著者 : 姫野カオルコ
蕎麦屋の恋蕎麦屋の恋
秋原健一、製薬会社課長、四十三歳。波多野妙子、調理師専門学校講師、三十歳。二人は京浜急行の中で出会い、蕎麦屋でせいろを食べ、ホテルでただTVを見るー。(「蕎麦屋の恋」)姫野カオルコが描く、六つの「非・恋愛小説」。
ドールハウスドールハウス
たとえば、姉の食べ残しに弟が躊躇なく手を出せるーそんなふつうの生活を理加子は夢みている。軍隊にも劣らないほど強権な父親と、一度も家族を愛したことのない母親のもと、理加子は大屋敷家ただひとりの子供として“石の歳月”を過してきた。“不良になるから”という理由で、映画、読書はもちろん電話、手紙に至るまで禁止されてもなお、理加子は両親に逆らえない。そんな彼女の前に粗暴で強引な男性江木が現れ、次第に心を開いてゆくが…。子供から大人へ。集団から個へ。誰もが通過する家=家族との決別を綴った切ない物語。
バカさゆえ・・・。バカさゆえ・・・。
「会いたかったわ、ラリー。すごく会いたかったわ」サマンサは身を床にかがめると、ラリーの股間ですでに45口径マグナムのように堅くなったもの啜った。関係ができて一年たつ前から、事がスタートするとサマンサは大胆な行動をする。それがラリーには気持ちいい。「Mmm…この、この、このやろめ」(『奥様はマジよ』より)サマンサ・スティーブンス、香山リカ、夢野サリー、そして矢吹丈。今なお心に残るあの人たちの知られざる私生活を綴った、ちょっとシュールな短編小説集。書き下ろしカルトガイド付き。
変奏曲変奏曲
血の絆で結ばれた洋子と高志。異なる性の双子が貪る、耽美な禁断のエロティシズム。それは、洋子の婚礼が近づくにつれ、哀しく顕在化していった…。幻想は現実に、情念は行為へ。時代を超えて幽玄世界へと誘う現代のロマネスク文学。