著者 : 大前粟生
「男の僕が有害な男性性を告発することが僕の大義なのだと、本気で思った。どこで間違った?」 ポリコレ系文化人×弱者男性芸人 自らの傷を利用する二人の男。歪な同居生活の行く末はーー 【『ぬいしゃべ』著者、入魂の衝撃作!!】 映画化もされた『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』でジェンダー差別に傷つく男性の姿を繊細に描き、話題を呼んだ作家・大前粟生。 本作は、「差別への抵抗・告発すらも消費される社会」の闇へも踏み込んだ超渾身作。 「増幅していく差別と偏見と絶望を受け止めた先に、大前さんは一筋の光を見出す。」 ー吉田恵里香(脚本家・NHK連続テレビ小説『虎に翼』アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』他) 「この物語が届かない時代なら、もう本当に手遅れだ。」 ー大島育宙(芸人・YouTuber)
女子高生の恋バナ相手は70代のおじいさん 北鴎町にある「かもめジム」はバブル期に建てられた7階建ての大型ジム。今では利用客が減り、経営難が続く一方で、会員の八割を締める高齢者たちの出会いの場となっていた。 ジムの受付でアルバイトをする17歳の柏夢は、70代男性・西原さんから会員の三田園さんという男性が好きだと相談を受ける。「恋なんてオレの人生でこれが最後」という西原さんを応援する夢も、次第に自身の恋を打ち明けはじめ、共通の悩みである“恋愛”を通して56歳差の友情が始まるが!? 30代半ばで結婚に焦りながらも推し活に勤しむサオリさん。会員になる気ゼロでも毎日愚痴を吐きに来るおばあさん・橋本さん。アイドルをやめてボディビル選手を目指すかえちゃん。憧れの先輩を追って野球部を辞め、吹奏楽部に入った道重くん……。 世代や性別を超えて、交わるはずのなかった人たちの人生が交差する群像小説。 【編集担当からのおすすめ情報】 『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(河出書房新社)や『きみだからさびしい』(文藝春秋)など話題作を次々に発表してきた気鋭の作家・大前粟生さん。本作で描かれる世代も性別もバラバラな人たちの交流を通し、他人のために本気で泣いたり、心配したり、がむしゃらに何かを伝えたり、そういう事が「やさしさ」なのかもしないと、何度もハッとさせられました。気づかぬうちに線引きしている自分の“世界”から一歩踏み出したくなる一作です。何気ないセリフや行動に思わず笑ってしまうシーンも満載なので、ぜひ最後までお楽しみください!
『芸人雑誌』の太田出版が送る、『おもろい以外いらんねん』大前粟生による世界初“ピン芸人”小説! Aマッソ加納の紹介(『アメトーーク!!』)によって業界の話題をさらった『おもろい以外いらんねん』に続く大前粟生「芸人本」の最新作は、これまで描かれることの少なかった“ピン芸人”にフォーカスをあてる。主人公・高崎犬彦とそのライバル・安西煮転がしの約20年もの人生を追いかけることで、芸人にまとわりつく「売れること」と「消費のされやすさ」の葛藤を描く。 「本気でネタを見てくれてる人って、売れれば売れるほど少なくなっていくんか? 売れるほど芸人らしくなくなっていくんか? せやったら、売れるってなに? 僕は、僕らは、なんのために芸人しとるん?」 ーー本文より
「弱くなりたいと思うのって、そんなに悪いことですか?」 若い世代から厚い信頼を集める著者が、〈弱さ〉アピールのはびこる現代のリアルを優しくあぶり出す会心の一作! ■あらすじ ある日、知らない間に “チワワのピンバッジ” が付けられていたという呟きがネットに溢れた。 その数、なんと800人以上! 主人公・琴美の想い人も、被害者のひとりだった。 〈チワワテロ〉と呼ばれるこの奇妙な事件の直後、彼は姿を消してしまった。 「僕のことはもう信じないで」とメッセージを残してーー。 どうして彼は姿を消したのか? 琴美は、親友で「全肯定インフルエンサー」のミアとともに、彼の失踪とチワワテロの謎を追いはじめる。 炎上時代の本音に迫るリアルタイムストーリー
幽霊になった窓子と高校生の彩姫。最凶コンビが悪しき男たちに天誅を下していくがー世にも奇妙で愛おしい、怒りの幽霊ヒーロー小説!「文藝」掲載時、快哉の声が溢れた中篇「窓子」に続編「私と窓子は覚えている」を書き下ろし収録!
町枝圭吾、24歳。京都市内の観光ホテルで働いている。 圭吾は、恋愛をすることが怖い。自分の男性性が、相手を傷つけてしまうのではないかと思うから。 けれど、ある日突然出会ってしまった。あやめさんという、大好きな人にーー。 圭吾は、あやめさんが所属する「お片付けサークル」に入ることに。他人の家を訪れ、思い出の品をせっせと片付ける。意味はわからないけれど、彼女が楽しそうだから、それでいい。 意を決した圭吾の告白に、あやめさんはこう言った。 「わたし、ポリアモリーなんだけど、それでもいい?」 ポリアモリーとは、双方公認で複数のパートナーと関係を持つライフスタイルのこと。 あやめさんにはもう一人恋愛相手がいるらしい。“性の多様性”は大事なのはわかるし、あやめさんのことは丸ごと受け入れたい……けれど、このどうしようもない嫉妬の感情は、どうしたらよいのだろう? 勤務先はコロナ禍の影響で倒産。お片付けサークルも、“ソーシャルディスタンス”の名のもと解散になった。 圭吾はゴミが溢れかえる部屋の中で、一日中、あやめさんに溺れる日々を始めるのだったーー。 いま最も旬な作家との呼び声も高い大前さん。男らしさ・女らしさの圧に悩む大学生を描いた『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』は各所から絶賛され、大きな話題に。笑いの暴力性に切り込んだ『おもろい以外いらんねん』は、アメトーーク!読書芸人回でも紹介されました。ananの「いまどき男子」特集では、若者文学の担い手として紹介されています。 本作はジェンダー文学として「アップデートされた価値観」を提示する作品でありながら、恋の切なさと喜びを凄まじい解像度で描いた、剛速球の恋愛小説でもあります。
■創作 <「シンデレラ」のその周辺> 「ふたりは、おねえさん」おくはらゆめ(絵本作家) <「桃太郎」のその前> 「みちすがら」大塚健太(絵本作家) <「三匹の子ぶた」のその後> 「こぶたとオオカミ」大前粟生(小説家) <「浦島太郎」のその周辺> 「浦島次郎のゆううつ」村上しいこ(児童文学作家) <「ポリー やかんを火にかけて」のその周辺> 「やかんはうたう」蜂飼耳(詩人、作家) ■表紙 tupera tupera(絵本作家) ■特集『森の歌が聞こえる』刊行記念インタビューーーー 「書くこと。そして森と子どものこと」小手鞠るい(作家) ■読み切り 「文の手紙」櫻井とりお(小説家) 「これはきみへの手紙」佐々木愛(小説家) ■連載 新連載! 童話「りすねえさんのおはなし 1」大久保雨咲(児童文学作家) 対談「本屋さん探訪 2」ブックハウスカフェ/探訪者:しおたにまみこ(絵本作家) 漫画「さんぱつやきょうこさん 65」長谷川義史(絵本作家) 映画コラム「子どもたちによろしく 46」長崎訓子(イラストレーター) 絵エッセイ「日々臆測 20」ヨシタケシンスケ(絵本作家) ■BOOKS 〈絵本〉及川賢治(100%ORANGE)/〈児童書〉安藤由希(児童文学作家)/ 〈YA〉金原瑞人(翻訳家)/〈大人の本〉幅允孝(ブックディレクター) ■表紙 tupera tupera
【概要】 どうぞどうぞ、短文の世界へ── 西崎憲がプロデュースする短文集シリーズ〈kaze no tanbun〉第二弾。現代最高の文章家16人が「移動図書館の子供たち」をテーマに、小説でもエッセイでも詩でもない「短文」を寄せました。作品同士が響き合う、まるで一篇の長編作品のようにも読める、絢爛の短文・書下ろしアンソロジー。(カバーイラスト:寺澤智恵子) 【著者】(五十音順) 我妻俊樹/円城塔/大前粟生/勝山海百合/木下古栗/古谷田奈月/斎藤真理子/西崎憲/乘金顕斗/伴名練/藤野可織/星野智幸/松永美穂/水原涼/宮内悠介/柳原孝敦 【kaze no tanbunとは】 「自分の生涯においてこれを作ったと自慢できる本を作りたい」。日本翻訳大賞の発起人であり、電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」主催で、「BFC ブンゲイファイトクラブ」などを企画する西崎憲の発案からスタートした、全篇新作の「短文」アンソロジーシリーズ。「短文」とは「小説でもエッセイでも詩でもない、ただ短い文。しかし広い文」(西崎氏)。シリーズ通してブックデザインは奥定泰之。第一弾「特別ではない一日」は2019年に発売。第三弾は2021年初頭に刊行予定。 古谷田奈月「羽音」 宮内悠介「最後の役」 我妻俊樹「ダダダ」 斎藤真理子「あの本のどこかに、大事なことが書いてあったはず」 伴名練「墓師たち」 木下古栗「扶養」 大前粟生「呪い21選──特大荷物スペースつき座席」 水原涼「小罎」 星野智幸「おぼえ屋ふねす続々々々々」 柳原孝敦「高倉の書庫/砂の図書館」 勝山海百合「チョコラテ・ベルガ」 乘金顕斗「ケンちゃん」 斎藤真理子「はんかちをもたずにでんしゃにのる」 藤野可織「人から聞いた白の話3つ」 西崎憲「胡椒の舟」 松永美穂「亡命シミュレーション、もしくは国境を越える子どもたち 円城塔「固体状態」
“男らしさ”“女らしさ”のノリが苦手な大学2年生の七森。こわがらせず、侵害せず、誰かと繋がりたいのに。ジェンダー文学の新星!鋭敏な感性光る小説4篇。ぬいぐるみと話すサークル“ぬいサー”の、生きにくく、どうしても鈍くはなれない若者たちの物語。
きもちのいい奇天烈。たぶん、きもちがいいのは、それが本能とか骨とかに刻まれた、文様のようなものだから。知らなかった世界なのに、自分を見つけた気もしてる。 ーー最果タヒ 妹の右目からビームが出て止まらない。薔薇園にいくと必ず鰐がいた。眠たくて何度も泣いた。紙粘土で上司たちの顔をつくった。三人でヤドカリになった。サメにたべられて死にたいだけの関係だ。あたらしい名前がいる。おばけになっているときはなにも話してはいけない。肩車をした拍子に息子の股間が私の首にくっついてしまう。隠れ家的布屋さんは月に進出している。私は忍者で、すごいのだけれど、あんまりみんな信じない。……可笑しさと悲しみに満ちた53の物語 ビーム/ムキムキ/ものを溶かす汗/世界ブランコ選手権こどもの部決勝戦/へそのゴマ/狼/骨とテレビに出た/かなでちゃん/こっくりさん/私と鰐と妹の部屋/植物園/お墓/なにかが死んでいる/屋根裏部屋/チェーンソー/夜中/歯医者さんの部屋/サンバイザー/こういうのが好き/呪われてしまえ/トースター/紙粘土で友だちをつくった/刺繡/私はゼロ/夏/僕は泳いだ/二十歳になったら悪魔になる/てるてる坊主/おばけの練習/小説とケーキ/誕生日/虹/ジョン・トラボルタ/好きなひとと同じときに体調を崩してるとうれしいよね/ミイラ/いまどこにいるの/星を読まない/ヤドカリの家/トカゲの死/サランラップ/平凡/隠れ家的布屋さん特集2049/植物って知ってる?/仕事をやめる/斧に白いサインペンで名前を書く/シェルター/知らないひと/石の動画/鞄/サメ友だち/棺のなか/雷は庭に落ちた/あそび
楽しくてばかばかしくて切実な絶望で、今にも破裂しそう。 読んでる私も破裂しそう。せーのでいっしょに破裂したい! ーー藤野可織 「たべるのがおそい」で衝撃的な話題を呼んだ「回転草」、冬休みに母と妹とともに亡き祖父の湖畔の家で過ごした恐怖の日々を描いた「夜」、キリンになったミカを解体する描写からはじまる「彼女をバスタブにいれて燃やす」、記録的な吹雪の夜に現れたユキとの氷の生活を綴った「海に流れる雪の音」をはじめとする、愛と狂気と笑いと優しさと残酷さとが混在した10の物語。 「回転草」 「破壊神」 「生きものアレルギー」 「文鳥」 「わたしたちがチャンピオンだったころ」 「夜」 「ヴァンパイアとして私たちによく知られているミカだが」 「彼女をバスタブにいれて燃やす」 「海に流れる雪の音」 「よりよい生活」