著者 : 大村芳弘
肥大化した陸海軍の硬直性を打破するため山本五十六が提唱して設立された戦力研究所(秘匿名S機関)は、今や陸海軍の上に立って対米戦の作戦を練り上げている。ヒトラーがソ連との不可侵条約を破棄して破竹の進撃を開始し、日本軍も南部仏印に進駐して、アメリカとの関係はますます悪化するばかりだった。最後通牒であるハルノートを突きつけられ、和平への道を完全に閉ざされた日本。是が非でも対米戦争は避けたかった山本だが、遂にS機関が準備してきた新兵器群で秘密作戦を決行せざるを得なくなる。日本は宣戦布告し、連合艦隊はすべての戦艦をハワイに向かわせて第一段作戦を展開するが…。
「対空目標、本艦到達まであと三十秒!」「くらま」艦内にアラームが響きわたり、乗員の叫び声がこだまする…。先ほどまでの喧噪が嘘のように静まりかえった艦橋。傍らでは豊田艦長が舵輪を握っている。中西要群司令は懊悩していた。(なぜトマホークが向かってくる?この時代にはなかった兵器なのに)我々以外にもタイムスリップした艦がいた、というのが幕僚たちの見解だ。妥当な結論ではあったが、それなら彼らの目的はいったいなんなのか。中西はやめていた煙草を急に吸いたくなった。昭和十九年十二月三日。六十年前の世界に迷い込んだ自衛艦は、昼下がりの陽光に照らされ、ルソン海峡を北上していた。感動の完結編。
平成十三年十一月、米軍を後方支援すべく、第二護衛隊群はインド洋にいた。補給作業を順調に続けて十日あまり、突如、凄まじい閃光が彼らを襲う。その刹那、旗艦「くらま」以下三隻は、昭和十九年のインド洋を漂っていた。動揺する乗組員たち。群司令たる中西は、皆に窮余の選択を促した。決が出る-我々は旧日本軍と共同して米軍と戦う!大敗を喫したマリアナ沖海戦の逆転が、中西たちの双肩にかかった。激闘の末、辛勝に持ち込んだものの、小沢艦隊は搭載機の大半を失い、派遣艦隊も積んでいる最新兵器を多数費やした。が、中西たちの戦いは、まだ終わったわけではない。次なる戦場は、レイテ。史上最大の海戦が目前に迫りつつあった。時空を彷徨する派遣艦隊を待ち受ける試練の日々。好評のシリーズ第二巻。
回転を上げる蒸気タービン。「くらま」は船体を震わせ、岸壁を離れた。平成十四年十一月、テロ対策特別措置法による第一陣の旅立ちである。南下を続ける第二護衛隊群は、佐世保を出港して一週間後、シンガポールに寄港したのち、マラッカ海峡を抜けてインド洋へ出た。十二月二日、米艦艇に対する初の補給作業が開始され、最初の作業より十日余りが過ぎたある日-。「途切れるサイクルは短くなりますし、雑音もひどくなるばかりです」通信状態が芳しくない。群司令たる中西要海将補は、顔をしかめた。その直後、凄まじい閃光と震動が艦橋を襲った…。「くらま」以下三隻は、昭和十九年のインド洋にいた。時空を漂流する派遣艦隊を待ち受ける苛酷な運命。新シリーズ刊行開始。
(もはや開戦は避けられん。こんな時に、山本が逝ってしまうなんて)永野修身軍令部総長はため息をついた。一昨日未明にもたらされた訃報。山本五十六連合艦隊司令長官の突然の死に、永野は頭の整理がつかない。ハワイ作戦のような投機的なプランに軍令部はじめ反対意見も多かったが、永野個人としては山本に賭けてみよう、と思っていた矢先だった。未曾有の対米戦争を戦い抜くには、豪胆さと強い信念をあわせた持った男がリーダーでなければとても無理な話である。(及川は反対しているが、やはりあいつしかいない)「車を用意してくれ。そうだな、三時間、いや四時間ほど留守にする」一時間後、永野を乗せた武蔵野航空工業と書かれた看板の前にいた。「戦争はビジネスだ」-新たなる発想の架空戦記。待望のシリーズ開幕。
ガダルカナル島撤退以降も、ソロモン諸島の攻防は激化の一途をたどる。再び小沢中将の下、参謀長に返り咲いた森は、夜間部隊再建に乗り出す。勢いづく連合軍を迎え撃つには、機動部隊による漸減作戦しかない。幾度となく繰り返される海戦で、森の計画はそれなりの成果を収めていくが、艦隊の損害も徐々に無視できぬほど大きくなりつつあった。これまで森の夜間作戦に苦しめられてきたアメリカ側も、次第にそれに対応しうる力を身につけ始めていたのである。ついに、戦場は-日本の絶対国防圏-マリアナ諸島へと移った。マリアナへ迫りくるスプルーアンスの大艦隊。背水の日本海軍、そして森はいかなる戦いを挑むのか?“漆黒艦隊”史上、最大の激闘!感動の完結篇。
ハワイ沖で夜間攻撃により、太平洋艦隊を壊滅させた南雲艦隊-。次に待ったいたのは、牛刀をもって鶏を割くに等しい南方作戦だった。今や南雲艦隊の司令塔となった森参謀長は、自分なりの抵抗を試みる。が、インド洋で英東洋艦隊相手に夜間攻撃を敢行後、森は艦を下りることとなり、南雲艦隊は「漆黒」の名を返上してしまった。さらに優位性を失った機動部隊に、大いなる試練が待ち受けていた…。昭和17年夏、戦争の焦点は南太平洋の小さな島、ガダルカナルに移る。矢面に立つのは、歴戦の強者たちが揃うラバウル航空隊であった。本格的なアメリカ軍の反撃に、善戦もむなしく苦境に立たされる陸攻隊。次々と火を噴く一式陸攻を森は最前線で見上げる。新たなる策を持ってラバウルへ乗り込む航空決戦篇。著者渾身の第二弾。
海軍省教育局に出世の遅れた大佐がいた。彼の名は、森昌彦。相手が間違っているなら、たとえ上司であろうとひるまず意見する姿勢。みなに煙たがられてきた男に突然、第一航空艦隊参謀長のポストが用意された。山本五十六連合艦隊指令長官より立案を依頼されたハワイ真珠湾攻撃計画。GF航空参謀の源田実中佐が、森の類まれなる頭脳に賭けたためである。猛訓練中の赤城に着任した森は、航空に関しての経験ゼロにもかかわらず、早くも機動部隊の弱点に気づき、一つの結論にたどりついた。母艦部隊を夜間攻撃の専門部隊とすること-。さらに真珠湾の攻撃を奇襲ではなく、強襲にすることを提案した。新参謀長の奇抜な構想は山本らGF上層部に受け入れられるのか?そして、ハワイ作戦の行く方は…。著者、渾身の架空戦記、刊行開始。
奇しくも開戦一周年を迎えた昭和17年12月8日、ビアク島をめぐる戦いで戦死した吉村真理子中将の葬儀がしめやかに行なわれていた。一方、母艦兵力に甚大なダメージを受けた米太平洋艦隊ではあったが、正規空母エセックス級の就役で息を吹き返しつつあった。翌18年夏、アメリカは“超空の要塞”B-29の完成と共にマリアナ諸島を日本本土空爆の出撃基地にすべく準備を開始する。これに対し日本は、基地化を断固阻止する作戦を企図した。浅井めぐみ中将を新長官に迎えた第一機動艦隊はグアム島を目指し、攻略部隊をふくむ大船団で、沖縄名護湾を出撃していく。日本の新鋭空母群を迎え撃つは、猛将ハルゼー中将率いる高速機動部隊。日米両機動部隊の激突は、どちらに凱歌が上がるのか。
アメリカは反攻の第一歩として、海軍が飛行場を建設中のガダルカナル島に上陸を開始する。これを知った伊○潜は、ただちに敵の補給路を絶つ作戦に出た。しかしニミッツは、伊○潜の刺客として、掃討部隊を送り込んできた。そして連合艦隊も、全力を挙げてガダルカナル奪回に意欲を燃やす。南海の小島を巡って、両軍相乱れての激戦が始まった。煙たなびく鉄底海峡に、男たちの熱い戦いが繰り広げられる。最後に勝利を掴むのは一体どちらか。
基地空母として、零戦の空輸作戦を行っていた巨大空母大和に、バミューダ派遣が命ぜられた。ハワイから喜望峰を回ってバミューダまで、大和の長い航海が始まる。学徒出陣の予備士官も、3人が初めての母艦パイロットとして乗り組んでいた。16000浬の彼方で彼らを待っていたのは、いかなる作戦であったのか。そしてヨーロッパでは、ヒトラーが英本土上陸作戦を敢行しようと準備を進めていた。装甲空母大和は前進基地として、大西洋を東へ西へ駆け巡る。
開戦からわずか2カ月で、米東海岸に歩を進めた大機動部隊。今や名軍師となった大野光男の采配はますます冴えを見せ、強大な航空部隊は縦横無尽に暴れ回る。さらに、鹵獲したB-17をコピーした日本初の本格的戦略爆撃機、二式重爆の部隊が、この戦いに決着をつけるべく太平洋を渡った。限りなく広い米本土、待ち受ける迎撃戦闘機、日本軍は果して勝利を掴むことができるか。そして大野が描いた対米戦のシナリオは、いかなる結末を迎えるのか。渾身の完結編。
1999年春、軍事マニアの大野光男は、太平洋戦争を逆転させるべく、60年前に通じる時間のトンネルへ飛び込んだ。昭和14年春の東京へタイムスリップした大野は、当時海軍次官の山本五十六だけに事実を打ち明け、大胆な秘策を授ける。まずは開戦までの間に、勝てるだけの戦備を整える事。しかし、残された時間は3年足らず…。だが、彼の頭には戦史の現実がある。たった一人の力で、歴史をひっくり返せるか。