪談】江戸川乱歩 + 【グラビア】霧にむせぶトンネル駅 ●表紙 えちごトキめき鉄道「雪月花」 特集のほか、連載など多数! 【小説】京極夏彦、有栖川有栖、澤村伊智、堀井拓馬 【漫画】諸星大二郎、高橋葉介、押切蓮介 【論考・エッセイ】東 雅夫、村上健司&多田克己 【怪談実話】ひびきはじめ、煙鳥、松永瑞香 【グラビア】玉川麻衣、芳賀日出男+芳賀日向、佐藤健寿、怪食巡礼 【情報コーナー】ヒグチユウコ×名久井直子、我孫子武丸、加門七海、梨、廣田龍平、近藤瑞木、齋藤靖朗、香川雅信、藤川 Q etc.… ・特集 【ルポ&エッセイ】有栖川有栖と行く幻想鉄道旅 【新作怪談】一穂ミチ 「もう忘れます」 【ルポ】澤村伊智×田辺青蛙とめぐる廃線敷探訪 【インタビュー】三上 延 「内田百けん「阿房列車」の魅力 -鉄道旅と怪異ー」 【寄稿】伊藤龍平 「鉄道怪談 今昔物語 -「偽汽車」から「きさらぎ駅」までー」 【駅ガイド】村上健司 「日本全国 妖怪に会える駅ガイド」 【対談】竹本勝紀×登龍亭獅鉄 「鉄道員が語る怪談」 【ブックガイド】千街晶之 「鉄路は異界へと続く --鉄道怪談傑作ガイド」 【名作怪談】江戸川乱歩 「押絵と旅する男」 + 【グラビア】霧にむせぶトンネル駅 ※「内田百けん」は誌面では漢字表記です
古今東西の書物が集う墓場。 明治の終わり、消えゆくものたちの声が織りなす不滅の物語。 花も盛りの明治40年ーー高遠彬の紹介で、ひとりの男が書舗「弔堂」を訪れていた。 甲野昇。この名前に憶えがあるものはあるまい。故郷で居場所をなくし、なくしたまま逃げるように東京に出て、印刷造本改良会という会社で漫然と字を書いている。そんな青年である。 出版をめぐる事情は、この数十年で劇的に変わった。鉄道の発展により車内で読書が可能になり、黙読の習慣が生まれた。黙読の定着は読書の愉悦を深くし、読書人口を増やすことに貢献することとなる。本は商材となり、さらに読みやすくどんな文章にもなれる文字を必要とした。どのようにも活きられる文字ーー活字の誕生である。 そんな活字の種字を作らんと生きる、取り立てて個性もない名もなき男の物語。 夏目漱石、徳富蘇峰、金田一京助、牧野富太郎、そして過去シリーズの主人公も行きかうファン歓喜の最終巻。 残念ですがご所望のご本をお売りすることは出来ませんーー。 【目次】 探書拾玖 活字 探書廿 複製 探書廿壱 蒐集 探書廿弐 永世 探書廿参 黎明 探書廿肆 誕生 【著者略歴】 京極夏彦 きょうごく・なつひこ 1963年生まれ。北海道小樽市出身。 日本推理作家協会 第15代代表理事。世界妖怪協会・お化け友の会 代表代行。 1994年『姑獲鳥の夏』で衝撃的なデビューを飾る。1996年『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞長編部門、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2000年 第8回桑沢賞、2003年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年 『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞、2016年 遠野文化賞、2019年 埼玉文化賞、2022年 『遠巷説百物語』で第56回吉川英治文学賞を受賞。
幽晦との境界がーー破れている。 内部の薄明が昏黒に洩れている。 ならばそこから夜が染みて来る。 生まれてこのかた笑ったこともない生真面目な浪人、伊右衛門。疱瘡を病み顔崩れても凛として正しさを失わない女、岩ーー四谷怪談を江戸の闇に花開く極限の愛の物語へと昇華させた第25回泉鏡花文学賞受賞作。「巷説百物語」シリーズ・御行の又市の物語はここから始まった。 〈解説〉高田衛 〈対談〉高田衛×京極夏彦「生きている怪談」
人の心は分かりませんが、 それは虫ですねーー。 ときは江戸の中頃、薬種問屋の隠居の子として生まれた藤介は、父が建てた長屋を差配しながら茫洋と暮らしていた。八丁堀にほど近い長屋は治安も悪くなく、店子たちの身持ちも悪くない。ただ、店子の一人、久瀬棠庵は働くどころか家から出ない。年がら年中、夏でも冬でも、ずっと引き籠もっている。 「居るかい」 藤介がたびたび棠庵のもとを訪れるのは、生きてるかどうか確かめるため。そして、長屋のまわりで起こった奇怪な出来事について話すためだった。 祖父の死骸のそばで「私が殺した」と繰り返す孫娘(「馬癇」)、急に妻に近づかなくなり、日に日に衰えていく左官職人(「気癪」)、高級料亭で酒宴を催したあと死んだ四人の男(「脾臓虫」)、子を産めなくなる鍼を打たねば死ぬと言われた武家の娘(「鬼胎」)…… 「虫のせいですね」 棠庵の「診断」で事態は動き出す。 「前巷説百物語」に登場する本草学者・久瀬棠庵の若き日を切り取る連作奇譚集。 病葉草紙 目録 馬癇 気癪 脾臓虫 蟯虫 鬼胎 脹満 肺積 頓死肝虫
時は江戸。作事奉行・上月監物の屋敷の奥女中・お葉は、度々現れる男に畏れ慄き、死病に憑かれたように伏せっていた。彼岸花を深紅に染め付けた着物を纏い、身も凍るほど美しい顔のその男・萩之介は、“この世に居るはずのない男”だったー。この騒動を知った監物は、過去の悪行と何か関わりがあるのではと警戒する。いくつもの謎をはらむ幽霊事件を解き明かすべく、“憑き物落とし”を行う武蔵晴明神社の宮守・中禪寺洲齋が監物の屋敷に招かれる。謎に秘された哀しき真実とは?
〈憑き物落とし〉中禪寺洲齋。 〈化け物遣い〉御行の又市。 〈洞観屋〉稲荷藤兵衛。 彼らが対峙し絡み合う、過去最大の大仕掛けの結末はーー? 文学賞3冠を果たした〈巷説百物語〉シリーズ堂々完結! 下総国に暮らす狐狩りの名人・稲荷藤兵衛には、裏の渡世がある。 凡ての嘘を見破り旧悪醜聞を暴き出すことから〈洞観屋〉と呼ばれていた。 ある日、藤兵衛に依頼が持ち込まれる。老中首座・水野忠邦による大改革を妨害する者ども炙り出してくれというのだ。 敵は、妖物を操り衆生を惑わし、人心を恣にする者たちーー。 依頼を引き受け江戸に出た藤兵衛は、化け物遣い一味と遭遇する。 やがて武蔵晴明神社の陰陽師・中禪寺洲齋と出会い、とある商家の憑き物落としに立ち会うこととなるがーー。 戌亥乃章 於菊蟲 申酉乃章 柳婆 午未乃章 累 辰巳乃章 葛乃葉 或いは福神ながし 寅卯乃章 手洗鬼 子丑乃章 野宿火 空亡乃章 百物語
殺人の記憶を持つ娘に惑わされる作家。消えた三つの他殺体を追う刑事。妖光に翻弄される学僧。失踪者を追い求める探偵。死者の声を聞くために訪れた女。そして見え隠れする公安の影。発掘された古文書の鑑定に駆り出された古書肆は、縺れ合いキメラの如き様相を示す“化け物の幽霊”を祓えるか。
殺人の記憶を持つ娘に惑わされる作家。消えた三つの他殺体を追う刑事。妖光に翻弄される学僧。失踪者を追い求める探偵。死者の声を聞くために訪れた女。そして見え隠れする公安の影。発掘された古文書の鑑定に駆り出された古書肆は、縺れ合いキメラの如き様相を示す“化け物の幽霊”を祓えるか。『姑獲鳥の夏』から30年ーついに顕現、「京極小説」最新大巨編!
舞台は明治30年代後半。鄙びた甘酒屋を営む弥蔵のところに馴染み客の利吉がやって来て、坂下の鰻屋に徳富蘇峰が居て本屋を探しているという。 なんでも、甘酒屋のある坂を上った先に、古今東西のあらゆる本が揃うと評判の書舗があるらしい。その名は “書楼弔堂(しょろうとむらいどう)”。 思想の変節を非難された徳富蘇峰、探偵小説を書く以前の岡本綺堂、学生時代の竹久夢二……。そこには、迷える者達が、己の一冊を求め“探書”に訪れる。 「扠(さて)、本日はどのようなご本をご所望でしょう——」 日露戦争の足音が聞こえる激動の時代に、本と人との繋がりを見つめなおす。 約6年ぶり、待望のシリーズ第3弾! 【著者プロフィール】 京極夏彦(きょうごく・なつひこ) 日本推理作家協会 第15代代表理事。世界妖怪協会・お化け友の会 代表代行。 1963年北海道小樽市生まれ。94年『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞長編部門、97年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2000年第8回桑沢賞、03年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で第130回直木賞、11年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞、16年 遠野文化賞、19年 埼玉文化賞、22年『遠巷説百物語』で第56回吉川英治文学賞を受賞。
自分の目となり耳となって遠野保の民草の動向を見極め、逐一報告せよ。盛岡藩筆頭家老の密命を受け、御譚調掛として市井の噂話を蒐集する宇夫方祥五郎。座敷童衆に花嫁衣装を着たのっぺらぼう、火を吐く怪鳥、雪女。集まる「ハナシ」は虚実曖昧で荒唐無稽なものばかり。だが、迷家に棲む男と出会い、その裏に、法で裁けぬ悪を祓う小悪党たちが暗躍していたことを知ってしまったことからー。大好評巷説百物語シリーズ!第56回吉川英治文学賞受賞作。