著者 : 堂場瞬一
エンタメの深層を摑め。 大正時代、出版華やかなりし頃。 「市民公論」編集部の松川は、窮地に立たされていた。担当した企画のせいで、筆者が大学を追われることになったのだ。奔走する松川に、主幹は驚きの決断を下す。 同じころ、当代きっての人気作家・菊谷は、「書きたいものを書く」ための雑誌を立ち上げようとして…… 「100万部突破の常勝雑誌を作る」宿願は叶うのか? 徳川夢声、谷崎潤一郎ーー 作家や文化人たちが侃々諤々の議論を交わしながら、面白いものを作ろうと奮闘する様を描く。
東日本大震災の翌年、2012年夏。都内で起きた四件の殺人。被害者は全員、四半世紀前の都内飛翔弾事件の容疑者だった。同一犯か、別個の事件なのか。そして犯人の動機は?捜査一課理事官の高峰、目黒中央署署長の海老沢。病を得、妻との別離の予感を抱え、激変する時代に翻弄される二人の刑事は、それでも警察の未来を見据え、後進に背中を見せ、最後の戦いに臨む。
水沼加穂留は神奈川県警の巡査部長。捜査一課への配属希望は通らぬまま30歳までキャリアを重ね、春の異動で「訟務課」へ。警察が訴えられた民事裁判の対応をする部署だ。ほどなくして外部からも新人の新崎大也がやって来る。淡々として同僚と関わらない彼だが、実は弁護士の資格を持つらしい。なぜ弁護士が警察職員に?そんな折、強盗犯グループへの違法捜査を問う裁判が発生し、加穂留と新崎が担当することに。威圧的な取り調べはなかったという捜査一課の言葉を信じ、彼らを守ろうと公判に臨む加穂留。しかし法廷で、関与した警察官の「嘘」が暴露されー。違法捜査は本当にあったのか?法と組織、ふたつの正義の間で揺れる巡査部長・加穂留の決断はー。圧巻の法廷×警察小説。
190センチの高身長が目立つ、元弁護士の私立探偵・須賀大河の元に、ある日、学生時代の友人で現在は有名IT社長の春山から、社内に貼り出された会社を誹謗中傷する怪文書の調査依頼が舞い込む。中傷はやがて大金を要求する脅迫に発展。大河は春山の秘書やハッカーの友人の協力で犯人に罠を仕掛けるが、行く手には思わぬ悲劇が…著者のハードボイルドへの熱き想いが結実した正統派私立探偵小説登場!
21世紀に沸く平成日本。海外逃亡していたはずの極左の最高幹部が突然仙台に現れ、公安に衝撃が走った。身柄の移送を担当した公安一課の海老沢は、警察官人生最大の痛恨の失敗を犯す。一方、捜査一課の高峰は目黒の空き家で殺害された元代議士秘書の身辺を探る。被害者の経歴には6年間の不自然な空白があった。新聞記者からの思わぬ情報。死の床にある元刑事の父の言葉。そして海老沢に下った極秘の特命捜査ー事件の様相は一変する。
憲法は改正され、20歳以上の国民から合計1000人の「国民議員」がランダムに選出され、総理大臣は直接選挙で選ばれる。議会はオンラインで行われ、年間報酬500万円、任期は4年。議員活動は全てオープンになり、国民は常に確認、監視できるようになっていた。突然議員に選ばれた大学生の混乱、議員の不正を監視する機関の危うさ、一気に権限が大きくなった官僚…そして、現首相と旧体制に固執する現都知事らの政権争いの行方は。
新橋署生活安全課の刑事・天木淳は洋上風力発電の最新技術データが、業界トップメーカーから、ライバル社に流出していることを知る。内偵捜査を始めると、鍵を握る人物が、大学時代の友人であることがわかった。卒業して二十年、まったく違う道を歩いていたふたりの運命がいま交錯する。
パンデミックに喘ぐ二〇二一年の日本。政治家が不祥事を起こしても新聞は追及しきれないーそれは民自党顧問・田岡が目指す政治によるマスコミ支配が進んだ証左であった。田岡に抵抗する東日新聞顧問・高樹は、この戦いに孫の健介を東日新聞新潟支局記者として投じる。田岡王国と呼ばれる新潟の地盤を継いだ田岡の息子をスキャンダルで追い詰め、落選させるのだ。だが、田岡の孫・愛海の存在が一抹の影を落とす。五十年にわたる二家の因縁が決着しようとしていた…大河政治マスコミ小説三部作、ついに完結。
メディアを排除し、「ザ・ゲーム」を開催せよ!コロナ禍にもかかわらず、強引に開催された東京五輪の最中、大学教授が、「五輪は集金・分配システムと化し、意義を失った」という言葉を残して、日本を去った。数年後、記者がある情報を手にする。世界的企業が、新たなスポーツ大会「ザ・ゲーム」を企画している、と。記者は、この大会を仕掛ける、謎の組織の正体を暴けるのか。
バブル崩壊、未曾有の震災とテロを経て、時代が激しく揺れ動いた一九九六年十二月。父親と同じ新聞の世界に飛び込んだ新潟支局の新米記者・高樹和希のもとに、謎の男から不正選挙資金疑惑の密告が。初めてのスクープの予感に和希は沸き立ち、和希の父で今は社会部長の治郎も部下を動かして共に取材を進める。だが、その背後には、二十五年前に贈収賄事件で治郎と敵対し、以来マスコミの支配を目論む政治家・田岡総司とその秘書で息子の稔の影が…大河政治マスコミ小説三部作第二弾登場!
不動産営業マンが鉄パイプで滅多打ちにされ殺害された。高級マンションに住みポルシェを乗り回していた被害者に見え隠れする極左の過去。バブル景気に浮かれる世で、思想活動は衰退の一途をたどる。その狭間で起きた事件を、二人の刑事が追う。父の道を継ぎ鷹となった息子たちが見据える、平成という時代。警察小説の旗手による大河シリーズ「日本の警察」平成編。
高度経済成長下、日本の都市政策に転換期が訪れていた一九七一年十二月。衆議院選挙目前に、新潟支局赴任中の若き新聞記者・高樹治郎は、幼馴染みの田岡総司と再会する。田岡は新潟選出の与党政調会長を父に持ち、今はその秘書として地元の選挙応援に来ていた。彼らはそれぞれの仕事で上を目指そうと誓い合う。だが、選挙に勝つために清濁併せ呑む覚悟の田岡と、不正を許さずスクープを狙う高樹、友人だった二人の道は大きく分かれようとしていた…大河政治マスコミ小説三部作開幕!
日中戦争の拡大を受け、東京オリンピックの返上が決まった1938年。大日本体育協会は、オリンピックに代わる国際大会の開催を画策していた。立教大学野球部出身で、体協の理事長・末弘の秘書を務める石崎は、体協幹部や陸軍などの政治的な思惑に疑念を抱きながらも、平和の象徴としての代替大会を開催するべく曲者ぞろいの面々と交渉を重ねていく。一方、ハワイにある日系人野球チーム「ハワイ朝日」のマネージャー・澤山の元に、旧知の石崎から電報が届く。返上された東京オリンピックの代わりとして開かれる「東亜競技大会」に、野球のアメリカ代表として参加してくれないか、という招請状だったー。
大物司会者の息子が、元恋人を殺害したと出頭。捜査一課の女性刑事・柿谷晶は取り調べに臨む。だが、被疑者は犯行を自供する一方、動機については口を閉ざす。晶は被疑者の家族に接触するが、家族はネット上の誹謗中傷に悩まされていた。加害者の家族だからといって、責めることは許されるのか?自らの苦い記憶が甦る中、家族に張り付き、事件の背景を探る晶。犯罪被害者支援課の村野らと協力しあい、留まることのない加害者家族への悪意と戦いながら捜査を続ける晶だったが、やがて事態は最悪の方向に向かう。贖うべき「咎」は誰のものなのかー。
銀座の高級クラブで放火事件が発生。オーナーと容疑者の女が命を失った。警視庁捜査一課の刑事・滝上亮司が、捜査を進めると、背後に政治家である父の存在が浮かび上がってきた。かつて父を憎み、故郷を捨てた刑事は、封印した「汚れた過去」と向き合わざるを得なくなる。この事件は、父を失墜させるのか、自らの破滅を招くのか。
30年間隠されてきた幼女誘拐連続殺人。県を跨いだ、幼女を狙った卑劣な事件。縄張りに拘る無駄な県警のプライド。利権を死守したい政権による圧力。すべてを乗り越え、真相を追え。20周年を飾る、記念碑的作品、誕生。