著者 : 加賀乙彦
日本へ初めてキリスト教を伝道したフランシスコ・ザビエルの晩年を三人の弟子の目を通じて描いた『ザビエルとその弟子』、戦国の世でキリシタンとしての信念を貫き通したキリシタン大名の生涯を描いた『高山右近』、聖地エルサレムを単身で訪れ、ローマで司祭となるが、激しいキリシタン迫害が起きている日本へ帰国し殉教者となった不屈のキリシタンを描いた『殉教者』--畢生のキリシタン三部作を一挙収録。 加賀乙彦の長篇小説の精髄を収めた全集、ついに完結!
一九九五年一月、小暮悠太は震災で混乱を極める神戸へ、精神科医として救援に駆けつける。その二カ月後、息子の悠助が地下鉄サリン事件に巻き込まれ、悠助のピアニストとしての将来に暗雲が立ちこめていくーー。 二十一世紀を迎え、周囲の人間が次々と鬼籍に入っていく中、悠太は妻の千束とともに次世代に未来を託しながら、自分たちが生きてきた七十年余の時代を振り返る……。 『永遠の都」に続く自伝的大河小説、ついに大団円。 毎日新聞出版文化賞企画特別賞。
一九七〇年秋、小暮悠太が幼い頃から強い思いを寄せていた千束とようやく結ばれる。子どもも生まれ充実した生活を送るなか、新人文学賞に応募し受賞を果たす。それを足がかりに悠太は創作活動に打ち込み専業作家となる。時は移り、時代は昭和から平成へ。悠太の周囲の人間たちにもさまざまな問題が降りかかってくるーー。 『永遠の都』に続く自伝的大河小説の第四部。 毎日出版文化賞企画特別賞受賞。
一九六八年一月、研修医の待遇改善に端を発する東大医学部闘争が勃発。その余波は、小暮悠太が所属する精神医学教室にも及び、悠太の研究室も全共闘の学生たちに占拠される。騒然とした状況の中、犯罪学の研究の傍ら小説を書き始めた悠太。そこへ、幼い頃から愛し続けていた千束が離婚したとの話が舞い込んでくるーー。 『永遠の都』に続く自伝的大河小説の第三部。毎日出版文化賞企画特別賞。
精神医学教室に入局して精神科医としての第一歩を踏み出した小暮悠太。研修を経て東京拘置所の医務官となった悠太は、あらゆる種類の犯罪者が集まっていることに興味をそそられ、やがて死刑囚の拘禁反応を研究することに。順調に医者への道に進み始めた悠太だが、一方で十歳年上の人妻と抜き差しならない関係を結び、懊悩するーー。 『永遠の都』に続く自伝的大河小説の戦後編。毎日出版文化賞特別賞受賞。
サンフランシスコ講和条約が発効した直後の一九五二年五月一日、皇居前広場には政府に抗議する多くの労働者や学生が集まっていた。東大の医学生となり、セツルメント活動に関わっていた小暮悠太もその中にあったーー。占領が解かれ、新時代に向けて胎動する中、小暮家の新たな歴史が紡がれていく。 『永遠の都』に続く自伝的大河小説の続編、ついに開幕。 毎日出版文化賞企画特別賞。
戦争が日常を覆い暗雲が立ち籠める中、悠太は陸軍幼年学校での厳しい訓練の日々を過ごす。母・初江は、弟・研三の疎開先の草津へ行くが、その帰り、上野駅で三月十日の大空襲に遭遇、辛くも一命をとりとめる。一方、苦しい経営に耐えながら、何とか診療を続けていた祖父・時田利平の病院も空襲によって焼け落ち、利平は全身に大火傷を負って失明する……。 戦争に翻弄されながらも、ひたむきに生きていく人びとの姿を活写する大河小説、いよいよ佳境へーー。 芸術選奨文部大臣賞。
ようやく戦争が終わり、焼け残った東京の我が家へ戻ってきた悠太は、深い喪失感を抱きながらも都立高校へ進学して、新たな生活が始まる。離ればなれになっていた一家がともに暮らせるという喜びも束の間、長年、時田病院を牽引してきた祖父・利平が七十二年の生涯を終える。 戦争という惨禍に彩られた時代を生き抜いてきた時田家、小暮家三代の物語がついに大団円を迎える。 芸術選奨文部大臣賞。
小学校高学年になった悠太の淡い恋、世界一周に出かける父・悠治、ヴァイオリンの才能に目覚める妹の央子……小さな波風を立てながらも平穏な暮らしを続ける小暮家。 妻・菊江の死を乗り越えて大きく発展していく利平率いる、時田病院。不幸な結婚から新たな恋を獲得する時田家の次女・夏江…… そんな両家の日常を一気に押しつぶす太平洋戦争の開戦と、相次ぐ東京への空襲。戦時体制下に暮らす人びとの運命を稠密に描く大河小説。 芸術選奨文部大臣賞。
東京・三田綱町で一大外科病院を築き上げた元海軍軍医の時田利平の一族が辿る数奇な運命を、昭和の初頭から太平洋戦争の敗戦、復興にいたるまでの時期を背景に描いた、空前の大河小説。二・二六事件に遭遇する陸軍中尉の脇敬助、利平の次女でセツルメント運動に献身する時田夏江、夏江の甥で大人たちの世界を垣間見ていく小学生の木暮悠太……。それぞれの運命が大きく変転していくーー。 芸術選奨文部大臣賞。
一九六九年、秋。大学闘争が激化する中、フィギュアスケート場で出会った、四十九歳の自動車修理工・雪森厚夫と二十四歳の大学生・池端和香子。人生の大半を獄中で過ごした厚夫と心を病む和香子。いつしか惹かれ合うようになった二人は、突如新幹線爆破事件の容疑者として逮捕されるーー。 清冽な釧路湿原を舞台に、魂の救済と愛情の本質を根源から問う感動の恋愛長篇。 大佛次郎賞受賞。
絶大な権力をもって冤罪を仕立てていく検察・警察と、厚夫と和香子の無罪を確信して二人のアリバイ証明に奔走する弁護団との熾烈な闘いがくり広げられるーー。 故なき罪に余儀なく問われ、互いの愛を確かめながら、時代の激流に翻弄されていく男女の孤独な魂を描く、感動の恋愛長篇。 大佛次郎賞受賞。
「不吉な予感がする。今朝こそ、自分の番だという気がする」 犯した罪の重さに煩悶しながら、神への信仰へ向かう死刑囚と若き精神科医との精神の交流を描く、畢生の代表作! 日本文学大賞受賞。
「さて、恵津子君、悲しいお知らせですが、いよいよお別れの時が来ました。明日がその日だと、けさ、教えられ、なにかとせわしない一日を過しました」 執行の日を迎える死刑囚の内面を余すところなく描く、畢生の代表作! 日本文学大賞受賞。
昭和二十年の夏、敗戦によっていきなり奈落の底へ突き落された陸軍幼年学校の少年兵たちーー その懊悩と混乱の中で引き起こされる精神のドラマを鮮烈に描いた問題作!
北フランスの荒涼とした低地帯にある精神科病棟を舞台に、若き日本人精神科医とその仲間たちが繰り広げる魂の群像劇。 自らの留学体験をもとにした長篇デビュー作。 芸術選奨新人賞受賞。
戦争回避に全力を尽くしたアメリカ人の妻を持つ日本人外交官。 そして日米の血を受け継いだ子どもたちーー。 歴史の激流に翻弄された外交官一家の過酷な運命を描いた歴史長篇。 「加賀乙彦全長編小説」(全18巻)第一回配本。
狂気の世界に踏み込む精神科医の深淵を描く フランス北部に広がるフランドル地方のサンヴナン精神病院に勤務する日本人留学生コバヤシの精神科医としての日々を描く、著者自身の留学経験をベースにした長編処女作。 1967年に発表され、芸術選奨新人賞を受賞。糞臭たちこめる不潔病棟や、素裸の精神病患者ーーコバヤシは青空が殆どないフランドルで精神科医として働くうち、自己と患者との境界を踏み越えて、正気と狂気の間をさまよい始める。 若い看護師との同棲やフランス人医師たちとの交流も深まるものの、人間存在の孤独に耐えきれなくなっていく……。復刻にあたっての著者あとがきも併録。