著者 : 大沢在昌
深夜の首都高で、吉川国夫の車は大型車に引っかけられ炎上。国夫は死亡した。そして、大型車はそのまま行方を晦ました…。国夫の恋人でシンガーソングライターの堀河優美は、彼の遺品の中から一枚の楽譜を発見する。“SHADOW GAME”と名付けられたその曲は、完成度の高いバラードで、優美は彼の思い出にこの曲の使用を決意した。だが、作曲者は誰なのか…。事故から国夫の足跡を遡り始めた優美は、彼に楽譜を渡した人物もまた、謎の事故死をとげていたことを知るー。一枚の楽譜に秘められた謎とは!?冒険小説の名手が綴る力作長編。
ベトナム戦争以降、米国が極秘に開発を進めていた恐るべき生物兵器ー『ナイトメア90』と名付けられたその薬は、大脳を刺激し人間が眠らせている遺伝子情報を活性化させるというものだ。だが、この薬はチンパンジーに服用させると、瞬時にチンパンジーが未知の物体に変態してしまうという未完成のものであった。この薬が過激派環境保護団体に奪取され、一部が新種ドラッグとして日本の若者の手に渡ってしまった。フリーランスの軍事顧問・牧原は、秘密裡に事態を収拾するべく当局より依頼され、ひとり調査を開始するが…。
広尾の豪華マンションに住み、女と酒とギャンブルとスポーツでその限りない時間を費す六本木の帝王・沢辺が、突如姿を消した。失踪人調査のプロで、長年の悪友佐久間公は、彼の妹からの依頼を受け調査を開始した。“沢辺にはこの街から消える理由など何もないはずだ…”失踪の直前まで行動を伴にしていた公は、彼の不可解な行動に疑問を持ちつつプロのプライドをかけて解明を急ぐが…!?大沢文学の原点とも言うべき長編ハードボイルド、待望のシリーズ第三弾。
芝浦の人気のない運河沿いに佇むBAR『POT』。毎夜、ここに集う様々な人間たち。ハイテク機械の改造マニア。元傭兵、ニューハーフの元ムエタイ選手。そして私は、犯罪現場を専門に撮り続けるカメラマンだ。私が犯罪、それも殺人現場にこだわるのは、ある目的で“フクロウ”と呼ばれる殺し屋に会う為だ。この殺し屋は、自分が手掛けた仕事の後、必ず現場に現れるらしい…。そして、『POT』のメンバーと私は、ある事件からこの静謐なる殺人者に狙われるようになったのだがー。
“宗教法人炎矢教団総本部”この教団から娘・葉子を連れ戻してほしいーというのが今回の僕への依頼であった。僕が原宿にあるその教団へ娘を迎えに行くと、彼女は意外にも素直に教団を後にした。教団幹部の“オーラの炎によって彼女の身に恐しい出来事が起こる”という不気味な言葉を背に受けながら。依頼はあっさり解決した。但し、その肉のうちに葉子が喉を裂いて冷たくなっていなければ…。(炎が囁く)街をさまよう様々な人間たち。失踪人調査のプロ・佐久間公が出会う哀しみと歓び。事件を通して人生を綴るシリーズ第二弾。
…そのとき、彼は悟った。そこにあるのはただひとつの真理、「人生には一杯の酒で語りつくせぬものなど何もない」という、古人の諺だった。彼はグラスを空にした。目的はただひとつだった。二杯目を頼むことだ。〈二杯目のジンフィズより〉それぞれの酒、それぞれの時間そして、それぞれの人生。街で、旅先で聞こえてくる大人の囁きをリリカルに綴った掌編小説集。
巨万の財産とCIAで身につけた殺人技術を武器に闘う謎の美女トモコ。国籍を失ったために巻き込んだのは、対照的な風俗ギャル智子。ふたりだけで日米複合秘密組織が牛耳る米軍、情報部、警察、ヤクザと対決し、アメリカ大統領記者会見の場へたどり着けるのか?日本を戦場と化すハードボイルド長篇。
学生時代からの友人潤木と吉沢は、千葉・外房で奇妙な円筒形の建物を発見し、釣人を装い調査を始めたが……表題作のほか、不朽の名作「ゆきどまりの女」を含む全六編を収録。短編ハードボイルドの金字塔。
沢原は焦っていた。一枚の写真と物語で世界を構築するフォトライターとして、手応えある狙うべき像が見つからない。感性は鈍化し、才能は枯渇してしまったのか?沢原はカメラを手にやみくもに街を彷徨いた。理由のない怒りを覚えながら。その男の目は暗く、倦んでいた。沢原は鏡ごしに初めてその男と対峙した時、直感した。“こいつだ”と。そして、男の連れこそ沢原が忘れることのできない女性・彩子であった…。秀作「鏡の顔」他、四編を収録。日本冒険小説協会最優秀短編賞受賞作品集。
卒業か留年かの瀬戸際に立つ高校生の冴木隆と、不良中年私立探偵の父・涼介。キザな二枚目・粕谷の出現によりドタバタ親子の日常はまたしても急変する。父の永遠の宿敵・粕谷を尾行中、隆は銃撃戦に巻き込まれ、どことも知れぬ町に連れ込まれる。会ったこともない母や妹に囲まれて、町に出没する殺人鬼と対決する羽目になった隆の頭は大パニック。
同姓同名であったために、誤配された一通の封筒。若きインテリ総会屋井田有生は、封筒を受け取ってから、奇妙な事件に巻き込まれてしまう。配達人は殺され、本来の受取り人は自殺をしてしまった。真相究明のため、井田は友人とともに封筒を開くと、中から凶弾に倒れた世界的に有名なミュージシャンの歌が録音されたテープが出てきた。そして、綾乃と名乗る謎の女が現われて…。長編サスペンス。
内閣調査室副室長からオチコボレ親子探偵、冴木涼介・隆の事務所へ来日した東南アジアの島国ライールの王女ミオの護衛依頼がきた。だが、政情不安、王位継承で謀略渦巻くお国柄。政府筋に雇われた殺し屋が隆たちを狙った暗躍しはじめる。その間隙をぬって「カマル教団」がミオを本国へ連れ去ってしまう。ミオを追って親子はライールに飛んだが。
我が親父・冴木涼介は、東京・六本木に事務所を構える私立探偵。だが実際はずぼらで頼りがいゼロ、そのうえ女好きという、まったくの不良中年、アパートの大家さん・圭子ママの特別優遇で健気に生きてる僕・隆が、適度な不良高校生なのは仕方がない。そんな親父が密かに狙っている、僕の家庭教師・麻里さんが奇妙な事件の依頼主を連れてきた…。痛快アクションミステリー。
世界各地に支社を持つ国際的なガードマン会社(V・G・S)の日本支社長のクリスは、日英の混血でハンサムな青年。ところが遊び好きで仕事大嫌い人間ときているから、美人秘書の慶子は気を抜いていられない。一兆ドルの頭脳を持つエレクトロニクスの権威、毛生え薬の秘密を抱えた薄ハゲの元C・I・A局員など、世界からやってくる要人をめぐって巻き起る騒動ー。洒落た感覚で描くユーモア・サスペンス。