著者 : 京極夏彦
この井戸は、無だ。 円い無を見詰める。 無からは、閑寂とした冷気が沁み出て来る。 ーー冥土から吹く風だ。 無垢な娘と満たされない侍、強欲な女の出会いが惨劇を呼ぶ。鬼才の筆で甦る「皿屋敷」怪談。著者ロングインタビューを収録。〈解説〉小二田誠二
特集一 昭和100年だョ!オカルト大集合 昭和のあの時代、流行したのは、UFO、UMA、霊能力者、心霊写真、ノストラダムスの大予言…。特に1970年代は、怪しく不思議なものがごちゃまぜになって世の中を盛り上げた、まさに「オカルトの時代」。お茶の間でも学校でも、誰もを虜にしたあの昭和オカルトブームは、一体何だったのだろうか。オカルトがメインカルチャーとして盛り上がった不思議な昭和を振り返りながら、今も受け継がれるオカルトの根源的な情熱、魅力を徹底解剖。 表紙=つのだじろう『恐怖新聞』より インタビュー:ユリ・ゲラー インタビュー:つのだじろう 鼎談:大槻ケンヂ×みうらじゅん×和嶋慎治 寄稿:横山茂雄 「いま振り返る昭和オカルト・ブームの実景」 対談:黒史郎×三上延 「ときめくぼくらの昭和オカルト本放談」 エッセイ:「ぼくらの昭和オカルトブーム」 新井素子、角田光代、加門七海、佐藤究、鈴木光司、平山夢明 ルポ漫画:山本さほ 「 〈まぼろし博覧会〉昭和探訪」 ルポ:カイトユウマン、未確認大先輩(つちのこ)に会いに行く! グラビア:〈まぼろし博覧会〉で体感する昭和 特集二 知っておきたい小泉八雲 『ばけばけ』を前に注目が更に集まる小泉八雲。多くの人が名前は知っている彼について、我々はいかほど知っているだろうか? もとの名はラフカディオ・ハーン、セツと結婚し日本に帰化。『怪談』を著した「おばけ好き」の「日本好き」。各国を転々とし日本に来た彼は、どのようにして「小泉八雲」となり、生きたのか。2025年のいま知るべきその生を、あらためて案内する。 対談:小泉凡×前川知大(劇団イキウメ) インタビュー:佐野史郎 案内:八雲年譜&ブックガイド 東雅夫 対談:円城塔×田辺青蛙 「八雲をめぐる作家夫婦漫談」 ◆特集のほか連載など多数 小説:京極夏彦、小野不由美、月村了衛、飴村行 漫画:諸星大二郎、高橋葉介、押切蓮介 論考・エッセイ:東 雅夫、村上健司×多田克己 怪談実話:加門七海(新連載)、伊藤龍平、小島水青、はおまりこ グラビア:吉田誠治、芳賀日出男+芳賀日向、佐藤健寿、怪食巡礼 情報コーナー:水上恒司×原 浩(『火喰鳥を、喰う』映画化)、綾辻行人×高橋郁子(朗読キネマ『眼球綺譚/再生』)、吉本ばなな(『ヨシモトオノ』)、杉井光(『羊殺しの巫女たち』)、宮崎夏次系(『カッパのカーティと祟りどもの愛』)、高橋大輔(『日本の人魚伝説』)、中川和(一旗「動き出す妖怪展 NAGOYA」)、杉背よい(三浦半島怪奇幻想文学倶楽部)、藤川 Q(化け通 『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』) etc.…
此の世に不可思議なことなどないと洲齋は言った。 「ないかの」 「ありません。起きた以上は必ずそうなるだけの理由があるのです。乾坤の間に理が通じぬものなど、ただの一つもありませんよ。 理が通じないのは、このーー 人の心だけ。 狐猟師の稲荷藤兵衛の裏の仕事は人の嘘を見抜く洞観屋。ある日、老中首座水野越前守の改革を邪魔する者をあぶり出せとの命を受ける。その者たちは奇手奇策を用いて衆生を惑わし、人心を恣にする化け物遣いというが……。 江戸の巷に暗躍する御行の又市一味の物語、堂々完結!
特集は「アラマタ伝 -帝都物語40周年ー」。荒俣宏×佐野史郎対談、「帝都物語」最終話の構想、荒俣宏年表など。表紙は丸尾末広による描き下ろし。連載も本誌でしか読めない豪華執筆陣。お化けを愉しみ、お化けを読むなら「怪と幽」! === 特集 アラマタ伝 -帝都物語40周年ー 1985年、荒俣宏による「帝都物語」シリーズの第1巻『帝都物語1 神霊篇』が刊行された。百年にわたる日本の歴史を、科学・都市計画・風水まで、著者の英知を注いで作られた本シリーズは大ヒット。実写映画化、OVA化もされ、社会現象を巻き起こした。陰陽道・神秘学などの知識を物語に取り込み社会に広く浸透させ、40年を経た今もなお、様々な作品や文化に多大なる影響を与えている。著者の荒俣氏自身も、幻想文学、図像学、博物学と、誰もが把握できないほど深淵な博覧強記ぶり、そして奇行の数々で知られ、今も変わらず各界をざわつかせ続けている。本特集では「知の巨人」、荒俣宏が社会に遺してきた数々の伝説と、今後の活動に迫る。 【対談】荒俣 宏×佐野史郎 「『帝都物語』をつくった我々は、一体何者だったのか」 【寄稿】峰守ひろかず 「小説『帝都物語』ガイド」 【インタビュー】りんたろう 「OVA『帝都物語』シリーズ監督が語る 魔魅の「帝都」」 【寄稿】荻堂 顕、柴田勝家 「帝都・伝奇・退魔の遺伝子」 【インタビュー】岸川雅範 「神田明神・禰宜から見た 「将門」と「帝都」」 【年表】荒俣宏年表 伏屋 究 【寄稿】「私は見た! アラマタ伝説」 あがた森魚、大竹真由、風間賢二、鹿島 茂、京極夏彦、鴻上尚史、小松和彦、坂上治郎、下中美都、野村芳夫、藤森照信、横尾忠則 【インタビュー】荒俣 宏 ロングインタビュー 「荒俣宏という方法」 【目録】アラマタ所蔵本大放出 【エッセイ】荒俣 宏「40周年目の帝都物語計画」 ●表紙 丸尾末広描き下ろし 荒俣 宏×「帝都物語」 ◆特集のほか連載など多数 【小説】京極夏彦、有栖川有栖、山白朝子、澤村伊智 【漫画】諸星大二郎、高橋葉介、押切蓮介 【論考・エッセイ】東 雅夫、村上健司×多田克己 【怪談実話】ねこや堂、蛙坂須美、木根緋郷 【グラビア】MON、芳賀日出男+芳賀日向、佐藤健寿、怪食巡礼 ほか 【情報コーナー】ファントムシータ、小林千晃×梅田修一朗(『光が死んだ夏』アニメ)、梨×かぁなっき×加藤よしき(『禍話n』)、鈴木光司(『ユビキタス』)、真山隼人+沢村さくら(京極夏彦「巷説百物語」浪曲化)、クリハラタカシ(『余談と怪談』)、好井まさお(『好井まさおの怪談を浴びる会』)、と金(「Scary things in Japan」)、柳生忠平(「妖怪万博2025」)、桜井伸也(怪談図書館)、堤 邦彦(『女霊の江戸怪談史』)、藤川 Q(化け通『都市伝説解体センター』) etc.…
もう誰に向けて話しているのでもない。梦(くらがり)はいっそうに深くなり、闇と影とのただ中には、最早誰がいるものやら、いっこう判りはしないのだ。目を凝らしても淡朦朧(うすぼんやり)と、幽かに人形が浮かぶだけ。誰とも知れず、顔も罔(な)いならそれは、正に幽霊である。 幽霊と話しているようなものだ。(本文より) 幽霊役のみ天下一品の役者・小平次。家では押入に引きこもったまま、彼を疎んじる妻と暮らす。ある日、囃子方の多九郎が高額の旅興行の話を持ってきたが、その裏には小悪党の又市がいるという。山本周五郎賞受賞作。 〈解説〉斎藤環 京極夏彦「第一六回山本周五郎賞受賞のことば」 縄田一男「甦る幽霊たち 「京極怪談」の意義」 を増補した決定版
特集は「幽玄鉄道」。鉄道好き作家・有栖川有栖との旅企画、一穂ミチによる新作怪談、澤村伊智×田辺青蛙の探訪企画など。連載も「怪と幽」でしか読めない豪華執筆陣。お化けを愉しみ、お化けを読むなら「怪と幽」! === 特集 幽玄鉄道 「いま・ここ」から別の地へと、我々を運び、繋いでくれる鉄道。それはともすれば、異界との幽玄なる接続口。鉄道は、日常生活から私たちを解き放ち、異なる世界に誘ってくれる装置であり、未知なる文化や存在を運んでくるものでもある。沿線の土地と密接に結びついた旅情や郷愁も味わい深い。そして、日常のなかの鉄道であっても、その運行は人のいのちを預かる仕事。数多くの人生を乗せて今日も列車は走っているのだ。いのちが行き交う所では、怪しい話もまた生まれる。この世とあの世の架け橋となるような、幽玄なる鉄道世界の旅へ、いざ、出発進行! 【ルポ&エッセイ】有栖川有栖 【新作怪談】一穂ミチ 【ルポ】澤村伊智×田辺青蛙 【インタビュー】三上 延 【寄稿】伊藤龍平 【駅ガイド】村上健司 【対談】竹本勝紀×登龍亭獅鉄 【ブックガイド】千街晶之 【名作怪談】江戸川乱歩 + 【グラビア】霧にむせぶトンネル駅 ●表紙 えちごトキめき鉄道「雪月花」 特集のほか、連載など多数! 【小説】京極夏彦、有栖川有栖、澤村伊智、堀井拓馬 【漫画】諸星大二郎、高橋葉介、押切蓮介 【論考・エッセイ】東 雅夫、村上健司&多田克己 【怪談実話】ひびきはじめ、煙鳥、松永瑞香 【グラビア】玉川麻衣、芳賀日出男+芳賀日向、佐藤健寿、怪食巡礼 【情報コーナー】ヒグチユウコ×名久井直子、我孫子武丸、加門七海、梨、廣田龍平、近藤瑞木、齋藤靖朗、香川雅信、藤川 Q etc.… ・特集 【ルポ&エッセイ】有栖川有栖と行く幻想鉄道旅 【新作怪談】一穂ミチ 「もう忘れます」 【ルポ】澤村伊智×田辺青蛙とめぐる廃線敷探訪 【インタビュー】三上 延 「内田百けん「阿房列車」の魅力 -鉄道旅と怪異ー」 【寄稿】伊藤龍平 「鉄道怪談 今昔物語 -「偽汽車」から「きさらぎ駅」までー」 【駅ガイド】村上健司 「日本全国 妖怪に会える駅ガイド」 【対談】竹本勝紀×登龍亭獅鉄 「鉄道員が語る怪談」 【ブックガイド】千街晶之 「鉄路は異界へと続く --鉄道怪談傑作ガイド」 【名作怪談】江戸川乱歩 「押絵と旅する男」 + 【グラビア】霧にむせぶトンネル駅 ※「内田百けん」は誌面では漢字表記です
古今東西の書物が集う墓場。 明治の終わり、消えゆくものたちの声が織りなす不滅の物語。 花も盛りの明治40年ーー高遠彬の紹介で、ひとりの男が書舗「弔堂」を訪れていた。 甲野昇。この名前に憶えがあるものはあるまい。故郷で居場所をなくし、なくしたまま逃げるように東京に出て、印刷造本改良会という会社で漫然と字を書いている。そんな青年である。 出版をめぐる事情は、この数十年で劇的に変わった。鉄道の発展により車内で読書が可能になり、黙読の習慣が生まれた。黙読の定着は読書の愉悦を深くし、読書人口を増やすことに貢献することとなる。本は商材となり、さらに読みやすくどんな文章にもなれる文字を必要とした。どのようにも活きられる文字ーー活字の誕生である。 そんな活字の種字を作らんと生きる、取り立てて個性もない名もなき男の物語。 夏目漱石、徳富蘇峰、金田一京助、牧野富太郎、そして過去シリーズの主人公も行きかうファン歓喜の最終巻。 残念ですがご所望のご本をお売りすることは出来ませんーー。 【目次】 探書拾玖 活字 探書廿 複製 探書廿壱 蒐集 探書廿弐 永世 探書廿参 黎明 探書廿肆 誕生 【著者略歴】 京極夏彦 きょうごく・なつひこ 1963年生まれ。北海道小樽市出身。 日本推理作家協会 第15代代表理事。世界妖怪協会・お化け友の会 代表代行。 1994年『姑獲鳥の夏』で衝撃的なデビューを飾る。1996年『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞長編部門、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2000年 第8回桑沢賞、2003年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年 『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞、2016年 遠野文化賞、2019年 埼玉文化賞、2022年 『遠巷説百物語』で第56回吉川英治文学賞を受賞。
幽晦との境界がーー破れている。 内部の薄明が昏黒に洩れている。 ならばそこから夜が染みて来る。 生まれてこのかた笑ったこともない生真面目な浪人、伊右衛門。疱瘡を病み顔崩れても凛として正しさを失わない女、岩ーー四谷怪談を江戸の闇に花開く極限の愛の物語へと昇華させた第25回泉鏡花文学賞受賞作。「巷説百物語」シリーズ・御行の又市の物語はここから始まった。 〈解説〉高田衛 〈対談〉高田衛×京極夏彦「生きている怪談」
「怪と幽」17号は、特集二本立て! 第一特集 怪を語る イベントや配信などで語られる怪談を楽しむ流れが大きな盛り上がりを見せている。もちろん先駆者は数十年前から「語り」を主軸に活動し、その存在は広く知られてきた。だがいま、さらに新たな語り手がどんどん生まれている。感染症流行時期には配信活動の隆盛があり、その後、リアルな場を共有するイベントも、様々な規模で開催されるようになった。世間では《怪談師》という呼称もすっかり定着。伝統芸能の語り芸とはまた異なる、語り・しゃべりの怪談文化が一大ジャンルとして築かれた。そのように怪談を語る人たちは、そしてそれを楽しむ人たちは、いま何を見つめているのか。現場では何が起こっているのか。現代の怪談語りシーンに迫る。 【インタビュー】稲川淳二 【対談】川奈まり子×吉田悠軌 【対談】はやせやすひろ×夜馬裕 【ルポ】百物語怪談会 【実録】百物語 川奈まり子、チビル松村、はやせやすひろ、深津さくら、松永瑞香、村上ロック、夜馬裕 第二特集 『真・女神転生V Vengeance』 神話や伝承に語られる超常の存在ーー「悪魔」が現代に出現したら、世界はどのように変貌するのか。そんな想像を具体化させたかのようなロールプレイングゲームが「真・女神転生」シリーズだ。 1992年発売の第一作『真・女神転生』以降、30年以上の長きにわたり「メガテン」の通称で親しまれる本シリーズの最新作『真・女神転生V Vengeance』は、今年6月に発売されると、わずか3日間で全世界売上が50万本を超える大ヒット作品となった。太古の神話から現代の都市伝説に至るまで、さまざまな出典の悪魔が織り成す独自の世界観の中、善悪だけでは語りえない重層的なストーリーと、美しくも恐ろしい個性的なキャラクター造形で、世界中のプレイヤーを熱狂させる『Vengeance』。そんな大人気ゲームの悪魔的魅力の根源に迫る。 【グラビア】『真・女神転生V Vengeance』とは? 【インタビュー】小森成雄(ディレクター) & 土居政之(キャラクターデザイナー) 【インタビュー】土居政之 【ガイド】『真・女神転生V Vengeance』 (勝手に)悪魔全書 by怪と幽 【対談】黒 史郎×藤川 Q 特集のほか、連載など多数! 京極夏彦小説新連載も開始!
人の心は分かりませんが、 それは虫ですねーー。 ときは江戸の中頃、薬種問屋の隠居の子として生まれた藤介は、父が建てた長屋を差配しながら茫洋と暮らしていた。八丁堀にほど近い長屋は治安も悪くなく、店子たちの身持ちも悪くない。ただ、店子の一人、久瀬棠庵は働くどころか家から出ない。年がら年中、夏でも冬でも、ずっと引き籠もっている。 「居るかい」 藤介がたびたび棠庵のもとを訪れるのは、生きてるかどうか確かめるため。そして、長屋のまわりで起こった奇怪な出来事について話すためだった。 祖父の死骸のそばで「私が殺した」と繰り返す孫娘(「馬癇」)、急に妻に近づかなくなり、日に日に衰えていく左官職人(「気癪」)、高級料亭で酒宴を催したあと死んだ四人の男(「脾臓虫」)、子を産めなくなる鍼を打たねば死ぬと言われた武家の娘(「鬼胎」)…… 「虫のせいですね」 棠庵の「診断」で事態は動き出す。 「前巷説百物語」に登場する本草学者・久瀬棠庵の若き日を切り取る連作奇譚集。 病葉草紙 目録 馬癇 気癪 脾臓虫 蟯虫 鬼胎 脹満 肺積 頓死肝虫
時は江戸。作事奉行・上月監物の屋敷の奥女中・お葉は、度々現れる男に畏れ慄き、死病に憑かれたように伏せっていた。彼岸花を深紅に染め付けた着物を纏い、身も凍るほど美しい顔のその男・萩之介は、"この世に居るはずのない男"だったーー。 この騒動を知った監物は、過去の悪事と何か関りがあるのではと警戒する。いくつもの謎をはらむ幽霊事件を解き明かすべく、"憑き物落とし"を行う武蔵晴明神社の宮守・中禪寺洲齋が監物の屋敷に招かれる。 謎に秘された哀しき真実とは? 歌舞伎の舞台化のために書き下ろされた、長編ミステリ。 《目次》 死人花 墓花 彼岸花 蛇花 幽霊花 火事花 地獄花 捨子花 狐花
〈憑き物落とし〉中禪寺洲齋。 〈化け物遣い〉御行の又市。 〈洞観屋〉稲荷藤兵衛。 彼らが対峙し絡み合う、過去最大の大仕掛けの結末はーー? 文学賞3冠を果たした〈巷説百物語〉シリーズ堂々完結! 下総国に暮らす狐狩りの名人・稲荷藤兵衛には、裏の渡世がある。 凡ての嘘を見破り旧悪醜聞を暴き出すことから〈洞観屋〉と呼ばれていた。 ある日、藤兵衛に依頼が持ち込まれる。老中首座・水野忠邦による大改革を妨害する者ども炙り出してくれというのだ。 敵は、妖物を操り衆生を惑わし、人心を恣にする者たちーー。 依頼を引き受け江戸に出た藤兵衛は、化け物遣い一味と遭遇する。 やがて武蔵晴明神社の陰陽師・中禪寺洲齋と出会い、とある商家の憑き物落としに立ち会うこととなるがーー。 戌亥乃章 於菊蟲 申酉乃章 柳婆 午未乃章 累 辰巳乃章 葛乃葉 或いは福神ながし 寅卯乃章 手洗鬼 子丑乃章 野宿火 空亡乃章 百物語
「怪と幽」16号は、特集二本立て! 第一特集 陰陽師を知る もともとは古代律令国家の官職のひとつでありながら、さまざまな物語のなかに登場し活躍し、我々の心をつかみ続けている陰陽師。天文と暦を読み解き、占いや祭祀やまじないを行うその者たちは、歴史上にあまた実在し、研鑽を積みながらそれぞれの時代に合った姿に進化し続けてきた。現在、古と同じ〈陰陽師〉は存在しない。だが創作のなかでは、ときに史実を採り入れながら、令和の今も新たな陰陽師像が生み出され続けている。呪術や式神を操る特殊能力者のようなイメージとともに想起されるようになった彼らは、そもそもどういった存在だったのだろうか。また、現代の我々にとって陰陽師とはどのような存在なのか。 フィクションのなかの陰陽師、歴史のなかに実在した陰陽師、両面から迫ります。 第二特集 京極夏彦「巷説百物語」了 デビュー30周年を迎えた京極夏彦の代表作「巷説百物語」シリーズ。完結編『了巷説百物語』が、いよいよ今夏刊行される。「怪」から「怪と幽」へと連載された本作は累計140万部に達し、『後巷説百物語』で直木三十五賞、『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞し、史上初となる同一シリーズで文学賞三冠を獲得した。京極作品クロニクルの起点となる本作は、「書楼弔堂」「江戸怪談」そして昨年『【ぬえ】の碑』が刊行されて大きな話題を呼んだ「百鬼夜行」シリーズにも繋がってゆく! 完結編の刊行を目前に控えた今こそ、「巷説百物語」を振り返る。 ※【ぬえ】は空へんに鳥の漢字 ●表紙 石黒亜矢子 特集と連動し、「安倍晴明と京極夏彦」をモチーフに描き下ろし!
「怪と幽」15号の特集は「怪と湯」! 世界有数の火山国である日本では、縄文時代から温泉が親しまれていたという。およそ名湯と呼ばれる古い温泉地には決まって開湯伝説があり、神々、鳥獣、名僧、そして異形なるモノが発見した霊泉は、時代を超えて人々を魅了し続けている。本来、湯治場は死に近い場所であり、信仰と深く結びつき、多様な文化を生んだ。『古事記』『日本書紀』、また諸国の「風土記」にも多くの記述があり、温泉は人のみならず神をも癒すものであった。ときに病を抱えた文豪を、傷を負った化け物を治癒している。霊力を宿した湯に解きほぐされた心身は、あの世とこの世の境界をたゆたう。怪しくゆらめく湯けむりの向こうは地獄か極楽かーー。 特集 怪と湯 【復刻】 岡本綺堂「温泉雑記」 【鼎談】 加門七海×南條竹則×東雅夫「霊なる温泉地 〜文人が惹かれる「湯の力」〜」 【寄稿】 伊藤克己「温泉文化を形成する信仰と伝承」 【寄稿】 菱川晶子「神々から鳥獣まで -日本の温泉発見伝説をめぐってー」 【紀行】 村上健司「妖怪旅おやじ 特別編 上田周辺の温泉と鬼伝説を訪ねる 」 【寄稿】 多田克己「温泉に現れたる妖怪」 【紀行】 宮家美樹「京極夏彦、日光へ行く」 【エッセイ】 朱野帰子、有栖川有栖、黒木あるじ、今野敏、つげ正助、内藤了、花房観音、夢枕獏 【ガイド】 村上健司「日本全国「怪と湯」150選」 【ガイド】 朝宮運河「怪異名湯巡り 温泉怪談ブックガイド20+α」 【小説】 京極夏彦、有栖川有栖、澤村伊智、山白朝子、恒川光太郎 【漫画】 諸星大二郎、高橋葉介、押切蓮介 【論考・エッセイ】 小松和彦、東雅夫 【グラビア】 尾崎伊万里、芳賀日出男、佐藤健寿、つげ義春、怪食巡礼 【怪談実話】 渡辺浩弐、青柳碧人、JUN 【情報コーナー】 北沢陶×澤村伊智、似鳥鶏×今村昌弘、尾八原ジュージ×饗庭淵、橋下まこ、オカルトエンタメ大学、大明敦、くらやみ遊園地、大谷亨 etc.…
百鬼夜行シリーズ17年ぶりの新作長編がついに! 殺人の記憶を持つ娘に惑わされる作家。 消えた三つの他殺体を追う刑事。 妖光に翻弄される学僧。 失踪者を追い求める探偵。 死者の声を聞くために訪れた女。 そして見え隠れする公安の影。 発掘された古文書の鑑定に駆り出された古書肆は、 縺れ合いキメラの如き様相を示す「化け物の幽霊」を祓えるか。 シリーズ最新作。
殺人の記憶を持つ娘に惑わされる作家。消えた三つの他殺体を追う刑事。妖光に翻弄される学僧。失踪者を追い求める探偵。死者の声を聞くために訪れた女。そして見え隠れする公安の影。発掘された古文書の鑑定に駆り出された古書肆は、縺れ合いキメラの如き様相を示す“化け物の幽霊”を祓えるか。『姑獲鳥の夏』から30年ーついに顕現、「京極小説」最新大巨編!
「怪と幽」14号は、特集二本立て! 特集1「奇想天外 きのこの怪」 きのこは不思議に満ちている。まず、見た目からして奇妙だ。美味しい食物として親しまれながらも、幻覚を引き起こしたり毒により死に至りしめたりする種が存在している点が不気味である。そもそも、きのこはかりそめの姿で、本体である菌糸は地下に広がり、普段は目に見えない。動物と植物のあわいで揺らめく神秘的な生態は、昔から人々を惹きつけてきた。きのこに関する神話・民話・文学は日本のみならず世界に分布している。熱狂的な愛好家がいる一方で、前号の特集「怪奇大特撮」で映画『マタンゴ』が“トラウマ特撮”として挙げられたように、恐怖の対象にもなり得た。幾つものきのこ文学を遺した泉鏡花や宮沢賢治、研究者の南方熊楠はもとより、きのこを存分に語る「キノコデー」を提唱した柳田國男まで──きのこは、お化け好きを虜にする! 特集2「幽霊と魔術の英国」 英国では、数々のお城や建築物に幽霊が現れるとされ、現在王室の面々が住まう宮殿も出るのは「当たり前」。霊の出現が観光名所としてのアピールにも繋がっている。そんな「この世ならぬ存在」との距離が地続きの国は魔術の本場でもあり、アーサー王に仕えたマーリンに始まり数々の魔術師の存在や影響が文化に色濃く現れている。英国発の魔術ファンタジー「ハリー・ポッター」シリーズの勢いも止まらない。幽霊と魔術が日常に息づいているこの国は、日本の作家や読者にも大きく影響を与え魅了し続けてきた。英国の幽霊と魔術の世界に、いざ出発! ●特集1 奇想天外 きのこの怪 【復刻】 「くさびら」泉鏡花、「きのこ会議」夢野久作 【対談】 飯沢耕太郎×吹春俊光 【寄稿】 田中貴子、多田克己、飯沢耕太郎 【インタビュー】 貴志祐介 【怪談】 安曇潤平 【エッセイ】 高原英理、池澤春菜、ヒグチユウコ、日高トモキチ、保坂健太郎、堀博美 【ルポ】 玉置標本 ●特集2 幽霊と魔術の英国 【対談】 織守きょうや×河合祥一郎 【寄稿】 植松靖夫、南條竹則、額賀澪 【復刻】 坂田靖子「オプション・ハウス」 【座談】 東雅夫×下楠昌哉×中島晶也×土方正志 【ガイド】 ハリー・ポッター世界にみる幽霊と魔術 ●小説 京極夏彦、小野不由美、有栖川有栖、澤村伊智 ●漫画 諸星大二郎、高橋葉介、押切蓮介 ●論考・エッセイ 小松和彦、荒俣宏、加門七海、東雅夫、村上健司&多田克己 ●グラビア 中野カヲル、芳賀日出男+芳賀日向、佐藤健寿、新井文彦、怪食巡礼 ●怪談実話 鈴木光司、高木道郎、小松亜由美 ●情報コーナー 山白朝子×乙一、東亮太×門賀美央子、三上延、夏原エヰジ、大島清昭、高木道郎、怪奇里紗、及川祥平 etc……
「怪と幽」13号は、特集二本立て。 第一特集「怪奇大特撮」。 1954年の『ゴジラ』や1965年の『大怪獣ガメラ』を筆頭に、これまで数多くの特撮作品が制作されてきた。毎年新作が放送される子供向けのTVドラマだけでなく、庵野秀明監督によるリブート作品「シン・」シリーズが次々に話題となり、世界でも「モンスター・ヴァース」が席巻している。怪獣モノのみならずホラーや SFまで含めると、今や「特撮」はエンターテインメントの主役である。かつて「幻想映画」とも呼ばれた「特撮映画」は超自然的な世界を映し出し、怪獣やクリーチャーたちは、人間が畏敬の念や恐怖を抱く自然災害・社会問題の象徴ともされた。怪奇や幻想を形にしてきた「こわい特撮」を、お化け好き諸兄姉に贈る! 第二特集「民俗写真家 芳賀日出男」。 折口信夫の講義に感銘を受け、宮本常一と九州各地を訪ね歩いた、唯一無二の写真家・芳賀日出男。大正十年に満州で生まれ、幼少期からカメラに親しみ、晩年まで写真への情熱が失われることはなかった。昭和から現代にかけて日本も世界も大きく変化し続ける中、芳賀は文化や習俗を大切にする一方で、無闇に変化を否定せず、その地で生活を営む人の思いを汲んでいた。芳賀が遺した貴重な写真には、当時の景色とともに、人間の息遣いが閉じ込められている。昨年十一月に百一歳で逝去した偉大なる民俗写真家の足跡を辿り、在りし日の光景に想いを馳せたい。 ●第一特集 怪奇大特撮 【アンケート】私のトラウマ特撮 朱野帰子、綾辻行人、有栖川有栖、大倉崇裕、大槻ケンヂ、押切蓮介、小野不由美、織守きょうや、唐沢なをき、貴志祐介、佐野史郎、澤村伊智、真藤順丈、高橋葉介、月村了衛、恒川光太郎、Toy(e)、新名智、葉真中顕、平山夢明、深緑野分、福澤徹三、諸星大二郎、山白朝子、和嶋慎治 【インタビュー】京極夏彦、小林靖子、鶴田法男 【寄稿】東雅夫、式水下流 【対談】倉谷滋×円城塔 【レポート】「カイトユウマン」ができるまで ●第二特集 民俗写真家 芳賀日出男 【インタビュー】芳賀日向 【寄稿】棚木晴子、飯沢耕太郎、神崎宣武 ●小説 京極夏彦、有栖川有栖、山白朝子、恒川光太郎、澤村伊智、織守きょうや ●漫画 諸星大二郎、高橋葉介、押切蓮介 ●論考/エッセイ 加門七海、東雅夫、村上健司&多田克己 ●グラビア Toy(e)、芳賀日出男+芳賀日向、佐藤健寿、怪食巡礼 ●怪談実話 梨、若本衣織、鷲羽大介 ●情報コーナー 角川ホラー文庫30周年、澤村伊智×新名智、和田正雪×吉田悠軌、高野和明、黒史郎×村上健司、スリラーナイト、戸神重明 etc……
舞台は明治30年代後半。鄙びた甘酒屋を営む弥蔵のところに馴染み客の利吉がやって来て、坂下の鰻屋に徳富蘇峰が居て本屋を探しているという。 なんでも、甘酒屋のある坂を上った先に、古今東西のあらゆる本が揃うと評判の書舗があるらしい。その名は “書楼弔堂(しょろうとむらいどう)”。 思想の変節を非難された徳富蘇峰、探偵小説を書く以前の岡本綺堂、学生時代の竹久夢二……。そこには、迷える者達が、己の一冊を求め“探書”に訪れる。 「扠(さて)、本日はどのようなご本をご所望でしょう——」 日露戦争の足音が聞こえる激動の時代に、本と人との繋がりを見つめなおす。 約6年ぶり、待望のシリーズ第3弾! 【著者プロフィール】 京極夏彦(きょうごく・なつひこ) 日本推理作家協会 第15代代表理事。世界妖怪協会・お化け友の会 代表代行。 1963年北海道小樽市生まれ。94年『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞長編部門、97年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2000年第8回桑沢賞、03年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で第130回直木賞、11年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞、16年 遠野文化賞、19年 埼玉文化賞、22年『遠巷説百物語』で第56回吉川英治文学賞を受賞。