著者 : 大佛次郎
元海軍将校が目にした戦後日本の軽薄と卑屈という荒廃。海軍兵学校出身のエリート将校・守屋恭吾は、公金に手をつけ引責辞職後、祖国には戻るまいと賭博の眼力を養いつつ、欧州各地を放浪していた。やがて、ある事情から“帰郷”することになった守屋は、大きく変貌した戦後の日本に落胆と義憤を感じる。戦争という過去の記憶から逃れようとするあまり日本の伝統や誇りまでも失ってしまった国民たち。-戦前と戦後の日本人は何が変わったのか?大佛次郎が当時の日本人へ自戒のメッセージを込めた記念碑的名作で1948年毎日新聞に連載され後に映画化、欧米でも高く評価された。
長州戦争を目前に壮大なスケールで展開する鞍馬天狗の最終章。深夜、江戸伝馬町の牢から一人の脱獄囚が夜の闇に消えた。だが、その真意は公儀大目付による“泳がせ”-。探索に乗り出した鞍馬天狗に、脱獄囚を追尾するもう一人の男が襲いかかり、彼らは横浜関内の異人屋敷へ逃げこむ。そこで頻発する奇怪な事件から、場面は神戸へ、そして上海へと広がっていく。長州戦争を目前にしてせめぎあう幕府と長州、暗躍する鉄砲商人など壮大なスケールの物語が展開していく。時代小説の名作「鞍馬天狗」から、評論家・鶴見俊輔が厳選した傑作シリーズの最終第五弾。解説も鶴見が特別寄稿。
江戸の鉄砲鍛冶が次々と行方不明になる奇怪な事件が頻発。柳橋芸者の小吉から経緯を聞いた鞍馬天狗は、事件の裏になにか大がかりな陰謀があると睨む。黒椿を愛でる謎の幻庵老人、相川の佐渡奉行から今は老中となった松平主計介、佐渡視察に行って命を落とした大目付・志村織部らが江戸情緒たっぷりの舞台でうごめく。そして遂に鞍馬天狗は思わぬ獲物をとらえる。時代小説の名作「鞍馬天狗」から、評論家・鶴見俊輔が厳選した傑作シリーズの第四弾。
江戸が東京に変わると大名たちは国許へひきあげ、夜の街にはひと気が消えた。傍若無人な浪人たちや錦旗を楯にして横暴な官軍。また幕府に殉じようとする老武士や函館戦争へ参じて帰らぬ夫を待つ若い妻など時代の狭間に蠢く人々が仔細に描かれる。そんな折、市井の人となった鞍馬天狗は、ある夜、巡邏の者に襲われ、思わぬ事件に巻きこまれる。時代小説の名作「鞍馬天狗」から、評論家・鶴見俊輔が厳選した傑作シリーズの第三弾。
勤王と佐幕の間の謀略に翻弄される志士たちの悲劇から、冷酷な政治と熱い志の葛藤を描いた「地獄の門」。長州の志士を斬った嫌疑がかかってしまった鞍馬天狗は、これは仕掛けられた罠では…と疑念を抱く。新選組と見廻組も絡んで二転三転する展開の末、隠れていた裏切り者は意外な人物だった「宗十郎頭巾」。名作時代小説「鞍馬天狗」から、評論家・鶴見俊輔が厳選した傑作シリーズの第二弾。解説も鶴見俊輔が特別寄稿。
角兵衛獅子の少年・杉作を囮に、鞍馬天狗を取り囲んだ新選組。隊長・近藤勇も新手をひきつれそこに駈けつける。大坂城代あての密書を奪った鞍馬天狗だったが、謀られて地下の水牢に閉じこめられる。恩人を助けようと城へ忍びこんだ杉作少年ももはや袋のねずみー。幕末の京を舞台に、入り乱れて闘う勤皇の志士と新選組。時代小説の名作「鞍馬天狗」から、評論家・鶴見俊輔が厳選した傑作シリーズの第一弾。
蝦夷地松前藩。家老蛎崎主殿は船問屋の赤崎屋と結託し、赤崎屋の商売敵八幡屋に密貿易の嫌疑をかけて取り潰しを図る。併せて正義感の強い目障りな役人三木原伊織も亡き者にしようと企てるが…。そこに、江戸の盗賊佐野屋惣吉、訳あってアイヌに成り済ましていた元旗本の土屋主水正、そして和尚の覚円ら、悪事を捨て置くことのできない男たちが次々と立ち上がる。彼らの助けにより、八幡屋の遺子銀之助は本土津軽へと逃び延びるが、一方、伊織の妻子の身にも危険が迫っていた。息もつかせぬ展開の大衆小説。書評家・北上次郎オススメの名作シリーズ第一弾。
八幡屋事件から十一年。首謀者の赤崎屋は、八幡屋の遺子銀之助と、これを助けた土屋主水正たちを始末するべくいまなお手を尽くしていた。佐渡に流されていた佐野屋惣吉は、松前発家老蛎崎主殿の弟の差し金で命を狙われ、成長した銀之助は赤崎屋に捕えられてしまう。救出された銀之助は、いよいよ父の敵、赤崎屋を討つことを決意。正義に篤い主水正や覚円和尚、そして露西亜に流れ着いていた三木原伊織らも、一味を成敗するため蝦夷地へ向かう。結集した正義の“ごろつき”どもを乗せ、船は最終決戦の地、赤崎屋一党が潜む孤島へ!波瀾万丈の大ロマン。
勤皇・佐幕が死闘をくりひろげる幕末の京都。立ち往生していた荷車を押しやったばかりに、町人ふたりが斬殺された。荷車には千両箱が…。下手人は二条城御金蔵番の手代木六太夫だという。ところが、その六太夫が、二条城の焼印の入った千両箱とともに、効外の古井戸から死体となって引きあげられた。なにやら、いわくつきの金らしいが。隠謀の臭いをかいだ鞍馬天狗と杉作少年が謎を追う。痛快時代長篇。
不審な浪人が出入りする空屋敷を襲った鞍馬天狗は、だが、床下に仕掛けられた爆薬からからくも逃れ、相次ぐ浪人殺害の下手人を追った。一方、弟・差竹主水正殺害犯人を追う春日井右京までが狙撃され、父と伯父の仇を追う佐竹恵之助。一味の姿を求めて踏みこんだ信州路だが、そこにはすでに鞍馬天狗の姿があった…。浪士殺害の黒幕の正体は?その狙いは?傑作時代長篇完結篇。
長州征伐前夜の幕末の江戸。幕府典獄・石出帯刀らは、伝馬町大牢から獄門寸前の元大船頭本荘長太夫をひそかに破獄させた。長太夫に影のようにつき従う幕府お庭番。果たして帯刀らの狙いは何か?新興開港地横浜の異人館に逃れた長太夫らは、数万両の大金とともにシャンハイに向かった。博多商人、俳諧宗匠、遊び人と次々と姿を変えて謎を追う鞍馬天狗も、蒸気船であとを追うが…。痛快時代長篇。
鞍馬天狗の追及を逃れてシャンハイへと向かった本荘長太夫は、はじめて破獄の真相を知った。長州征伐のためシャンハイで軍艦を買付け、日本に回航させようと目論んだのだ。だが、この企みは失敗に終り、長太夫は奇兵隊隊士篠塚多七郎のつてで長州へと向かった。一方、鞍馬天狗も西郷隆盛の密命をうけ、京から長州戦争の真只中へ。ようやく巡り会った長太夫と天狗の巖流島の対決。痛快時代長篇完結篇。
長州から京に戻った鞍馬天狗は再起を期して白河三位との連携を計るが、勤王派公卿の連判状を握る裏切り者・梶谷主馬が白河卿に付きまとっていた。一方、杉作の手習いの師匠・香取任蔵は新選組隊士斬殺の容疑で捕えられ、その間に香取宅から海北友松作の名画が盗まれていた。連判状の隠し場所は?盗まれた名画はどこに。吉兵衛と杉作を従えた勤王の志士・鞍馬天狗が幕末の京を舞台に活躍する傑作時代長篇。
大名、旗本、豪商の邸のみを荒し、貧乏人に恵むという義賊次郎吉。町方の必死の捜索にもかかわらず杳として正体を見せず、江戸八百八町の暗闇を翔ける。だが豪商蔦屋の奸計に、次郎吉は追いつめられた。老いの一徹、次郎吉を追う目明し勘右衛門、奇妙な友情で結ばれる浪人小谷新九郎、蔦屋に追いたてをくらいながらも次郎吉に声援する貧乏長屋の面々…。下町人情を背景に義賊の活躍を描く長篇時代小説。
時は元禄。播州赤穂の領主・浅野内匠頭は城中での刃傷で切腹。遺臣たちは仇吉良上野介を討つことを誓うが、城代家老大石内蔵助には理不尽な裁きを下した公儀に対する恐りはあっても、上野介への復讐の念はなかった。内蔵助の弱腰に不満を募らせる同志たち。血気盛んな若者・小山田庄左衛門もそのひとり。だが、仇討にそなえて江戸に向かった庄左衛門、道中で病に倒れてしまった。長篇歴史小説。