著者 : 佐藤友哉
名前を失った星で生きる“あなたとわたし”を結ぶSF「標のない」。戦争と真実に直面した平凡な少女の選択を描く歴史フィクション「大火」。独裁国家の修理工が語る命がけの遊戯の話「国境沿いのピンボール・リザード」。二〇〇七年夏・少女(たち)の呪縛と解放を描く小さなセカイ系「グッバイスタンダー」。読切をメインに長篇一挙掲載含む小説8篇・漫画1篇&イラスト多数収録。“唯一百合”のノンジャンル文芸誌、堂々の第2号。
注目の2.5次元舞台『オメガスマッシュ』初日の幕が上がった。役者同期の水口が主役としてスポットライトを浴びる一方、僕はオーディションに落ちた敗者として客席からあいつを見上げていた。その上演中、キャストの1人が忽然と姿を消してしまう不可解な事件が発生する。僕は消えた役者の行方を追うが、そこには、役者であるがゆえの苦悩と真相が潜んでいて…。舞台に青春を捧げる若者たちの、夢と現実が交錯する3つの事件。
人生は走ることに似て、走ることは人生に似ているー。芥川・直木賞作家から青春エンタメ小説の名手まで、類を見ない豪華メンバーが“走る”をテーマに競作した短編14作、ここに集合!人が次の一歩を踏みだそうとする時、その背中をそっと押してくれる、バラエティー豊かな作品が目白押し。異色のアンソロジーをご堪能あれ。
シリーズ累計八百万部突破大人気コミックス『アイアムアヒーロー』(花沢健吾・著)の映画化を記念して執筆された小説集。豪華執筆陣によるゾンビ小説が待望の文庫化。背筋も凍る恐怖と戦慄の物語が全6編。
「ときどき何だか恋しくなって、うっかりページをひらいてしまう」(朝吹真理子選「親友交歓」)、「悲嘆にくれながら笑い、怒りながらおどける。背反を抱え、そのまま抱きしめ続ける人」(滝口悠生選「葉」)、「儚くて、かわいくて、切実で」(西加奈子選「皮膚と心」)-三十八歳で歿した太宰の短篇を、七人の現代作家が同世代の眼で選んだ作品選。
「空想の中でしか、私は生きられないから」-中学時代の八雲にまつわるエピソード「真夜中の図書館」(『心霊探偵八雲』のスピンオフ)、物語が禁止された国に生まれた子どもたちの冒険「青と赤の物語」、ノベロイド研究にのめり込み、「物語AI」におもしろい小説を書かせようと奮闘する高校生の青春模様「ワールズエンド×ブックエンド」など、「小説」が愛おしくなる8編を収録。旬の作家によるバラエティ豊かなアンソロジー。
妻が殺された。僕の眠る隣でー。小さな町で密かに進行する『連続主婦首切り殺人事件』復讐者となった夫たちは犯人を追う。しかし、真相に迫る彼らの前に地球規模の恐怖が立ちはだかった。そう、この事件を解決するとは、人類を救うことだったのだ!ジェノサイド/文明更新とは何か、そして「ほんとう」の真犯人は?三島賞作家4年ぶりのミステリー長篇。
二十七歳の誕生日に仕事をクビになるのは悲劇だ。僕は四年間勤めた片説家集団を離れ、途方に暮れていた。(片説は特定の依頼人を恢復させるための文章で小説とは異なる。)おまけに解雇された途端、読み書きの能力を失う始末だ。謎めく配川姉妹、地下に広がる異界、全身黒ずくめの男・バックベアード。古今東西の物語をめぐるアドヴェンチャーが、ここに始まる。三島由紀夫賞受賞作。
女子中学生・小林冬子。苫小牧から船に乗り、行き着いた先は見知らぬ孤島。いったいここはー後頭部を殴られ小屋に寝かされた文子は、監視の役目を依頼される。「見る」者と「見られる」者の関係が逆転するとき、事態は一変する。話題をさらった佐藤友哉の問題作ついに文庫化。著者本人による25頁の解説つき。
ぼくが転入してきたクラスで行われていた、ゲーム。それは異形の連続殺人者・牛男の次の犯行を予測しあうことだったー。最初は面白半分だった。でも、いつしか、ぼくたちは引き返せない地点まで来てしまったんだ(表題作)。災厄が露にした、きょうだいの秘密(「大洪水の小さな家」)。教室で突如火を噴く、恵子のサブマシンガン(「慾望」)。デッドエンドを突き抜ける、六つの短編。
工場で働く単調な日々に鬱々とするヒキコモリ気味の少年。少女を見えない悪意から護り続ける少年。密室状況の屋敷内で繰り広げられる惨殺劇。別々に進行する三つの物語を貫くものは、世界を反転させる衝撃の一文と、どこまでも深い“愛”である。なぜピアノは沈んだのか?著者渾身の戦慄純愛ミステリー。
コスプレする少女と同人誌に燃える少女。凄絶ないじめを受ける少女といじめる少年。そして人肉しか食べられなくなってしまった少女!彼女たちの中に美しい転校生がやってきた日、惨劇の幕が開かれる。密室に捨て置かれた血塗れの死体は錯綜する事件の序章に過ぎない。美少女学園ミステリーの最果て作。
僕は「片説家」。「小説家」と違って、純粋に「特定の個人に向けて物語を書く」仕事だ。そこにあるのは、創作とはいえないリクエストとマーケティングだけ。いや、正確には「片説家」だった。四年間この仕事をしてきたが、今さっき解雇されたのだ。27歳の誕生日だというのに…。あてもなく過ごしていたところへ、「私のために小説を書いて欲しい」という女性が現れた。奇しくも、失踪しているという彼女の妹は、かつて僕のいた会社が、片説の原稿を渡した相手だという-。
妹が首を吊った、とイカレた母親からの電話。愉快そうな侵入者は、妹の陵辱ビデオを見せたうえ、レイプ魔たちの愛娘がどこにいるか教えてくれる。僕はスタンガンを手に捕獲を開始。でも街には77人の少女を餌食にした“突き刺しジャック”も徘徊していたー。世界を容赦なく切り裂くメフィスト賞受賞作。
過去の呪縛から逃れるため転校した神戸の小学校では、奇妙な遊びが流行っていた。「牛男」と呼ばれる猟奇連続殺人鬼の、次の犯行を予想しようというのだ。単なるお遊びだったはずのゲームは見る間にエスカレートし、子供たちも否応なく当事者となっていくー(表題作)。新世代文学の先鋒が描き出す、容赦ない現実とその未来。ボーナストラックとして書き下ろし二編を収録。