著者 : 安部龍太郎
鎌倉末期、備前長船で生まれた剛刀「のきばしら」。足利将軍斬殺という嘉吉の乱を引き起こし、千利休の手により石灯籠を斬る。やがて江戸時代、転生した娘とともに質屋夫婦の命を救い、幕末には“人斬り”岡田以蔵の手に渡る。維新動乱のなかで女剣士の仇を討って、ついに終戦前夜の皇居に現れる…。一振りの剣をめぐる時空を超えた物語を、気鋭の執筆者7人が書き継ぐ、珠玉の連作時代小説。
足利幕府が擁立する北朝に皇統を奪われた南朝方。その一人として、小倉宮を奉じ南朝再興に尽力する北畠宗十郎は、後醍醐帝の呪力が込められた三つの能面の入手を命じられた。面に隠された、幕府を崩壊させるほどの秘密とは何か?将軍暗殺ー嘉吉の乱を経て、時代は大きく動いてゆく…。日本史の中で無視され、抹殺されてきた闇の「後南朝時代」に大胆な解釈を加えた、渾身の快作。
実の父である徳川家康に毒殺された悲劇の猛将結城秀康。その落胤にして、必殺の富田流残月剣の遣い手結城虎之介が、家康の陰謀と刺客に敢然と立ち向かう!-己れのすべてを賭けて幕府の圧迫に対抗する豊臣秀頼。そんな秀頼を守り、父の仇家康を討つべくひたすら剣の道を突き進む虎之介。慶長年間の活気あふれる大坂を舞台に、二人の生き様を迫真の筆致で描いた著者渾身の痛快歴史長編。
関ケ原に向けて満を持した二十五万の兵力が動きはじめる頃、細川幽斎は三成方に居城を囲まれ、ひたすら籠城戦を耐えていた。我れに秘策あり。しかし糧秣弾薬には限りがあった。来る。必ず使者は来る。古今伝授はその時のためにこそあった。そして決定的な切札、それこそが関ケ原連判状。事が成らねば天下は家康の、あるいは豊臣のなすがままとなるは必定。幽斎の決戦は史上最大の戦闘の前に始まっていた…。
港を作り、航路を短縮して江戸の流通を革命的に変えるー伊豆大島は波浮の築港計画。かつて火付け盗賊改として勇名を馳せた剣の達人、呑海と暗い過去の記憶に怯える青年、鉄之助は、勘定奉行石川忠房の力を借りて、この大工事に奔走していた。そんな彼らに、謎の刺客が襲いかかったとき、幕閣に蠢く巨大な陰謀が姿を現し始めた…。期待の新鋭が放つ超大型時代サスペンス。
足利将軍暗殺、京都封鎖。後醍醐帝の亡魂の為せし業か。南北朝騒乱の残り火に油を注ぐという怖るべき〈能面〉の行方を追え-。旧体制が音を立てて瓦解した後南朝時代を、破格のスケールと雄渾な筆で描く時代小説の絶品。
反乱、暗殺、裏切り、虐殺、謀略。栄耀栄華を極めた者は、明日は無残な敗者となったー。長屋王、平将門、千利休、田沼意次、坂本龍馬、西郷隆盛ら、時代の頂点で敗れ去った悲劇のヒーローたちの人間ドラマを、気鋭の時代小説作家が生き生きと描きだす。大和時代から明治維新まで、千三百年にわたるわが国の歴史を四十六の短編小説によって俯瞰する、新しい“日本通史”の試み。
江戸に流通革命をもたらすはずの大工事に、忍びよる影また影!伊豆大島の波浮に築港計画がもちあがるやいなや、幕府内部で奇怪な動きが目立つようになった。船団の針路と物流の変化をめぐって濁流のごとくぶつかりあう思惑と思惑、そして謎の剣客の暗躍。江戸、下田、伊豆大島がなす大三角形に展開する海と剣のサスペンス。