著者 : 和田忠彦
ジェノバの少年マルコが母親を捜して遠くアンデスの麓の町まで旅する「母をたずねて三千里」の原作を収録。どこの国でも、いつの時代でも変わらない親子の愛や家族の絆、あるいは博愛の精神を、心あたたまる筆致で描く、デ・アミーチス(1846-1908)の代表作。世界中の人びとに愛読されつづけてきたイタリア文学の古典的名作の新訳。改版 十 月 始業式の日 担任の先生 不幸なできごと カラブリアの男の子 ぼくの同級生 やさしいふるまい 二年のときの先生 屋根裏部屋で 学 校 パドヴァの愛国少年(今月のお話) えんとつ掃除の子 万霊節(死者の日) 十一月 ぼくの友だちガッローネ 炭屋と紳士 弟の担任の先生 かあさん 同級生のコレッティ 校長先生 兵隊さん ネッリをかばうもの クラスの一番 ロンバルディーアの少年監視兵(今月のお話) 貧しいひとたち 十二月 商売人 み え 初 雪 左官屋くん 雪合戦 女の先生たち けがをしたひとの家で フィレンツェのちいさな代書屋(今月のお話) 意志の力 感謝の気持ち 一 月 助手の先生 スタルディの図書室 鍛冶屋の息子 うれしいお客さま ヴィットリオ・エマヌエーレの葬儀 フランティ,学校を追いだされる サルデーニャの少年鼓手(今月のお話) 国を愛する心 ねたみ フランティのおかあさん 希 望 二 月 ふさわしいメダル すばらしい決心 機関車 思いあがり 仕事のけが 囚 人 おとうの看護人(今月のお話) 仕事場 ちいさな道化師 謝肉祭の最後の日 目の見えない子どもたち 病気の先生 道 三 月 夜の学校 けんか 子どもの親たち 七十八号 ちいさな死 三月十四日の前日 賞状授与式 口あらそい ねえさん ロマーニャの血(今月のお話) 瀕死の「左官屋くん」 カヴール伯爵 四 月 春 ウンベルト王 幼稚園 体育の授業で とうさんの先生 回復期 労働者の友だち ガッローネのおかあさん ジュゼッペ・マッツィーニ 市民勲章(今月のお話) 五 月 くる病の子どもたち 犠 牲 火 事 母をたずねて三千里アペニン山脈からアンデス山脈まで(今月のお話) 夏 詩 耳のきこえない女の子 六 月 ガリバルディ 軍 隊 イタリア 気温三十二度 とうさん 野原で 工員さんの賞状授与式 先生が亡くなった ありがとう 遭 難(最後の月のお話) 七 月 かあさんの最後のページ 試 験 最後の試験 さようなら 《解説》想像力のゆくえーー教育と物語のはざまで(和田忠彦)
「パロディーと戯れるわたしには、モラルも批評精神も皆無だ」(エーコ)。老女たちの性的魅力を綴った手記『ノニータ』、新大陸発見の実況中継、『フィネガンズ・ウェイク』続篇の書評…古今東西の文学作品、映画、取扱い説明書など、変幻自在のパロディー集。「知の巨人」による最高の遊戯的エッセイ。大幅増補「完全版」!
幻想と現実の奇妙なブレンド 文豪ゴーゴリの妻は空気の量によって自在にその姿を変えるゴム人形だった! グロテスクなユーモア譚「ゴーゴリの妻」。カフカの死んだ父親が巨大な蜘蛛となって現れる「カフカの父親」。音の重さや固さ、色彩、味や匂いについての考察「『通俗歌唱法教本』より」。イギリス人の船長から一年間習ったペルシャ語は実際には世界中のどこにも存在しない言葉だった……「無限大体系対話」など、カルヴィーノ、ブッツァーティと並ぶイタリア文学の異才ランドルフィの途方もない奇想とナンセンス、特異な言語感覚に満ちた短篇を集成。奇怪な幻想、残酷な寓話から擬似科学的なパロディ、さらには日常的な題材、回想記まで、自在な語り口で物語を紡ぎだす孤高の天才の不思議な世界。奇妙な乗組をのせた船の超現実主義的な航海を描く「ゴキブリの海」を追加収録した決定版傑作集。
「あなたお名前は?」記憶喪失から自分を取り戻すことはできるのか。取り戻したとしてそれは本当に自分なのか。エーコの赤裸々な妄想と姿態が晒される衝撃の超・小説。戦中戦後のイタリア文化史を回顧するかのように図版を満載した異色の本であり、また、著者初めてといえる自伝的語りと展開は幾通りにも読み解きをうながし、読む者は謎に絡め取られる。エーコ畢生の神秘の技法、ここに大団円を迎える!
記憶は人間にとって最高の解決策というべきもので、時間は人間に対して流れ、流れた時間が過去になる。ぼくははじまりというものの驚異を堪能したー。記憶喪失のヤンボにあらゆる断片がまとわりつく…霧、霧、霧、コーヒー、あのメロディ、本、そして麗しのシビッラ!霧に隠されてしまった「流れた時間」を奪取すべく、彼は子ども時代を過ごした田舎の家の屋根裏に潜入する。驚嘆すべき女王ロアーナとの邂逅、ヤンボは帰還できるのか?
学生時代に一人の女を愛した男たち、世界に対峙する魔法を願う少女、シュレミールを自称するインド通のユダヤ人、撮影カメラの前で真実を見出す俳優たち…。映画に着想を得つつ描かれためくるめく物語。名手タブッキ『インド夜想曲』につづく11の短篇集。
ポルトガル・サラザール独裁政権下で姿を消した、謎の女イザベル。『インド夜想曲』『遠い水平線』の著者が遺した最後のミステリ 姿を消したひとりの女性の軌跡を辿りながら、語り部の現実と幻想の糸で織りなされる彩り豊かな曼荼羅の中を、私たちは旅をする。--ヤマザキマリ(漫画家)
無に向かって広がる声の万華鏡。 読めば読むほどふかみにはまる。 タブッキに惚れたってことよ。--小池昌代(詩人) こうして小説になったこれらの手紙の性質はどんなものか話せと言われたら、恋文だと規定してみせるかもしれない。それは相当広い意味において、つまり広大な愛の領域と同じくらい広くて、怨恨、憤慨、郷愁、後悔といった、愛の領域とは無縁に見える未知の領域にまで広がっている。--A・T「あとがき」より
東欧の元諜報部員、国連平和維持軍の被曝した兵士、ハンガリー動乱で対峙した二人の将軍、古びた建物を駆け抜ける不思議な風の歌…。ベルリンの壁崩壊以後、黄昏ゆくヨーロッパをさすらう記憶の物語。
中年男性、職業不詳、家族は妻と娘一人、パリとローマにアパートを所有ーこれがパロマー氏だ。彼は世界にじっと目を疑らす。浜辺で、テラスで、沈黙のなかでー。「ひとりの男が一歩一歩、知恵に到達しようと歩みはじめる。まだたどりついてはいない。」三種の主題領域が交錯し重層して響きあう、不連続な連作小説27篇。
イタリアの少年エンリーコが毎日の学校生活を書いた日記と、あのジェノヴァの少年マルコが母親を捜して遠くアンデスの麓の町まで旅する『母をたずねて三千里』など、先生の毎月のお話九話。どれも勇敢な少年と、少年を見守る優しい大人たちとの心のふれあいを描く不滅の愛の物語です。どこの国でも、いつの時代でも変わらない親子の愛や家族の絆の強さを、読みやすい新訳でお届けします。
1935年11月。フェルナンド・ペソアは聖ルイス・ドス・フランセゼス病院で死の床に就いていた。苦悶の三日間、ポルトガルの偉大な詩人は、訪れたかれの異名たちと話を交わし、最後の遺志をつたえ、生涯の伴侶であった亡霊たちと対話を交わす。それはまるで妄想のなかの出来事。小説とも(架空のものだとはいえ)伝記ともみえる短篇の中で、アントニオ・タブッキは20世紀最大の作家のひとりの死を、やさしく情熱的に描いている。
オウィディウスからフロイトまで、「芸術家」たちの《失われた夢》が、肉体をそなえ、息づき始めた。この夢は、誰がみた夢なのか-。現代イタリア文学の鬼才タブッキが、夢を愛するすべての人に贈る、小さな夢の標本箱。
『むずかしい愛』は、現代人の日常生活の中でのさまざまな“すれちがい”のおかしさを集めた、ユーモアとエスプリに満ちた短篇集である。活字中毒者が繰り広げる微笑ましい恋愛光景を描いた「ある読者の冒険」、写真マニアの秘かな願望を探る「ある写真家の冒険」他、全12篇を収録。
蟹だらけの船。魚とりの少年。羊飼いと狩人。猫と警官。菓子泥棒。パルチザンと少女。動物たちの森-。地中海からアルプスにつらなる自然を背景に描かれた、ユーモラスで寓話的な、そしてみずみずしく爽やかな、11の珠玉の短篇。名作『まっぷたつの子爵』から、遺作『パロマー』につながる、カルヴィーノの多彩な魅力の原点をなす初期作品集。