著者 : 勝目梓
“純子に死に別れたのがちょうど十年前だ。幹也の母親になるといってくれた綾子さんとの、おかしな結婚生活は九年になる”生後八カ月の幼子を遺し、三十七歳の妻を亡くした有澤信雄は、妻の親友を後添として迎えたのだが…。純子と綾子は、夫には内緒の恋人同士だったのだ。男女三人の手記、日記から、愛や家族の有り様が浮かび上がる異色の恋愛官能小説。
波の音が聴こえる海沿いの家で、老境に達しようとする男が、自らの人生に思いをめぐらせている。そこには毒がある。蜜もある。禁断と倒錯のエロティシズムの果てに、甘くて危険な秘密が横たわっている……。 純文学作家として高い評価を受けながら、バイオレンスロマンの流行作家へ華麗なる転身を遂げ、官能文学の第一人者として長く君臨している作家・勝目梓。 近年は『小説家』や『老醜の記』などの私小説でも高い評価を受けている。 「さながら古酒の樽の栓を抜いたような、風味豊かな独白体」 逢坂剛が「朝日新聞」書評で作品を絶賛したが、石田衣良、小池真理子、山田詠美、重松清、北方謙三など、その作家性にリスペクトを寄せている作家も多い。 八十歳を超えて、さらに円熟味と凄みを増し、デビュー40年記念作品として書き上げた短篇集の「あしあと」に続いて、本格的な書き下ろし作品を発表する。 近親相姦、同性愛、SMなど、禁忌の性愛も描きながら、小説ならではのカタルシスに誘われる。 本物の作家による衝撃の長編小説である。
おれはなぜ二度も人を殺したのか。七十六歳で故あって二度目の殺人を犯し四年、いま獄中にある男は静かに語り始める。昭和初頭、炭鉱の島に生まれ坑夫となった緒方一義は隣人を殺し、一度目の獄につながれた。彼が手にかけた男の妻と交わし続けた手紙にこめた想いとは? 遠ざかりゆく昭和という時代と数奇で凄絶な人生が見事に描かれる。 おれはなぜ二度も人を殺したのか。 獄中で寡黙な男が晒す胸の奥底の真実。 暴力と性の極みを書き続けた作家が描き切った裸の人間の心情とは。 寡黙な男の心の奥底の一途な想いが胸を刺す。 七十六歳で故あって二度目の殺人を犯し四年、いま獄中にある男は静かに語り始める。昭和初頭、炭鉱の島に生まれ坑夫となった緒方一義は隣人を殺し、一度目の獄につながれた。彼が手にかけた男の妻と交わし続けた手紙にこめた想いとは? 遠ざかりゆく昭和という時代と数奇で凄絶な人生が見事に描かれる。
ときにエロティック、ときに残酷、そしてときに切ないーー。 珠玉の「大人のための童話」がここに。 収録作品 「ユメコさんとノボルちゃん」 ユメコさんとノボルちゃん、二人は同じバーに勤めるバーテンダーとその主だった。そして二人はお互いの美しさゆえにひとときも離れられず……。 「カワムラ青年」 戦争で夫も子供もなくした女が山の中で出会ったのは、一人の若い男だった。 「雪女」 出張先で吹雪に見舞われてしまった。そしてそこで出会った一人の女。行くあてもなく、彼女の家に泊めてもらうことになるのだが。 「おかしなことに」 学生時代の恋人との間にあった”性癖”が、中年のいまになってむくむくとわき上がってきてーー。 「人形の絵」 一枚の絵は、様々なカップルの間を巡り巡って行く。そして彼らの人生も変えていく。 「湖」 愛してやまないが手が届かない人ーーそんな彼女の側にいられるだけで幸せだったのに。
警視庁捜査4課在籍中、重山利行は、ある殺人事件の背後に大物政治家が関与していることを掴んだ。彼と共存共栄の「紳士協定」を結び、不動産業に転身した重山は、己の欲望の赴くままに凶行を重ね、セックスに明け暮れていく…。7名の男女を殺害した男の壮絶な生を、赤裸々な独白体で描いた問題作!
下条有紀子が何者かに拉致された。恋人の矢口が「仕掛けたのはそっちだ」と脅迫電話を受けた。犯人を探るため、矢口はフランスへ飛ぶ。有紀子との出会いの場となったパリ。そこで彼は、有紀子と同郷の男の存在を突き止める。その男はいま、日本で怪しげな情報屋として暗躍していた。矢口は有紀子を救い出すことが出来るのか!?犯人からの謎めいた言葉の真相とは!?
羽毛のかわりに女性の体毛をつめた寝具にくるまれて、死の国へ旅立つ……愛する妻に先立たれ、長い生をすごす老人は、途方もない計画に取り憑かれる。死を迎えんとした時、意志に反して救われ、病室に繋がれた自称百九歳の老人は妄執と現実とのあわいを、生と性の異世界を深く、しかし嬉々と彷徨う。傑作短編集。(講談社文庫) 老人の中に潜んでいた性と生の異界のステージ。 死を迎え入れようと決めた老人が語る、世にも奇妙な、生と性の物語。 夜の森が響かせる風の音のように心を揺さぶる、いまの勝目梓しか書けない小説。 羽毛のかわりに女性の体毛をつめた寝具にくるまれて、死の国へ旅立つ……愛する妻に先立たれ、長い生をすごす老人は、途方もない計画に取り憑かれる。死を迎えんとした時、意志に反して救われ、病室に繋がれた自称百九歳の老人は妄執と現実とのあわいを、生と性の異世界を深く、しかし嬉々と彷徨う。傑作短編集。 仙境 幻の脚 アトリエ 化身 葉桜 天の恵み 六道の辻 解説 成田守正
短いから、気持ちいい。「10分で読める」官能短篇集 長けりゃ、いいってもんじゃない。 小説現代に好評掲載された「10分で読める」短編官能小説集。勝目 梓「始末書」/阿部牧郎「水牛になった女」/西澤保彦「タイツの秘密」/睦月影郎「あによめ」/藍川 京「妖天女」/南 綾子「かえるのうたがきこえてくるよ」/大石 圭「隣室の客人」/蛭田亜紗子「さなぎのなかみ」/草凪 優「 スカートの中」/平山夢明「おまえのおふくろはべったべた」。短いから、気持ちいい。10人が贈る極上の競宴。 「始末書」 勝目梓 「水牛になった女」 阿部牧郎 「タイツの秘密」 西澤保彦 「あによめ」 睦月影郎 「妖天女」 藍川京 「かえるのうたがきこえてくるよ」 南綾子 「隣室の客人」 大石圭 「さなぎのなかみ」 蛭田亜紗子 「スカートの中」 草凪優 「おまえのおふくろはべったべた」 平山夢明
76歳で二度目の殺人を犯した緒方一義は刑務所で自らの過去を振り返るー。九州の伊万里湾に浮かぶ島で生まれ、炭坑夫をしていた緒方は、昭和22年、隣家に募集坑夫として越してきた浦川の妻、久子に憧れ、ほのかな想いをいだく。だが浦川が緒方の母と無理やり関係を持ったことから、緒方は浦川を殺してしまう。そして刑務所から久子にお詫びの手紙を出した緒方の元に届いた「あたしは緒方さんをうらんではいません」という返事。出所して52年後、久子への変わらぬ想いが、緒方を再び罪へと導く…。
いまは亡き「あのひと」の気配が、生きるわたしの官能を昂ぶらせるー。亡き恋人の母との一瞬の交情、妻が体を重ねるたびに漂わせる亡き前夫との記憶、一晩を過すことで、死者への復讐を果たそうとする女、思春期から抱きつづけた義母への儚い想い…。性愛の深遠を余すところなく描いた、大人のための短篇集。
元銀行員の三沢英司は行員時代、上司の柏木の言いなりになった結果、妻と娘をオモチャにされ喪ってしまった。激しい怒りと怨みは柏木の妻と娘に向けられ、二人を拉致、監禁。社畜から鬼畜へと変化した男は、暴虐の限りを尽くした復讐劇を開始した。エロス&バイオレンスの嵐がノンストップで吹きすさぶ。
高級クラブのインテリママは実は組長の情婦だった。バーテンの三迫は組長にママの浮気を監視する番犬になれと命ぜられ、ママと寝起きを共にすることになる。そこから話は始まる。青年を殺人地獄に陥した女の真実とは!勝目ハードボイルドの渾身作。