著者 : 千早茜
あなたを絶対手に入れる、どんなことをしてもー。許婚を待たなくてはならない女、恋人に過去を知られたくない女、小島と男を奪い合う女、愛人と夫との間で揺れ動く女、若くてきれいな男しか愛せない女…。略奪愛をテーマに、燃え上がりはじける愛のひと時を、5人の女性作家たちが紡いだ、におい立つようなめくるめく恋愛譚。
その里は地図に載っていないという。里のお屋敷には燃えるような躑躅の花が植えられており、どんな病でも治してしまうという“蟲宿しの一族”の末裔で強大な力を得た御先が住んでいた。御先は心から慕ってくる雅親を突き放し、里を出て夜の店で働いていた四と出会う。そして“事件”は起こった…。現代の都会の闇に紛れ込み、不老不死の一族が、時を超えて愛しい人を求める、禍々しくも哀しい現代奇譚。
女子校の臨時教員・萩原は美術準備室で見つけた少女の絵に惹かれる。それは彼の恩師の娘・小波がモデルだった。やがて萩原は、小波と父親の秘密を知ってしまう……。(「アカイツタ」) 大手家電メーカーに勤める耀は、年上の澪と同棲していた。その言動に不安を抱いた耀が彼女を尾行すると、そこには意外な人物がいた……。(「イヌガン」) 過去を背負った女と、囚われる男たち。2つの物語が繋がるとき隠された真実が浮かび上がる。
実体がないような男との、演技めいた快楽。結婚を控え“変化”を恐れる私に、男が遺したもの(「ほむら」)。傷だらけの女友達が僕の家に住みついた。僕は他の男とは違う。彼女とは絶対に体の関係は持たない(「うろこ」)。死んだ男を近くに感じる。彼はどれほどの孤独に蝕まれていたのだろう。そして、わたしは(「ねいろ」)。昏(くら)い影の欠片が温かな光を放つ、島清恋愛文学賞受賞の恋愛連作短編集。
自由のない家族関係を嫌う美里は、一回り年上の恋人と彼の息子が住む家に転がりこむ。お互いに深く干渉しない気ままな生活を楽しむ美里だったが、突然の恋人の失踪でそれは破られた。崩壊寸前の疑似家族は恢復するのか?血の繋がりを憎むのに、それを諦めきれない三人。次世代を担う女流作家の新家族小説。
女のコのためのちょっとコワくて不思議な文芸誌。巻頭の動物奇談小説特集には、はやみねかおる氏と令丈ヒロ子氏が初登場。人気の連載に、辻村深月、柴崎友香、千早茜、伊藤三巳華、今日マチ子ほか。
古い都の南、朽ちた楼門の袂で、男は笛を吹いていた。笛を吹いてさえいれば、男は幸せだった。ある春の夜、笛を吹く男の前に、黒い大きな影が立っていた。鬼だ。笛の音を気に入った鬼は、男に絶世の美女を与え、百日の間は絶対に触れてはならぬと告げるが…(「鬼の笛」)。人ならざるものを描くことで浮き上がる、人間の業や感情。民話や伝承をベースに紡がれた六編を収録した短編集。
関係のさめた恋人と同棲しながら、遊び人の医者と時々逢いびき。仕事は順調なのに、本当に描きたかったことを見失っているー京都在住イラストレーター神名葵29歳の熱くてダークな疾走する日常。千早茜、待望の長編小説。
「アカイツタ」美大を卒業したものの、画家になることもなくくすぶっていた萩原は、美術評論家の真壁教授の紹介で、女子校の臨時教員として勤めることになる。美術準備室で見つけた、暗い目でこちらを見つめる少女の絵。自画像だと思ったそれは、謎の死を遂げた鈴木という女生徒が、真壁教授の娘・小波を描いたものだった。やがて萩原は小波に惹かれていくが、彼女には誰にも言えない秘密があった…。「イヌガン」大手家電メーカーに勤める耀は、年上の彼女、澪と一緒に暮らして3年になる。掴みどころのない澪だったが、その穏やかな日々に満足していた。しかし、澪がときおり漏らす本音と怪しい行動に、耀は少しずつ不安を抱いていく。ある日、澪を尾行した耀は、思いがけない場面を目撃することになる…。過去を背負った哀しき女と、彼女に囚われていく男たち。2つの物語がつながったとき、隠された真実が明らかになる。あふれ出す情感を描き切った、心ゆさぶる墜落と再生の物語。